つぶやき。
四月が始まり、お役立ちガジェットに囲まれて新学年を迎えんとする大学二年生である。二年生とはいっても交配に先輩面できることは一切なく、サークルも所属してはいるものの活動はないままに、とうとう新入生が、宜しくお願いします、のような旨のメッセージをサークルのラインに投げ始めた。負け惜しみの布石を打つみたいでみっともないが、いえるものなら直接話してやりたい。お前の一つ上の代はこの一年間をほとんどを勉強とバイトに浪費してきたものばかりで、表層だけを見れば浪人生のそれに似た状況がここにはあり、何一つとして教えてやれることはないのだ、と。
正直に白状すれば、学食を使ったことは一度もないし校舎の場所も、つい最近までは履修登録すらおぼつかなかったのだ。一つ年上の同級生に困惑するように、私たちに対しても対応に困ることだろう。何せ前代未聞なはずだ、仕方ない。ただ一人の大学二年生として言わせてもらと、もう同級生扱いもあまり気にならない。ここまで自信は墜落している。いや、本来なら築けていたであろう経験という自信を支える糧をそもそも持ち合わせていないのだ。
だから私にすがるような眼で助けを求めないでほしい。
そこには、後輩であろう女子学生に道を尋ねられている私がいた。
男子校から進学してきたこともあり、こと女性がらみの話題には一切の経験を持ち合わせていない私は、またとないチャンスを目の前にして何もできずにいた。今日ほどコロナを恨んだこともない。