悔しくて、死にそう
昨年末、目標にしていた資格試験に合格した。
3回目にしてである。長い道のりだった。
1回目は、圧倒的に勉強量が足りず、あっさり惨敗。
そして2回目、本気で受かろうと、これで最後にしようと予備校に通い、結構勉強したが何点か足りなくて落ちた。1点足りなくて落ちる人が山ほどいるこの試験に、かなりの点足りなくて落ちたのだ。
そういえば私はバカだったのだ。
自分がバカなのかどうかを考える暇もないほど日々、目の前の仕事に向き合うことしかできていなかった自分だったが、久しぶりにそう痛感したのだ。
悔しかったという言葉だけで言い表せないほどだが、やっぱり悔しかった。あまりにも悔しくて、帰り道近所の橋を歩いている途中で立っていられなくなるほど泣いた。
これまでの人生を振り返ると負けたことが多い。
初めて何かに負けたのは幼稚園の頃。
親の意向でピアノのコンクールで東京予選に出た。幼少期、かなりピアノでチヤホヤされて生きてきてすっかり天狗になっていた子供の私は、ゆーて東京でもそれなりに結果が出るのではないかと高を括っていたが、あっさり落ちた。その後も中学まで年に何回もコンクールに出ていたが、ありとあらゆる場で落ちた。そうして私はプロを目指すことを辞めた。
戦うことにすっかり疲れてしまった私は、これでもう当面戦わなくて良いようにしようという気持ちで大学受験をした。
そのため、大学以降はこれといった戦いをしていない。
優秀な学科の同期たちは設計課題で講評に載ろうと友人と切磋琢磨したり、積極的にコンペに応募したりしていたが、それなりにやればいいやと惰眠を貪っていた。そんな自分が嫌だなと思いつつ、どうもしなかった。
しかし社会人になり、一級建築士に挑戦することにしたのだ。
久しぶりに何かの勝負事に本気で取り組んでみよう。そんな意志で勉強していたにもかかわらず落ちたのが本当に悔しかった。
こんなに辛い思いをしたのに結果が出なかった。あの日々は一体なんだったんだろう。来年受かる気がしない。もうやりたくないな。
色んな言葉が頭を駆け巡った。
逃げの言葉はいくらでも見つかるが、それでも何より「悔しい」という感情と向き合うしかないと思った。
「悔しい」とは下記の条件が揃った場合に感じ、そして表現できることだと思う。
①この上なく真剣に取り組んだ時
②それを理解してくれる人が身近にいる時
③その理解者自身も何かを真剣に取り組み、挫折した経験があること
①、②は容易に理解できることだが、大切なのは③だと私は考えている。
そのことを考えさせられたのは、私が最も好きなアニメーション作品である「響け!ユーフォニアム」を観てからである。
この作品は、高校1年生の主人公、黄前久美子が3年間を通して部員と共に「悔しい」といった感情にどう向き合い、どう成長していくかを描いた作品である。
今回は④の映画「誓いのフィナーレ」において考えさせられた「悔しい」について話していく。
奏はいい加減にオーディションに挑もうとし、それを見かねて引き留めた久美子(と夏紀)に対してこう言い放って逃げる。
中学の奏は、「悔しい」と言葉にすることすらできなかったのだ。
必死で練習したのに、たくさんの仲間と同じ目標で頑張ってきたはずなのに、それでも認めてもらえなかった。だから一歩身を引いて、傷つけるのも傷つくこともない距離で周囲と接することにしたのだ。
そんな奏に対して久美子はこう叫び、奏は泣き崩れる。
やっと奏の努力を見てくれる人ができたのだ。
しかし、それでも結果としてコンクールでは目標を達成することができなかった。
初めて「悔しい」という感情を誰かに伝えることができた。
中学の頃も同じくらい、もしくはそれ以上の重圧に耐えながら練習していたかもしれないのに。
そう、誰にでも共有できるわけではないのである。
奏の初めての感情を久美子と共有できたのは、彼女自身が1年生の頃に悔しくて涙を流した経験があるからである。
このことを思い出して、試験に落ちて号泣していた私は、「悔しい」と思えるほど周囲に恵まれており、同じように頑張っている人がいるのだと。そんな人に理解して寄り添ってもらえるうちはまだ頑張れると思った。
同じく悔しい思いをした同期や先輩たちに「頑張れ」と声を掛けてくれたことを無駄にしたくなかった。
そして私自身の成長のみならず、この経験を忘れずに他者を支えられるようになりたいと思う。
「頑張らなくて良い」「無理しなくて良い」と言うことはある意味簡単で、でもやっぱり綺麗事かもしれなくても頑張ったことは無駄ではないと思っている。
だから私は頑張り続ける。
頑張り続けて、たくさん失敗して、その分泣いて、その過程全てが、頑張れなくなってしまった人に対していつか何かを与えられるキッカケになるかもしれないと信じている。
それでも本当に疲れた時は立ち止まって休もう。
これからも続く長い長い道のりをどこまでも進んで行けるように。
おわりに
昨夏、映画「響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト」を観に行きました。そして4月より3年生編が公開されることを日々心待ちにしています。
制作してくださった京都アニメーションにはいくら感謝してもしきれませんが、とにかく布教をしていくことが一番感謝を示す手段だと思っています。
これからも、いかなる時でも応援し続けます。