
【300字小説】夏と悪魔と天使と秋と
夏が悪魔と契約したのか、今年は随分と幅を利かせていた。
問い詰めると夏はそしらぬ顔で、「いいえ、わたしは何も。むしろ秋のやつが天使なんかにかまけてる、なんてうわさを聞きますよ」
夏も何かをはぐらかそうとしてるが、なるほど秋も、天使とつるんで相当浮ついているということらしい。たしかに心地よい季節はふと顔を覗かせたきり、すぐ待ち構えたように冬が主張しはじめている。この調子では春などは世俗に紛れてギャンブルにでも嵌っているのではなかろうかと、今から気が気でない。