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【読書ログ】手の中の天秤

著者:桂望実
発行:2013

昔、好きだったこと

昔はあんなに小説を読んでいたのに、最近読んでいない、と思い図書館通いを始めて、同時に始めた読書ログ作成、ゆっくり続けていけたらと思います。好きだったことを気づいたらしなくなっているのは、なんだか勿体無いですよね。リハビリしていきます。

もはや小説の選び方がわからなくなっている中で、インスタでブックマークしていたおすすめの中からの一冊。ネタバレです。

事件そのものではなく、事件後の遺族に目をむけた作品

架空の司法制度、「執行猶予被害者・遺族預かり制度」。
執行猶予付きの判決が出た事件で、被害者・遺族が望めば、2年間で計4回の加害者に関するレポートを受け取り、望めば刑務所に入れることができる。

怒りを忘れられない人、加害者の立場になって憎むこともできず悲しみの中に留まる人、事件を利用しようとする人。
レポートを作成し、被害者・遺族に届ける仕事をする新人だった主人公と、その教育係の適当な先輩のコンビは、どこか推理小説の刑事2人組のよう。

忘れることは一生なくて、先に進まなければと思うのに、ふとした瞬間に深い穴の前に引きずり戻される。
日常の中でも感じる感覚で、事件という予想だにしない大きな衝撃を受けた人たちがどのようにその穴に向かい合うのかを考えさせられた。
怒りを持てているうちは、強くいられるというメッセージに強く共感。正しいか正しくないかではなく、自分が前に進むために持つ感情でもある。

遺族だった人が加害者になるというケースもあった。
守られるべき人という、一面的な物事の見方をしていたとガツンと衝撃を受けた。可能な限り真実を教えたい、そして、心休まってほしい、という善意から、遺族に不必要な情報を渡してしまい、それが悪用されてしまった。
中立に立つことは、一見冷たいようにも思うが、それで守れるものがある。
加害者のことを調べるのと同様に、遺族のことも調べるべきだったという反省が文中で語られていたが、それを読んで、見たいものだけ見ようとする自分がいるとも思った。

こうして感想を書くと暗いと思わせてしまうかもですが、過去として語られていて、いい意味でカラッとしたトーンの作品で、大好きです。


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