年中休業うつらうつら日記(2024年9月7日~9月13日)
24年9月7日
息子夫婦が訪ねて来てくれた。
妻のMちゃんは尾瀬で、息子は上高地で山小屋に住み込みで働いていて、今回は息子の仕事終わりとMちゃんのお休みが重なったので、一緒に上京して訪ねたというわけ。
昨日がMちゃんの誕生日だったので、ケーキと花を買ってお出迎え。
細くて小柄な身体でディパックしょって登山靴で足元を固めたMちゃんは、完全に山ガール。
息子は息子で彼の生活グッズをすべて入れたでかい登山リュック姿。
Mちゃんと我々がおしゃべりしてる間に黙々と荷ほどきをし、京都に持っていく荷物を洗濯物と今後の生活に使うものを仕分けしていた。
そんな段取りができるようになったのか、とも驚いたが、何よりも一刻も早くMちゃんと2人きりになりたい必死さがにじみ出ていて、それはそれで泣けた。
何しろ2か月半、夫婦が離れて働いていたわけだからね。
「今夜は2人でゆっくり話したいね、と相談して、外にホテルかどこか宿をとることにしたよ。もちろん家にもちょっと寄らせてもらうけど」と事前に聞いていたから驚かない。とにかく2人になりたいだろうと、1時間ほどでお開きにした。
息子よ、これで文句あるまい。
翌日から仕事で京都へ行く息子と実家を訪ねると言うMちゃんをお見送り。
元気で幸せそうで、ほっとしたよ。
来週から東京での仕事でしばらく家に居候するつもりらしい息子とはまたすぐに会うことになるだろう。
と言うか、我々が長老の別荘に行ってる間に帰ってくるかもしれないので、家のカギをもらっておく必要があったからわざわざ来たのだ、彼は。
それがなければ「京都から帰ったらしばらくお世話になるから、今回は寄らずにおくよ」とMちゃんとの時間を楽しんだに違いない。
京都に行く機会にインプロコントのワークショップ開催を手配できたらしく、また、東京に戻ってすぐに下北沢の自分たちの店で、インプロコントグループのクロニクル・トークショーを段取りしているらしい。
最初は3人、3人、2人のコントグループ3つが一緒に活動をしたのをきっかけに始まったグループで、途中で名前がつき、最大の時は8人いたり入れ替わったり、いろんな経緯を経て今んとこ6人体制でやってる。
たいていいつも一緒にやってくれる人も数人いるが、グループとしては6人。
いちおう息子が主宰してずっとやってきたコントグループ、途中で彼がNYで仕入れた「インプロヴィゼーション」というスタイルを取り入れて「インプロコントグループ」になり、現在に至る。
他のトリオをひと組内包し、また、別の人と組んで別のコントグループを兼業してる人もいる。
我々は山荘で遊んでいるのでこの興味深い「クロニクル・トークショー」を観に行けないんだけど、入場料とドリンク代は払うから、と息子に映像もらう約束は取りつけた。
だって大学時代からいから始まった活動で、我々夫婦は彼らの「一番古いファン」と言っても間違いじゃないんだからね。
今回の京都の仕事は去年やった講座が好評だったらしくまたやってくれという依頼だし、関西のインプロ演者さんたちとのつながりをきっかけにワークショップを開く段取りになったようだ。
インプロ団体は数多いが、大概が演劇寄りで、コントに特化している彼らは少し珍しい存在。
広がっていく彼の人脈とやる気に、ちょっと感心しちゃった。
ここらで感心でもしておかないと、コントで暮らしている息子を応援し続けるのは難しいからねぇ。
24年9月8日
昨日、ケーキ買いに行った時に自転車で転んだと言ったらせいうちくんに叱られた。
「まだ睡眠薬が抜けてなかったんだよ。薬の影響が残ってるうちに自転車乗っちゃ、ダメ!」つったってさあ、道を間違えてケーキ屋の前を堂々と通り過ぎてずいぶん先まで行って「あれ?」と思って自転車降りてUターンしようとハンドルをいっぱいに切りながら動かしたらバランス崩して倒れて膝すりむいたんだよ。
薬の影響も何も、ちょっとでもバランスを崩したら重い電動自転車を立て直すだけの筋力がないってことだよ。
叱るなら、そこを叱ってほしい。
キャラバンの共同所有者Gくんがよく「おまえの運転は怖い。あんなにしゃべりながら運転するなんて、怖いとしか言いようがない」と文句言ってるが、じゃあ実際ナビシートに座っていて、「ここは俺ならブレーキ踏む!」とか「車線変更して入ってくる車に気づいてない!」とか具体的に怖い思いをしたわけではないらしい。
ただ、「オレならしゃべっていたらそっちに集中してしまい、運転はお留守になる。いっぺんに2つのことはできない」って主張するだけなわけだ。
私にはできるんだよ。
しゃべってる方が頭がクリアによく回って、運転も調子よくなるぐらいだ。
このように人はいろいろ自分にできることできないことがあり、それぞれ違うものだが、せいうちくんと私もまったく違う。
私は段取りをつけたり過程を予想したりがほぼ自動でできるが、せいうちくんにはその機能は搭載されていないので、そういうことを考えるといちいちくたびれるらしい。
その代わり、私はいざ段取りの実行段階に入るとあっという間にくたびれる。
せいうちくんは指示を受けて作業をするのはいくらやっても大したダメージがないらしい。
だからうちではソファに寝そべった私が作戦指示をし、せいうちくんが実行する。
いいコンビなのか、2人合わせてやっと1人前の働きなのか。
24年9月9日
重陽の節句。
FBに「昭和99年9月9日にあたる」と書き込みしてる人がいた。そういえばそうなるか。
平成と令和を含んでの話ではあるが、昭和天皇がずっと生きてたらそういう日。
1日中ゴロゴロして過ごした。
通販で服を買っても決して代わりに1枚捨てたりしない私のせいで、タンスの引き出しが閉まらなくなりつつある。
せいうちくんは、捨てられる服がないか鵜の目鷹の目で狙っている。
出社以外はワンシーズンを2本のボトムズで困らないような人と一緒にされたくない。
もちろん私はまったくおしゃれに興味はないし、着道楽などとんでもないんだが、それでも女性には「普段着」と「よそいき」との間に「ちょっと人と会う」てなステージがあるし、合う相手によっても少し変わってきたりする。
いざとなれば背広着ればいいと思ってる男性と同じわけにはいかないのだ。
それでも引き出しがしまらないのを無理やり押し込んでる状態は困るね。
同じようなTシャツとかありすぎるのはさすがに自覚あるし、見た目ほとんど変わらない黒いパンツが4本あるのも問題だ。
でも、「まさかの時」とか考えると、新しく同じものを買っても古いのが捨てられないんだよぉ!
週末から数日間、長老の別荘に遊びに行くので、その荷造りと同時に少し服を減らすかな。
そもそも小ぶりのダンスひとつでパジャマや上着は別としたすべての衣類を収納してることに感心してもらいたい。
せいうちくんはよく「もっと服を買ってもいいのに」と言うけど、それは「1枚買ったら1枚捨てる」が前提になっているので、「捨てられない女」としては買い物したくなくなっちゃうよ。
引っ越す時に水回りのパイプ掃除用の「パイプスルー」黄色い大瓶が7本ぐらい出てきたのはせいうちくんの責任なんだが、
「そういうのは『消えモノ』だからかまわない」と言い張るのが小面憎い。
24年9月10日
心臓の検診日。
夕方遅めの時間に行ったら患者さん1人もいなくて、すぐに診てもらえた。ラッキー!
なんかそういう「ふとした真空状態」みたいなのがたまにあるよね。
江口のりこ似の女医さんはワーファリン管理が上手なので、今回も「2.4」と高め安定。
疲れやすくなってるのは夏のせいだろうって。
今年も暑かったもんね。
今は湿度が高いのにやられてぐんにゃりしている。
せいうちくんの会社の主婦検診を受けなくても、定期的に血液検査や眼科検診は受けてる状なうえ、乳がんとか子宮頸がんとか無料の検査券があれこれ来るようになったので、もう半日人間ドックはやめることにした。
ひとつだけ浮いてしまった「肺レントゲン」をここでやってもらえるか、と江口のりこ似に聞いたら、「役所に申請したらもらえる。そしたらうちで診る」とのことだった。
行政のやってくれることはけっこういろいろあるが、申請しないとやってくれないことも多く、こういう時は情報強者であるべきだなぁと思う。
どうも前に住んでたとこよりここの方があれこれ手厚いような気がする。
必要な援助は人生のステージごとにちがうので、「子育てしやすい街」「老人が暮らしやすい街」などが当然発生し、当該年齢の人たちが集中したりもする。
昔「面白い街」だった下北沢にひとり住まいをしていた頃があるが、世田谷区の行政云々以前に、今の下北沢はもう我々には面白くない。
でも、息子たちの年齢までは集まりたい場所なんだろう。
時代によっても変わる街々の、ここが終の棲家だとは思ってるが、時々引っ越し意欲がうずいたりもする。
息子たちが沖縄に住むって言ったらついて行っちゃいそうだなぁ。
でも案外小心だから、結局ずっとここにいて、数年に1回訪ねてくれるのを待つのかも。
24年9月11日
最近眠りにくいのがひどくなり、不調が続いていると思ったら、ついに昼夜逆転してしまった。
睡眠薬ののみ頃を逃し、結局せいうちくんが仕事始める時分にのみ、昼に起こされてもなんだかんだ言って起きなくて、やっと活動できるようになったのが18時。
横でせいうちくんが寝てるのもナンだが、まずい、これはまずい。
理由のひとつは精神的な不調だが、もうひとつは立原あゆみの「JINGI-仁義」全40巻ぐらいあるのを読み始めたらびっくりして止まらなくなったこと。
年代の違う人は驚かないんだろうが、私にとっては「あの『麦ちゃん』の立原あゆみだよ?ヤクザマンガで「明るいお日さんの下で見るお〇こもいいもんだ」(自主規制)だよ?真珠5コ入りだよ?
全国の北大医学部目指した今の50代60代に謝ってもらいたい。
その後の時代は「動物のお医者さん」のせいにしていいから。
あんまり驚いたので不良モノに回帰して高口里純の「ロンタイBABY」から「花のあすか組」、市東亮子の「やじきた学園道中記」、たがみよしひさの「軽井沢シンドローム」をちゃんぽんにして読んでる。
「不良」とつきあったことはあってもなったことはないが、独特の隠語とか筋の通し方や決まりごとが面白い。
職人さんの世界なんかもきっと私は好きだろう。
今はせいうちくんも山田芳裕の「へうげもの」に夢中なのでベッドに行って本を読み始めるのが早くなってるけど、テレビ観る時は契約切れ寸前の「時代劇チャンネル」で藤沢周平と池波正太郎。
せいうちくんはなぜ中村梅雀の出るドラマばかり観たがるのだろう?
こちらもたいていヤクザがらみの話なので、私にとっても面白く、一石二鳥なんだけどね。
24年9月12日
元漫研部員が石川雅之の「もやしもん」を読んだことがないと言うと驚かれそうだが、もっと驚くべきは「もやしもん」をまったく聞いたこともないせいうちくんである。
ある意味、清水茜の「はたらく細胞」にも似たところのあるこのマンガ、名前だけはさんざん聞いていたが未熟なことに未読であった。
そもそも「もやしが生えるマンガ」だと思っていたぐらいで、まさか「もやし」が「種麹」のことだとは知らんかった。
何かが見えたり繁殖したりの話とは聞いていたけど、「発酵・感染に関する菌」の件だとは思わなかった。
「かもすぞー、ころすぞー」と空気中を飛び回る菌のすべてはとても覚えられないが、アルコールができる仕組みやインフルエンザに感染する原因はなんとなくわかった。
シャーレで培養する以外知らなかったので、とてもためになるマンガであった。
昼夜逆転があまりにひどく、睡眠薬を無駄にし、朝になっても眠れない日々が続くので、奥の手を出すことにした。
テレビを観てるとすぐうたた寝をしてしまうのである。
朝の6時半からせいうちくんを起こし、一緒に「時代劇チャンネル」の中から藤沢周平作の「橋シリーズ」から橋爪功が主人公の1本を選んで観る。
ところがこいつが面白すぎて、2時間ばっちり眠ることなく観賞しきってしまった。
毎日毎日、中村梅雀か橋爪功の顔を観ている。
画のクオリティが高い時代劇はあまり観たことないので、とても新鮮。
江戸情緒を味わいまくっている。
藤沢周平と池波正太郎の日々も、アマプラを通して無料期間内視聴し、すでに解約した時代劇チャンネルが切れる今日までだ。
夜に、京都での仕事を終えた息子が帰って来た。
大学の講座とインプロコントのワークショップを経て「23時ごろ、車で帰る」と言っていたのでカレーとチャーハン作って待っていたら、「終電頃の時間に帰る」と書いてきた。
「車じゃなかったのか?車で、1時半とかに帰ってくるって意味か?」と悩んでいたら、23時頃に「電車に乗った」。
どこから?まさか京都駅から?とせいうちくんと2人で悩んでいたら、どうやら「下北沢のお店に人と一緒に車で帰ってきて、電車に乗って実家まで来る」という意味だったらしい。
0時頃、いきなり帰って来た。
めずらしく「ただいま」じゃなくて「お邪魔しまっす」と挨拶するのは、他人の家に泊まりまくって来たからか、自立してきて実家が「訪問先」になったのか。
シャワーを浴びて、ごはんは食べてきたらしくていらないって。
大学の講座はうまく行ったが、せっかく京都まで交通費もらって行くので関西方面のインプロプレイヤーさんたちと親交を深めたいと計画したワークショップは参加者1人だったらしい。
「でも、いい劇場を教えてもらったりして、ためになったよ。京都でライブやりたいなぁ」と疲れながらも満足そうだった。
明日の夕方から我々は旅に出てしまうので、5日ばかり息子に留守番を頼んで家を託すわけで、なにやらいろいろ不安だが、何度も泊まっているし居続けも初めてではないのでどうにかするだろう。
彼が実家を出てから引っ越したマンションなので、3歳から23歳まで20年間育ったマンションほどは慣れてないだろうけど。
「布団は毎日風に当てろ」「風呂はちゃんと洗ってくれ」と細かい指示を出しつつ、今夜は遅いので、みんな就寝。
24年9月13日
昨日のうちに荷造りを終えて、せいうちくんは出社。
昼の会食がすんだら帰ってきてリモート会議をひとつこなして、16時頃にGくんがキャラバンで迎えに来てくれる予定。
結局、今日も朝まで眠れなかった私はおにぎりを作るべくごはんが炊けるのを待っている。
現在、住居不定の息子に「これからしばらくよろしくだけど、お互い顔を見飽きる前に行く先が決まるといいね」と言ったら、
「僕もキャラバン借りて少し車中泊をしてみようかな。でも9月中は演劇の稽古で忙しいし、10月もなんだかんだ入りそうだな」と言っていた。
自宅にキャラバンを停めてもらっているGくんはなんだかんだしょっちゅう短い車中泊の旅に出ているので、くやしいから君も使って少し元を取ってくれ。
ただ、日々充電のデータを取ったり配線を工夫したりして車を電化してくれてるGくんにはとても感謝しているよ。
今回、3人で長老の別荘を訪ねるにあたって、帰り道はGくんの好き放題な道を選んで走ってもらうことにした。
「高速でなく下の道を、できるだけ多くのスポットに停まる。来た道は決して戻らず、ひと筆書きのように通り道を塗りつぶして走る」をモットーにしている彼にとって、すぐ高速使いたがったり道の駅があっても宿泊するのでなければ停まらない我々とのドライブはストレスらしいから。
とても久しぶりに御手洗潔が出てくる島田荘司作品新刊を読んだ。
スウェーデンの大学に研究者として赴いてから、ワトソン役の石岡くんに怪事件のレポートを送らせ、電話や電報、メールで指示を出すだけだった御手洗は、最近すっかり相棒をスウェーデンのジャーナリスト、ハインリッヒに取っ替えてしまった。
全国の「御手洗×石岡」のファンは泣いてるだろう。
20年前の天才バレリーナ殺害事件の謎を解く今回の「ローズマリーのあまき香り」も、あいかわらずの島田節で、歴史と減殺の世界情勢を織り込んで謎をちりばめ、読者を散々引っ張りまわしてから意外な、そしてやや強引な結末に持っていく。
「そりゃまあ、そういうわけだったんだろうけど」とは思うが、なんとなく納得がいかないのは浦沢直樹のマンガを読んだ時に感じる気分に似たものがある。
しかし御手洗潔、健在でよかった。
そうそう、高原は寒いと聞いたので普段使わない上着を探して書斎のクロゼットを開けたら、「サトウのごはん」の類似品が山のように積んであった。
せいうちくんが米不足に対処して買っておいたらしい。
聞いてはいたがあまりの量にびっくりして思わず叫んだ。
「『ごはんですよ!』が山ほどある!」
それを聞いたせいうちくん、大驚愕で飛んできた。
「『ごはんですよ!』がどこかにあったの?!」
言え、間違いです。パックの「ごはん」でした。
そりゃあ、ごはんはたくさんあっても全然困らないが、「ごはんですよ!」が山とあったらそれは一大事だ。
たいして消費期限長くないもんね。そんなに食べないし。
お騒がせしました。
さあ、おにぎり作って、少し眠ろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?