日本でグローバルイベントがうまくいかない現実
札幌開催のテックイベント不発か?
TechBBQというデンマークで開催されているテックイベント。
昨年、札幌で開催されて注目したわけです。
札幌ではNoMapsとか、ちょっと熱めでエモいイベントが開催されてます。海外からの投資も多く、日本で最も注目されている街のひとつある都市で開催されて期待はしていたのだけど・・・・・
一応本家TechBBQのサイトにも2024年開催の記載はあるのだけど、全く盛り上がりが見えてこない。検索してもメディアにも取り上げられていないということは、・・・・・
未開催か?
開催されたと仮定しても、全く事前の盛り上がりがない。
実はイベントの成功は開催前に決まってしまうのが現実。事前にメディアや自治体、関連団体、会場を巻き込むのがイベント成功の秘訣であり、それが出来ていないのかな?
ほんと、イベントをまともに運営できる人間がいないのが国内の状況。これだとイベント産業自体が独り立ちした産業としては育たない。なので、いまでも広告/マーケティングの一部として、何も手を動かさない代理店経由で受注するのが日本の商慣習。そんな商習慣を正していきたいと日々考えてます。
◆イベントとは何か?
たとえ主催側であってもイベントとは何が起きるのかを理解していない人が意外に多い。商業目的か非営利の文化目的かによっても違うけど、商業目的なら:
1.人と人が出合う
2.商取引が発生する
最低限この2つを担保できないと、成功したイベントとは言えない。
そして継続性。単発のイベントは効率が悪い。どんなイベントでも初回開催には、企画、交渉といった大きなリソースが必要で、本当に安定して開催出来るのは3回目以降。だから最初の2回の開催には絶対コミットしないといけない。出展する側からも初開催のイベントへの出展は集客等のリスクが伴うわけで、そのイベントが単発で終わってしまうのは都合が悪い。
ありがちなのは、初回開催が微妙にうまく行かなくて、2回目を開催する予定はあるのだけど、ちょっと立ち止まって考える。
これ、間違いです。
とにかく第二回までは一括で考えて走らないと継続的な成功イベントモデルを作ることは不可能です。
国内外の成功/失敗事例を見てみると
例え成功モデルのイベントであっても元の開催地からのフランチャイズ開催が難しいのは事実。
日本国内のケースを見てみると、歴史的には当時のグローバルでの成功事例であったSES、WEB2.0なども実質単発で消えています。
ドリームハックジャパン(Dreamhack)もあれだけメディアで取り上げられた割に2024年は何も聞こえない。開催に当たり4Gamersでも熱く語られていた割には後が続いていないのは残念なこと。
◆好ましい事例
最近の例で気になっているのはSXSW Sydney。1987年からオースティンで開催され世界中から40万人を集め、開催地のエコシステムの一部となっているイベントが、満を持して初のオースティン以外での開催です。
会期中から参加者によるSNSポストが上がっていて盛り上がりは見えるのは勿論、何よりも初回開催後すぐに次回開催の告知が出来ている。これ重要です。
初回の出展に踏み切れなかった企業をその場で取り込むことの出来る仕組みを持つことは成功するイベントをつくる上で最重要課題。これが出来ているイベントは次回開催への会場の埋まり具合の読みも可能で継続的な開催も可能になります。
今年期待されるのは、ニューヨークで開催されるリテール業界最大イベントであるNRF Retail's Big Showのアジア版のシンガポール開催。ad:techを主催していたComexposiumが運営する訳だけど、果たしてAPACチームがどんなイベントをつくってくれるのかは期待大です。
コロナ前だったけど、リスボンで開催されてヨーロッパでも最も注目を集めているWeb Summitの国内開催が発表された。経産省が後援について日本事務局もあったのだけど、これもコロナの影響で話が継続している気配がありません。
Web Summitはその後ブラジル、カタールでフランチャイズ開催しており、これらがどうなるのか気になります。
◆その場だけにしか目がいかないようではダメ
総じて言えるのは、その場その時にしか目がいかない人が大半。これはプロの主催者にも言える。
イベントへの出展という意味では、広報的な意味や売上的な意味で、開催中だけではなく、開催前からの意思表示、開催後のレポートまで含めての効果が重要。
出展企業の広報・宣伝活動は、出展が確定した時点で始まって、出展の案内広報から始まって、既存顧客に向けた来場案内、発表内容の告知まで開催前の準備が最も重要。もちろん現地での呼び込みも大事ですが、それは本来おまけ程度に考えておけば、イベント運営もスムーズになります。
そしてイベント後には、ブースを訪問してくれた来場者に向けたフォローアップと事後広報でのPR施策。
この長いタイムラインすべてがイベントを活用したマーケティング活動です。
よく日本企業が海外イベントへの出展にあたり出すリリースがあるけれど、
「XXに出展します」
「XXXブースに来場ありがとうございました」
こんなPRリリースは実は殆ど意味をなしていないのが現実です。たった5行10行のリリースなんて、単なるアリバイ作りのようなリリースが多いのが現状。意味のあるリリースは、出展者に限らず参加者の顔(反応)が見えるものでなくてはいけないのです。
グローバルイベント継続のためには?
国内でグローバルイベントを主催してきた立場から見ると足りていないのは、パッション(情熱)ではないかと。
上記のテックバーベキュー、ドリームハック、どちらもメディアで露出したような情熱をもってイベントを運営する人間がいたのならば、絶対に継続するポテンシャルを持ったイベントであることは間違いないです。
そのためには自分事として、そのイベントの成功にコミットできる人間がいないイベントは絶対に成功しません。会社から命令とか、上司から言われたからという理由で取り組むのでは絶対にイベントは成功しないというのが、グローバルイベントを運営してきた立場からの意見です。
そして、商業的な側面。次回開催で出展や協賛を集めるためには、来場者が多くブースを訪れてくれる環境をつくることが必須。
会場規模にもよるけれど、ちょっとしたイベントでも最低は2000人くらいが参加するイベントでないと継続は難しいというのが肌感です。
そんな成功モデルをつくるために、これからも色々な情報を提供できればと思います。