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雨の憂鬱を少し変えた音

にぎやかな大阪の街に住み始めて
かれこれ7年が経つ。
今の家は消防署も警察署も近い。
治安の面では心配なさそうだと思い住み始めた。
徒歩圏内には
スーパーもコンビニもドラッグストアも
居酒屋にカラオケやジムだってある。
そしてなりより、駅近。

わたしは田舎の街で生まれ育った。
町の人口が牛の数より少なく
一番近くのコンビニやスーパーまで
5キロ以上離れていたり
最寄駅という概念がなかったくらい
電車というものは身近になかった。

そんなわたしには
今の暮らしは便利でしかない。

ただ便利と引き換えに
想像もしていなかったことが起きた。
(これは都会育ちの人はもしかしたら
容易に想像できることかもしれない)

それは毎日、日中も夜中も朝方も関係なく
消防車や救急車、パトカーが
サイレンを響かせながら走ること。
怒鳴り合う喧嘩の声が聞こえてくること。
深夜の酔っ払いの陽気な笑い声。
こんなのが家の中にいながらも
平気でズカズカ入り込んでくる。

初めは色んな音や声に敏感に反応して
よく窓に耳を当てていた。
それが住み慣れてくると
外の走り去るサイレンの音には
受話器越しの相手が
「なに、火事?近くない?」
と聞いてきて初めて気がつく程になっていた。

年に一度実家に1週間程帰省をする。
すると、都会の中では聞かない音が
耳に入ってくる。
ウグイスのホーホケキョという綺麗な発音
川のせせらぎ
牛やキツネの発情した鳴き声

小さい頃のこの音や鳴き声のひとつひとつに
明確な記憶がない。
それはその音や声のなかで育ってきて
当然のことだったからだと思う。

どちらにも住んだからこそ
ピックアップされて記憶に残る音になった。
わたしはどちらの音も嫌いではない
都会は他の人の暮らしが近くに感じられる。
田舎は自然の流れが近くに感じられる。

住む環境、街の特性、季節によって
聞こえてくる音は全然違うはず
ただ、雨が地面に打ちつけられる音は
どこにいても同じ音なんじゃないかと思い
雨の日は憂鬱になるが、
今この瞬間雨が降っている所は
同じ雨音で繋がっている気がして
家の中でそっと雨音をきく事が多くなった。

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