概説・零式艦上戦闘機 その2
こんにちは。そこまで状態がよくありませんが、書くといって書き残していたものがあり、少し処理する気になったので書いておくことにします。10日ほど前に書いた、零式艦上戦闘機に関する話題の後編です。
前回の話の最後に、ミッドウェー海戦とほぼ同時期に行われたアリューシャン列島方面での作戦において、不時着機が米軍により鹵獲されたと書きました。米軍は、それまで零戦「Zeek」の謎を解くために、撃墜した僅かな破片等も回収するくらいに分析に力を入れていましたが、この時ほぼ飛べる状態の鹵獲機を入手することに成功しました。
鹵獲された機体は本土に送られ、修理の末各種の飛行試験に利用されました。目的は当然、対零戦向けの戦法を検討することでした。この時、米軍は零戦には主に二つの弱点があることに気付きました。一つ目が、「高速時の横転に弱い」であり、もう一つが「機体強度が足りず急降下速度上限が低い」という点でした。この弱点に目を付けて考慮された対零戦の戦法が「サッチ・ウィーブ」という戦法です。
この戦法は、サッチというアメリカの航空士官が考え出した戦法で、内容は大まかに言うと「格闘戦を避けた一撃離脱」となります。特に2機一対でこの戦法をとることが徹底され、当時性能で劣り零戦に圧倒されていた艦上戦闘機であるF4Fの部隊に早速適用されました。
サッチ・ウィーブにより、F4Fはその機体強度を活かして、2機一対で主に急降下を利用した一撃離脱を徹底するようになります。初期は零戦側もその戦法にさほど脅威を感じてはいなかったようですが、そうした戦法が徹底され、次第に消耗から数の上でも劣るようになるにつれて徐々に零戦隊にも効果が生じるようになりました。最終的に、初期は格闘戦で圧倒していた零戦にとっても、F4Fの大群が大きな脅威となっていきました。
そして、太平洋戦争の恐らく中期あたりから、米軍の艦上戦闘機の主力がF6Fへと転換されます。これも、兵器として大量に投入できるという性質を兼ねつつ、対零戦を意識した仕様で性能でも部分的に零戦を上回るものでした。この戦闘機が前線に繰り出し、先ほど述べた一撃離脱の徹底もあって、そもそも戦力面で大きく差が生じていた零戦隊は大戦初期とは逆に米軍機に圧倒されるケースが増えるようになりました。もちろん、有名な坂井三郎のように、熟練者がその技能を活かした格闘戦で優勢を保つこともありましたが、次第にそうした搭乗員も損耗を重ね、最終的に戦争での指標である「キル・レシオ」は米軍が圧倒するようになりました。
零戦は、艦上で運用された初期の21型から、陸上基地主体の32型へと発展し、航続距離の問題や米軍側の対応が変化したことから、更に52型へと発展しました。21型と52型では機体の性質がかなり異なり、52型はやや一撃離脱戦向きの戦闘機となっていました。ただ、不幸なことにこの後継の新型戦闘機となると、開発リソースの不足などの事情もあって遅々として進まず、大戦の終盤に「烈風」として少数の試作機が完成しますが結局は戦線に投入されることはありませんでした。
長くなるのでまとめに入りますが、堀越二郎により、初めて世界水準を上回った96式戦闘機を受け継いで、大戦の初期から中期に顕著な活躍を見せた零戦でしたが、その顛末は次第に悲劇的なものとなり、もちろん特攻作戦にも多数投入されるようになりました。映画「零戦燃ゆ」のラストで、基地に駐留する零戦が、降伏後にガソリンで点火されて焼き払われるシーンが自分の中では印象に残っています。以上です。