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年中休業うつらうつら日記(2024年3月8日~3月15日)・名古屋&琵琶湖京都車中泊日記

24年3月8日

木曜の晩、せいうちくんが会社の帰りに埼玉のGくんちに寄って、キャラバンを引き取ってきた。
家の近くに20時から8時まで12時間で300円のパーキングがあるので、出発が朝の時はいつもそこに停めている。
20時までまだ時間があったので、迎えに来たせいうちくんと一緒に車に乗って、前に住んでいたマンションの方のブックオフに向かう。
今はけっこう溜まっているからあまり買わないつもりだったが、やはりブックオフに行くとなんやかんや買ってしまう。

車をパーキングに収めて、家に帰って今夜はステーキ。
オーストラリア産の安い肉だが、炒めたピーマンと茄子を山ほどのせて、私はポン酢をかけて食べる。
たまにこうして肉をガツンと食べると元気が出る気がする。

明日の着替えや飲み物、充電用のコード類や私には大事な薬を念のため4日分ぐらい持つ。
お風呂の支度もしなくっちゃね。
せいうちくん2人分の寝袋と掛け布団1枚をIKEAの袋に入れて持てるようにしてくれた。

都市部には「道の駅」はないので、名古屋からいったん岐阜の方に移動し、翌朝また戻ってきて名古屋駅前の「トヨタ産業技術記念館」と、となりの「ノリタケの森」を見学する予定。
私は岐阜の山奥にそのまま分け入っていきたかったのだが、せいうちくんの先輩のSさんがちょうど先週、やはり名古屋・琵琶湖方面に行き、特にトヨタとノリタケがよかった、とFBに書いていたもんだから、「やっぱりそっちへ行こうよ」と言い出すと、せいうちくんはやや複雑な表情で、
「僕が行きたいって言った時は行かないって言ったのに、僕よりSさんの意見の方が影響力があるんだ。ふーん」と喜んでるのか悔しがってるのかわからない。
そういう場所を全部PCからスマホに送って、車中泊中はスマホをナビ代わりに使うやり方はGくんから教わった。

「呪術廻戦」を少し観て、早めに就寝。
朝は新宿伊勢丹にイチゴ大福を買いに行くシバリがあるから10時より前についても仕方ない。
今回の旅はイチゴ大福を名古屋の友達Cちゃんに届けるのがメインの目的なのだ。
名古屋のJRタカシマヤから鈴懸が撤退してしまったため、もう名古屋では鈴懸のイチゴ大福が買えない、と嘆いていたもんだから。
そもそもCちゃんにおみやげでもらって以来大ファンなので、11月になってイチゴ大福の販売が始まると時々買っている。
そして3月いっぱいでいったん販売終了だ。
お日持ち1日なので通信販売もできず、ホントに当日買いに行くしかない。

今回はせいうちくんと2人なので、贅沢して東名高速使い、まず名古屋に「鈴懸のイチゴ大福」を届ける。
でも、朝、我々が通りがかる時に留守だからイチゴ大福も大人買いした「エロイカより愛をこめて」の裁断済みを渡すこともできないと思っていた都内の友人ミセスAが、「長男なら家にいます!渡していただければ!」と思いついたので、急遽エロイカを荷造りし、イチゴ大福も予約しておいた分以外にも買うことにして、出かける。
岐阜を回りたいせいうちくんと「まことや」の味噌煮込みうどんも食べちゃおうっていう
コラボ企画だ。2泊3日で、出かけるぞ。


途中、安定のアホ毛をふわふわさせたまま途中のカフェでピザトーストセットととエッグトーストセットの朝食をとり、イチゴ大福を求めて新宿へ向かう、
昨日、せいうちくんが思ったより早く車を取りに行ったので、親切なGくんがクーラーボックスに凍らせた水の2リットルボトルを入れて予冷しておくのと、お湯をポットに入れておいてくれるのを忘れたらしい。
昨夜のうちに車に積んであるヤカンを持ってきてお湯を沸かし、魔法瓶を満たしておくつもりだったが、我々もすっかり忘れていた。
カフェで「車の調子が悪いからお湯をかけたい」」とヤカンに一杯の熱いお湯をもらい、魔法瓶に入れて問題は解決。
サーモカップも用意し、緑茶のティーバッグとかインスタントコーヒーとかいろいろ持ってきたから、走行中に温かいお茶が飲めるよ。
あ、梅昆布茶忘れた(涙)。


新宿伊勢丹には開店30分前に着き、駐車場で待機してた。
せいうちくん調べでは5千円買ったら3時間半分の駐車券がもらえるそうだ。
伊勢丹で鈴懸に行くのには慣れているせいうちくんが開店前に並んでたのに、入り口の選択を間違えて鈴懸の列は最初のダッシュで出遅れた分、40分の列ができていた。
予約したものを受け取るにも並ばないといけないんだ。
腹立ち紛れに予定していた自分たち用のイチゴ大福10個に桜葉餅4個が加わった。
まあ、どうせミセスAのご一家向けにイチゴ大福8個を追加して買うから、いいんだ。

悲しかったのは、せいうちくんが調べたのとは別の、一番近い駐車場に入れてしまったため、1万円以上お買い物をしないと駐車券がもらえないこと。
実際、あと300円ぐらいで届いたので、知っていたらイチゴ大福をもう1個余分に買っておいたんだが。
泣きながら駐車料金1500円を払った。これは理不尽だ。

目黒の方に向かい、ミセスAと連絡を取り合っていたら、子供を迎えに出たり入ったりしている彼女が「会えるかも!」「あー、今から出なきゃいけません…」を繰り返しているうちに、結局ちょうど彼女が在宅している隙間時間に到着できた。
エロイカの入った段ボール箱を渡し、イチゴ大福の袋を渡す。
ミセスAは初めて見る我々の愛車に、「まさにうち向けの車ですね」と感心していた。大家族だからね。
長男くんと末っ子ちゃんに車の中を見せてあげて、ミセスAは「これは本当に寝られますね。楽しそうな趣味ですね」と感心してくれた。

また今度ゆっくり会おうと約束して、いったんはA家を離れたが、私はどうも不安でしょうがない。
Cちゃん向けの、6個入りの箱を渡してしまったような気がしてしょうがないのだ。
車に残った箱を確認したら、やっぱり8個入りが残ってる!
あわててミセスAに電話し、10分ぐらいかけて交換に戻る。
よかった。
お母さんと妹さんと食べるCちゃんは持て余し、A家では争奪戦が勃発するところだった。
せいうちくんよ、キミはなぜ確信をもって間違った方を渡すのだ!
雨が降っているかもだからミセスAに渡す方にビニール袋をかけてもらったのだとばかり思っていたよ。

こんな混乱はあったものの、新東名高速道路に乗って一路名古屋を目指す。
新東名は初めて走るが、制限速度が120キロだそうだ。
ということは120キロが普通で、それ以上で走る車も多いってことだろう。
高速は私の方が得意なのでかなり長い間、ドライバーを務めた。
安全に行きたいから90キロぐらいで左車線に張りついていようと思ったが、たまにものすごく遅い車に遭遇する。
しょうがないから中央車線に入って追い越すと、まだキャラバンの車幅に慣れない私は左右両方を気にするのが難しい。
で、いっそのこと、って右車線を130キロぐらいで走ることになる。
それでも追い上げてくる車が絶えないのは右車線の宿命。
ぐいぐい近づいてこられておとなしく中央車線に戻るが、その速い車が去った後にかなりの空白ができているとまた右車線に戻ってしまうのが、サガ。
せいうちくんから「ずっと左にいてもいいんだよ」と言われても、名古屋人の飛ばし屋の血が騒ぐんだ。
たまたま強風だったので、車体の横面積が広く荷台の軽い状態のキャラバンは風にあおられてハンドルを取られそうになる。
大型トラックに抜かれると風圧で引き寄せられちゃうほど不安定だ。

半分ぐらい運転したところでせいうちくんに交代し、無事名古屋に入った。
市内の運転はおまかせする。
予定より20分ぐらい遅れて「味噌煮込みうどんのまことや」に無事に入れた。
市内に2件あるまことやは私が知る限り一番おいしい味噌煮込みうどんのチェーン店で、今回行ったのは昔、住んでいた当たりの近所。
家族連れで帰省するとよく連れて行ってもらったが、自力で来たのは初めてだ。
Cちゃんちの近所のまことやはなぜか金曜は休む、不思議な店なので今日は行けない。


「名古屋人だから海老天が好きだろう」と思われるのは業腹なんだが(エビフライも海老天も、特に好きではない)、ここまで来たら鶏肉と卵と大きな海老天の入った「親子海老天味噌煮込みうどん」を注文する。せいうちくんも同じ。
いくら海老天が入っているからと言っても、うどん一杯に1780円はかなり勇気がいるなぁ。
でも、海老天抜きの「親子」でも1400円だから、外食としての味噌煮込みうどんはそれなりに高い食べ物だ。

「名古屋に着いた。天白のまことやで『親子海老天味噌煮込みうどん』食べてる」と、今日は美容院の予定がどうしても外せないのでイチゴ大福は宅配ボックスに放り込んでいくつもりだったCちゃんは、「もうじき美容院が終わって、帰る。もしかしたら会えちゃうかも」と連絡してきた。
実際、我々(特に猫舌の私は時間がかかった)が食べ終わる頃にはCちゃんは家に帰ったようだ。
久々のまことや、実に美味しかった。

予定をずいぶん過ぎてCちゃんちに着いたら、家の前で待っててくれた。
用意のイチゴ大福と、おまけに網代から取り寄せたとびきり美味しいイカの塩辛を渡したところで、Cちゃんが「ここはやっぱり、お茶でもどうぞ、って言うところよね」と言うので、深く考えずに「うん、私はとっても呼ばれたい」と、せいうちくんと一緒に上がり込んでしまった。
Cちゃんはいつも家を完璧に片づけて人を呼ぶタイプなので、いきなりの訪問者に少し戸惑っていたかもしれない。
「美容院に行ったせいなのか、テンション高いね」と言ったら、
「そりゃそうよ、お友達がいきなり来てくれたんだもの!」と歓迎してくれたが、あとからせいうちくんに、「彼女みたいなタイプの人の家にいきなり上がり込むのは気の毒だよ。僕はやめとこうよって言ったでしょ」と叱られた。
でもゆっくり顔も見られたし、猫ちゃんにも会えたし、Cちゃんはせいうちくんに投資の指南をしてくれたうえ、「これ読めば簡単よ」とノウハウ本を惜しげもなくくれた。
はい、頑張って資産形成します。
我々、銀行に貯金持ってるだけじゃインフレでどんどん目減りしちゃう世代なんだものね。


Cちゃんちにいるうちに、明日、京都で友達の結婚式に呼ばれている息子とメッセージをやり取りしてを名古屋駅で拾うか京都まで迎えに行くかが決まってきた。
最初はトヨタ産業技術館を見たあとに名古屋駅で拾う話が成立していたんだけど、京都まで来てもらえたらそれはそれで嬉しいらしい。
「いっそ夜中でも迎えに行くから、一緒に車中泊しない?」と何度か誘ったが、さすがに一緒に招待されている友人たちと語り明かすよ、とマイルドに断ってきたので、朝の8時に迎えに行くから宿が決まったら教えて、となっていた。

京都まで行くと楽しみにしていたトヨタやノリタケが見られないんだが、そこはGWにまた名古屋に来たらCちゃんが案内してくれると請け合ってくれたので、安心して今回は忘れることにした。

外まで出て見送ってくれるCちゃんに手を振ってお別れし、駐車場の高さ制限が2.1メートルなのでやはりGくんの言う通りハイルーフは避けておいて正解だった、としみじみ思う。
この度の間、幾度となく同じ感想を持つことになるのだが、今はまだ1件目だ。

今夜の宿はもうちょっとで滋賀県な岐阜県の端まで行くことにした。。
家を出てから逐一FBに上げているので、「量は多くないが、チラチラと雪予報だぞ、関ヶ原」とGくん情報。
確かに名神高速を走り終わって山に入る頃には粉雪がちらついてきた。
「夏用タイヤではダメだ。次の冬までにわしはフォーシーズンタイヤを買う」と宣言していたGくんの先見の明に、またまた感心させられた。
確かに日本のどこにいつ行くかわからない車中泊の旅を楽しむには、チェーン積んでてもそれだけで済むものではなさそう。


滋賀県にもうじき突っ込みそうな岐阜県の端、「道の駅 池田温泉」にたどり着いたのは21時ごろ。
足湯しかないうえ、夜遅いのでもう閉まってる雰囲気。
池田温泉新館と本館が少し先にあるようなので、今夜はゆっくり寝て、明日は10時からの温泉を楽しんでから出発しよう。

これまで訪れたように車中泊する気満々の車がたくさんいる、ってわけじゃないやや寂れた道の駅だった。
内側から窓に目隠しを貼り、後部座席をたたんでGくんが用意してくれた銀マットの上でやっとひと息。
晩ごはんは味噌煮込みうどんでおなかいっぱいだから、とりあえず魔法瓶のお湯でサーモカップに緑茶のティーバッグでお茶を淹れ、おやつタイムだ。
ここまでですでに昼ご飯がわりに食べてしまったイチゴ大福は6個、桜葉餅は2個残っている。
イチゴ大福を2個ずつ食べ、せいうちくんは「明日のことは考えない!」とさらにイチゴ大福と桜葉餅を1個ずつ食べてしまったので、もう彼の分は残ってない。
「お日持ち今日まで」とは言え、まあ明日ぐらいは大丈夫だろう。
明後日の朝に息子を拾う頃まではもたないだろうが。

夜、ちょっと定例ZOOM会に入ってみたが、Sくんがまだ酔っ払ってもいないだろうに、「40分も並んでイチゴ大福を買うなんて、行列商法に引っかかっている。そんなものにだまされて美味しいと思い込んでいるのはバカだ!」と言い放つので、議論するのもナンだし、と早々に落ちる。
最近のSくんは「○○するやつはどうかしてる」「こんなものを買うやつは頭がどうかしてるだろう」といった発言が目立ち、なにをそんなにやさぐれているんだろう。
一方的な強すぎる批判は決して楽しくないのに。
鈴懸のイチゴ大福は、私には美味しいんだよ、好きにさせといてくれ。

24年3月9日


温泉をゆっくり楽しむ。
ほぼ滋賀の岐阜県、池田温泉で朝湯。
関ヶ原はやはり雪が降る。
雪のちらつく露天風呂は素敵な風情だった。
せいうちくんの好みで本館を選んだが、私だったら「バリアフリー」に力を入れている新館にしちゃうなぁ。
でもお湯はおんなじで、お肌つるつるのナトリウム泉。
露天風呂が広くていくつも浴槽があって、子供用には滑り台がついていて楽しそうに子供たちが滑っていた。
大人はやっちゃいかんのだろうな、とものすごくガマンした。


粉雪舞い散る関ヶ原。小早川秀明の陣とか大谷刑部の陣とかあちこちに看板が。雪でなければいっこずつ降りてみるんだが。
去年ずっと楽しんだ「どうする家康」を思い出し、Xに書き込まれていた「ぐりとぐら」の絵の「じぶとぎょぶ」の話に花が咲いた。
琵琶湖を望むスタバで、抹茶ティーラテとキャラメルマキアート。雪景色もついてくる。
「カフェなんぞ意味がわからん」と言うGくんが一緒の時には起こらない風景。
ファミマのカフェラテLサイズのリーズナブルさも身に染みる。
巨大駐車場の店舗の群れにはBeisiaもカインズもあるよ、Gくん。


安土城跡。ついに杖が出動するも、山の上までの石段は無理と判断し、せいうちくんだけ現場に向かう。
車でマンガ読みながらの待ち時間。これはこれでゆったり。
登頂したらしく、絶景の写真を送ってきたと思ったら20分後ぐらいに息を切らせて戻ってきた。
「すごいよ!登ってみてよかった!登らないと安土城は理解できない」と興奮してた。
入山料が700円、頂上でお抹茶をいただくコースは1200円で、せいうちくんはもちろんお抹茶は無視して700円で済ませていた。
それでもずいぶん高いと思うが。

16時までの安土城資料館、セミナリヨ、信長の館のどれかひとつしか入って見る時間がなさそう。
「信長の館」を選んで飛び込む。
完成した安土城を、信長がフロイスを伴って見て回る、というCG映画が最終上映中だったので、後半少し、観ることができた。
「ヨーロッパにもこのような見事な城はありませぬ」と言うフロイスに、信長は、
「国に帰ったら、日本にはこのような城があり、わしがいるとそなたらの王に伝えてくれ」と言うんだが、「三体」を読んで以来「暗黒森林理論」にすっかり魅了されてる私は、
「信長、バカじゃん。そんな富と文化があるって知ったら、攻めに来るでしょ。つくづく家康の鎖国は英断だったねぇ。よしながふみの『大奥』では外国には赤面疱瘡はないようだから女子と同じだけ男子もいる、そんな国に攻め込まれたらあっという間に負けてしまう、と鎖国を決めてるんだよね」
あれもいい理由だね。


映像内では、安土城完成の翌年に盛大な「盂蘭盆会」が行われたとなっていた。
山全体に多数のかがり火を焚き、城もすべての灯りを灯したライトアップショーだった。
琵琶湖に浮かび上がるようなその姿はまことに荘厳で華やかで、人間の成したこととは思われなかった。
当時、周囲からそれを見た民たちには、信長はほとんど神に見えたことだろう。

上映が終わり、中央にでんと建てられた、焼失して今はない安土城の絢爛たる複製をじっくり眺めた。
1992年の「スペイン・セビリア万国博覧会」で日本館のメイン展示として作られたものを、ばらして持って帰ってきたらしい。
2人とも車内にスマホを忘れてきたので写真が取れず、残念だった。
「天下布武」黒Tシャツの生地がいいので息子にあげようと1枚買う。
「キミはどこに行っても息子のTシャツを買っている」とせいうちくんの不興を買ったようだ。


今夜の泊地に決めた「道の駅 琵琶湖大橋米プラザ」に向かっていたら、大好きなバームクーヘンの店、クラブハリエの総本山に遭遇した。
クラブハリエが「たねや」という滋賀にある和菓子屋の傘下だとは昨日のzoom会で思い出させてもらったけど、全然意識せずに安土城跡から宿地に向かっていたら「クラブハリエ帝国」にぶち当たったのだ!
クラブハリエのテーマパーク、と呼ばれる「ラ コリーナ近江八幡」らしい。



ディズニーランドの2割ぐらいの大きさの巨大な駐車場があり、ちょうど出てくる車で対向車線は大混雑だった。
なんとなくムーミンっぽい草葺きの屋根の通路や緩い円弧を描く建物に囲まれ、中央には広い中庭があった。
「なるほど、バームクーヘンなんだ」と感心しながら、おみやげと自分用にごく普通のサイズのバームクーヘンを2つと、ミニ・バームを3個買う。(ミニはここでだけ買えるオリジナル・パッケージで、普通のより高かった!)
やはりバームクーヘン型のガラスのショーウィンドウの中にはさまざまな大きさのバームクーヘンが展示してあった。
直径40センチぐらい、高さも40センチ近くありそうなやつが1万円ぐらいで買える。
ガマンするには相当努力が必要だったが、昨日からの和菓子三昧と財布の痛みが私の退却を助けてくれた。
焼きあがって棒にささった状態で展示してあるものは長さが2メートルぐらいあっただろうか、確か3万円ぐらいするのだった。
予約すれば買えるらしいよ。
千駄木生活の最後に行きつけのバームクーヘン屋さんでそういう意味でのホールのを2本買って友人へのお土産にしたが、さすがに大きさも品質も値段もけた違いな雰囲気だった。


2階に行っていたせいうちくんが戻ってきて、
「すごいよ。上には工場の展示があるよ!」と言うので上がって見たら、ガラス窓の向こうに何百本ものバームクーヘンが棒刺し状態でびっちり並んでいた。
なんでも多すぎるとちょっと怖いものだが、生まれて初めてバームクーヘンが怖いと思ったよ。

もう店じまい状態だったので、あれほど混んでいた帰り道が出る時はもうひと気もなくガラガラになっていた。
琵琶湖のへりを走りながら景観を堪能し、琵琶湖の水に恵まれ、かなり広大な土地も広がる安土城のあたりが首都になっていた可能性について議論する。
せいうちくんは「家来たちが登城するのが大変」と「あり得ない」説を取っていたが、山や安土城は権威の象徴としてたまに使えばいいわけで、実際にはふもとの城下町に政治と経済の中枢を置いてしまえばそれで済むのではないだろうか。
京都に近くて帝にもにらみを利かせることができるわけで、信長が本能寺で死んでなければ日本の首都は琵琶湖のほとりだったのかもしれないと思うよ。
歴史は、常に起こってしまったことの結果であって、必然的に起こるわけではないんだよね。

今夜の宿地、道の駅琵琶湖大橋米プラザに19時半ぐらいに到着。
そこそこ混んでいるが、温泉はない。
なぜかロープを張った中に消防車が3台ほど停まっている。
警戒厳重区域?
せいうちくんが車の内装を整えてくれている間に湖畔で一服しようと駐車場のへりを越えてトイレや売店の裏の方に来たら、どこかから太鼓が響いてきた。
そして、対岸らしきあたりから「どーん」と大きな打ち上げ花火が上がった!

「すごいよ、花火だよ。おいでよ」とLINEを送るのに夢中になっている間に5分間ほどで終わってしまった花火だった。
最後はとりわけ派手な金色の火花が飛び散る大型花火だった。

さらに奥の方からは歌が響いてくるので建物の裏に完全に回り込んでみると、太鼓や笛に合わせて民謡歌手が歌っているようだった。
人が集まっている目の前の湖畔では、「火刑?」と驚くような10本ほどの柱が立っていて、根元に置いた枯れ草が燃え移って炎が上がっていた。

ちょうどイベントが終わったらしく、市長だか町長だかが「令和5年度の○○祭りを無事執り行えて、皆様のご協力に感謝いたします」と〆のスピーチをしている。
そうか、何かのお祭りに出くわしたのか。
こんなこと、山中湖に泊まりに行ったら「報湖祭」をやっていて、一生で一番近くで花火を見た体験以来だ。
あの時はあいにく低く雲が垂れ込めていて、せっかくの花火は雲の中で発光し、赤や緑に分厚い雲が染まるだけだけだったが、今回は見事な花火だった。


喫煙所が自転車置き場に変貌してて、地元の中高生なんかが数人ずつの集団で帰ろうとしていたのを捕まえて、いろいろ話が聞けた。
「草津ヨシ松明祭り」というんだそうだ。
12月に刈っておいた葦を焼くんだって。
山中湖同様、湖も恵みの元として感謝の対象になるんだね。
こんな日に来られて、ラッキー!
あと、中学生はやはり「呪術廻戦」が好きなようだ。
「アニメ、いいですよね」とヒアリングしたら「面白いっすね!」との答えを2件聞けた。
これだから旅は面白い。


車中泊モードに換装し、お湯を沸かし直して私はカップ天ぷらうどん。せいうちくんは器があくのを待ってチキンラーメン(卵まで用意してたのに、ブラカップ忘れてきちゃったんだって)の夕食。
せいうちくんが食べてる最中に友達の結婚式で京都にいる息子からメッセージ。
「仲間はみんな日帰りみたい。僕は快活クラブかなんかに泊まるよ」。
電話で話して、3、40分で京都駅に行けると伝えたら、「じゃあ、僕も車で寝ようかな」って、思わぬ車中泊の話が成立した!
この旅はいろいろ望みの叶う旅!

京都まで40分。
その間に店を探して担々麺を食べたらしい息子を京都タワー近くで拾う。
たどり着く前に「位置共有できる?」と聞いたらMessengerでたちまちつないでくれた。
我々が曲がり損ねてどんどん息子から離れて直進しているのまでよく見える。
「車線が多いから、曲がり損ねちゃったんだね、気の毒に。ゆっくり戻って」と息子に励まされながら、無事にピックアップ。
酔っ払いなので運転の役には立たない。
後部座席に放り込んで、Gくんの的確なアドバイス「もう高速に乗ってしまって、SAで寝るのが良い」に従って、名神高速の多賀SAに22時にたどり着いたところで宿泊。


せいうちくんが宿営の支度をしてくれてる間に、息子と喫煙所に行く。
彼は夜空を見上げて、
「見て、見て!なんて綺麗なんだろう!」と叫ぶ。
街灯の灯りに粉雪が舞い散る様子が浮かび上がり、銀河の星が多い部分を近くで見たらさもあろう、という情景がそこにあった。
昔、一緒に甲府に行った時、富士山の写真を撮る私に、「僕はこういう美しい景色とかにあんまり心が動かないんだよね。冷たいんだろうな。名古屋のおじいちゃんに似たんだと思うよ」と言っていたのに、それから10年の間に彼は「情景」に感動する柔らかで感じやすい心を育んでいた。
私の方がよっぽど冷たい人間だよ。
何度も何度も感嘆しつつ上を見ている彼の心に、充分について行けたかどうか自信がない。

我々はいつもの2人用寝袋+掛け布団、息子は-15℃に耐えるGくんの寝袋を拝借して就寝。
ベッドキットのおかげで広々となった荷台は、我々は頭を後部ドアに向けて並んで寝て、息子は後部座席をたたんだ部分に上半身を預けて、やや前後にずれた形であれば十分に3人が寝られた。
実際、みんなぐっすりと熟睡できた。

24年3月10日

「あと20分」とぐずる息子をとりあえず後部座席に座らせて、荷物を片づけて6時過ぎに出発。
息子がしゃんと目が覚めてからは彼にも運転してもらった。
「ディーゼルなの!」とかあれこれ驚いていた。


中央高速に入ってからは運転を息子に譲って後部座席でずっと寝ていたせいうちくん。
見事な富士山とか、全部見逃してるよ。
美しいものに心惹かれる人になったらしい息子は、雪がやんで空気がきれいになって澄んだ空にそびえる富士山に幾度となく感嘆の声を上げていた。
成長著しいものだ、と感心したよ。

息子は車の後部荷台の広さや快適さに驚いたようで、「いい趣味を持ったねぇ。これならすごく楽しめそうだね」と自分も妻のMちゃんと行きたそう。
今度、Gくんちに行って車借りて、2人で行っておいでよ。

14時ごろに家の近くまで来たので、来週の生活用の買い物をし、いったん家に帰って持ち帰るべきものを車から引き揚げる。
息子がシャワーを浴びたいと言うので出発が少し遅くなった。
それでも大宮に息子を下ろし、Gくんちに車置きに行って少し上がりこんで車中泊の技術向上委員会を開いてきたが、18時からの4K大河ドラマ放送開始に間に合った。

「そっちに向かうから、位置共有するね」とGくんに知らせたら、すぐに「Googleマップに出ないから何を使っているんだ、と思ったら、Messengerからでも位置共有できるのか。ひとつ知識が増えて、よかった」と返事が来た。
息子は「Gさんって、本当に頭が良くて、いい人なんだね」と感想を漏らしていた。
知っているのと違うやり方をされると「そんなの知らないぞ」と怒ったり機嫌を損ねる人もけっこういると思うんだが、Gくんにとっては「新しい知識」は常に歓迎すべきものらしい。
確かにその姿勢には感心する。

息子たちはカナダには無事に行けそうで、今、手続きが進んでいるらしい。
帰ってきたら、また近くに住んでほしい、とMちゃんのお母さまが言っているそうで、ほんのちょっと悲しくなる。
息子がさぁ、また、「父さんたちのこともちょっとは考えに入れてよ」というせいうちくんに、「そう言われてもねぇ」とか煮え切らない返事をするからなおさら。
別に近所に住んで孫の面倒見てあげる、とか思ってないからいいけど、ちょっとだけこっちにも聞いてみてほしいな。
最近は女の子の方が手元における、と喜ばれるってのはこういうことか。

ゆっくり大河観て、「わー、すごい!NHK、攻めてるねぇ」と感嘆の声を上げたり、呪術廻戦をどんどん観進めていたらもう次がなくなってしまった。
しょうがないから録画してあった「薬屋のひとりごと」を観始める。
派手さは全然ないけど、話はさすがラノベ原作で、面白い。
マンガは「ねこクラゲ版」と「倉田三ノ路版」があるが、私は「ねこクラゲ派」だ。
アニメもそっちの絵だと思う。

ああ、久しぶりの家はいいね。
自分ちの風呂に入り、自分ちのごはんを食べ、自分ちで眠る。
これはこれで旅の醍醐味の一つだと思った。

Gくんは行く先を決めて、駐車場のあるところとか全部チェックして経路を決めないと不安なビビりだ、という旅のスタイルだが、せいうちくんが関わるとわりとアドリブだらけの旅になる。
今回は私がそこここでワガママを発揮したのでなおさらだった。
でも、イチゴ大福の配達先で会えない予定の友人たちにちゃんと会えたり、調べて向かったわけではないクラブハリエにぶつかったり、琵琶湖のお祭りや花火が見られたり、何よりも予定にはまったくなかった「息子との車中泊」を実現できた。
ハプニングに富んだ、楽しいことばかりの2泊3日だった。

Gくん、「無計画の計画」もなかなかいいもんだよ!

24年3月11日

心臓の薬がほとんど底をついていたので、昼前に起きてクリニックに月イチの検診に行く。
今回はレントゲンと心電図もとった。
レントゲンでは心臓が少し肥大しているが、水がたまったりはしていないから大丈夫だろう、心電図は異常波が変わらず出ているけどこれも気にしないでいいでしょう、ということでクリア。
ワーファリン値は理想のど真ん中「2.2」。

あとは3か月に1度ほどの採血も行って、薬を1か月分、内容は全く同じでもらって一段落。
処方箋をアプリ送信しておいてもまだ12時前だから、整形外科にも寄ろう。
月曜の午前診察の終わりごろはあまり混んでいなくて、すぐに呼ばれた。

「旅行に行ったので」とけっこう歩いて両ひざが痛い話をしたら、ポイントを押さえて診てくれて、「水は溜まってないから大丈夫。どうしてもね、これだけ軟骨がすり減り切っちゃってると、長く歩くと痛いよね」と鎮痛効果と炎症を抑える効果のある飲み薬を出そうかと言われたけど、ただでさえのんでる薬が多いので、断っておいた。
シップと鎮痛消炎ジェルをもらっておしまい。

家に帰ってしばらくしたら薬局からお知らせが来たので、取りに行って本当の仕事じまい。
あとはゆっくり寝て休もう。
今日も出社して働いてくれてるせいうちくん、ごめんなさい。

24年3月12日

今日は何も予定がないので、ポカンと過ごす、
雨が降っていて、夜には大雨になるらしい。
こんな日にどこにも行かずにずんで、せいうちくんもテレワークなのはありがたい。

2回読んでもまだよくわからない花田稜の「デビルズライン」を一生懸命読み解こうとするのに疲れ、スキャン失敗がないかどうかの検品として「エロイカより愛をこめて」を読む。
最初にスキャンした奴が気に入らなくて、結局3回取り直してやっと満足がいくものができたので、これが全巻問題なければありがたい。

また、アマプラの「呪術廻戦」は少なくとも渋谷事変が終わるまではやって第2シーズンが終わるらしいので、我々は昨日、何か別の壁にぶつかったのだろう。
五条悟が封印され、これからナナミンが死んじゃうというあたりをじっくり観よう。
せいうちくんに伝えたら一瞬躍り上がって喜んでいたが、
「でも、第3期は2026年の7月だってよ」と「悪いニュースを後に伝えて」みたら、しおしおと元気なくなってしまった。
うーん、やはり良いニュースを後にするべきだったかしらん。

24年3月13日

歯が少し痛いので、歯医者に行ってついでに歯のお掃除をしてもらおう。
だいたい知覚過敏なだけなんだよね。
疲れると歯茎が腫れて起こるらしい。

案の定、何も見つからなかった。
車中泊中、息子と歯を磨いていて、「歯間ブラシ持ってる?母さんのに余分があるけど」と言ったら、「僕も持ってるよ」と差し出すのは1回ずつ使い捨てのデンタルフロスを張った糸楊枝。
この人たちは小さい頃から「歯茎や歯間をきれいにする」のを教わっていて、いいなぁ。

我々の世代は「歯の表面を磨く」ことだけを教え込まれ、年に1回ぐらい、「大きな口と歯ブラシの模型」を持った人がやってきて歯の表面に歯ブラシを押し当ててくるんくるんと手首で回転させながら表面を磨く方法を教えて去って行った。
そのせいで、30過ぎにはみんな歯周病になっており、初めて歯医者で「歯石を取った」時は歯の隙間に大穴が開いていて、口に水を含んだらその穴からだーっと水が漏れるような感じがしたものだ。

昨夜はとても疲れていて、春先のせいか気分も落ち着かず、せいうちくんがちょっと怒りっぽくなってるのもあって、なんだか世をはかなんでしまった。
夜、1人でキッチンでタバコを吸っていたら、引き寄せられるように包丁を取り出し、太ももに切りつけてしまった。
うちの包丁はこの危険があるので全部あまり切れないようになっており、実際に思いきり突き立ててぐいと横に引いても1センチぐらいの傷ができただけだった。
ワーファリンをのんでいるせいか、出血だけはやや派手だ。

とぼとぼと寝室に戻ってせいうちくんに「自傷しちゃった」と伝えるとびっくりして飛び上がり、抗菌軟膏や絆創膏を持ってきて、ティッシュで血をふき取って手当てしてくれた。
「ごめんね。こんなあてつけがましいことしちゃって」
「あてつけでいいんだよ。悲しいけど、わかってもらえないから、何とか自分の気持ちを伝えようとしてるんだよ。切るたびにひやひやするけど、その気持ちはちっともおかしくも恥ずかしくもないよ」と慰めてくれた。

「息子の声が聞きたいなぁ」と言ったら、電話してみてくれた。
どうやら彼は風呂に入りながら電話に出ているらしい。
「お母さんが自傷しちゃったんだよ」
「えっ、どうして?」
「つらいみたい。話をしてあげてくれる?」と言ってるけど、息子の声を聴くだけでいいので枕の上でぶんぶんと首を横に振る。

せ「今は話せないみたい。今度、慰めてあげて」
息子「明日、稽古のあとで家に行こうか?」(私はまたぶんぶんと右に左に首を振って断った。
心配ばかりかける悪い母親だ。
せいうちくんは、こないだ別れた時に「妻のMちゃんのお母さんが、カナダから帰ってきたら実家の近くに住んでもらいたいと言っていた」と聞いてからずっと私同様むにゅむにゅした気分だったので、その話をしていた。

「もちろんどこに住んでもいいんだし、Mちゃんが一番楽に暮らせるようにしてあげてほしいけど、『お父さんやお母さんのこともちゃんと考慮するよ』って言ってほしかったな」「そんなの、考えてるに決まってるじゃない。言わなくてもわかってるんだと思ってたよ。それにちょっと恥ずかしかったし」
「思ってはくれていたんだね。ありがとう。でも、言われないと分からないことも多いから、できればきちんと言葉にしてね。これから歳を取ると君に頼ることも増えてくると思うから、よろしく頼むね」
「うん、会いたかったらいつでも言って。会いに行くから」

そんな話が終わった後、せいうちくんが、
「キミを寂しくさせてるのは息子や僕じゃなくて、キミを無視して虐げてきたお母さんだからね。そこはきちんと認めて、勇気をもって直視してね」と言う。
「お母さん」という単語を聞いたとたんにわっと泣き出してしまった。
「死にたい。死んで、お母さんのところに行きたい。お姉ちゃんより早く会いたい。そしたら私のことも可愛がってくれるかもしれない」と泣きじゃくる。
我ながら、心の傷が深いんだなぁ。

息子からメッセージが来た。
「辛かったら会いに行くから、遠慮なく言ってね。今夜はゆっくり休んで」
「死にたいよ。とても生きていられない。心配かけてごめんね。でも、なんか優しいことを言ってよ」と頼んだら、「鳥山明さんが死んで、僕の母が死ぬ。そんな3月はいやだ」と返してきた。
なかなかいいセリフだが、もうひと声。

そう伝えたら、「お父さんも入って交代制でやろう」と言ってきた。
せいうちくんはしばらく考えてから家族グループに「大好き 大好き 大好き 生きて」と書き込んだ。
「素敵だね」と息子。
「父さんらしいね」と私。
 
再び「お母さんのところに行きたい。お姉ちゃんより先に会いたい。お姉ちゃんのいないところなら、私のこと好きって言ってくれるかもしれない」と訴えたら、息子は、「もっといろいろ楽しい思い出を作ってから話しに行った方がいいと思うなぁ。どこの道の駅が寝やすかったとか、どこの県境が茂っていたか、どこのサービスエリアが寂れていたか、そんな話をたくさん貯めてからにしたら?」と言ってきた。
「そうだね。ありがとう。そうするよ」と返事したら、
「そうしてそうして。あのお姉ちゃんにはそんな面白い話はできまいて」。
なんか、ものすごくど真ん中に剛球のどストライクをぶち込まれた気がした。
そうか、私はお姉ちゃんにできないことがしたいんだ。
息子はその気持ちをよくわかってくれている。

おやすみメッセージを送りあって、せいうちくんと抱き合って泣き笑いした。
「お姉ちゃんは気が利いたことの言えない人だからねぇ。どこかの偉いスピリチュアルな先生にこう言われたとか、『愛ごはん』が身体にいいとかそんなことしか言えないよ」

そうか、今まで私は姉のことは眼中にないというか、話が合わな過ぎて好きでも嫌いでもない、なんとも思ってない相手だとせいうちくんにいつも言っていたが、本当は彼女の冗談のわからなさや話の通じなさ、独善的で上から目線なところが嫌いだったんだ。
「嫌いで当たり前だよ。お母さんとお姉さんは本当にキミをひどく扱っていたよ。お母さんのことはそれでも慕ってしまうのが子供の心だからしょうがないけど、お姉さんのことはちゃんと嫌いなさい。僕もあの人と話していると気分が悪くなってくるよ」とせいうちくん。
うん、押し込めていた気持ちをもうちょっと意識してみるよ。

結局、睡眠薬を多めにのんでも朝まで眠れなくて、マンガのスキャンをしまくっていた。
朝になって起きてきて、マンガの山が片づいてるのを見てせいうちくんがびっくりしてたよ。

でも、今、せいうちくんのお給料が下がる前に気になってるマンガを大人買いしておこうと思ってじゃんじゃん注文してるから、またあっという間にマンガ置き場は満員になってしまうに違いない。

24年3月14日

ついに「呪術廻戦」のアニメ、第二期を観終わってしまって、「葬送のフリーレン」も先週増えた1話を観ちゃったので、「薬屋のひとりごと」に本格的に入った。
せいうちくんはアニメは「ルパン三世」と「カリ城」しか興味がないのかと思っていたが、やはりオタクの血は騒ぐものらしく、
「3種類の、まったく傾向の違うアニメを観ている。『薬屋のひとりごと』は超常能力が出てきたり戦ったりはしないから地味だけど、ストーリーをよく表現している」と喜んでいる。
日本のアニメ界はやはりすごい、と。
私も原作一本鎗派だったが、特に「呪術廻戦」でマンガでは描けない呪術の効果の見せ方とか、スピード感のある動きなどを見て、アニメもまたいいものだと思うに至った。

先週の日記で「『呪術廻戦』には字幕が欲しい。原作読んでないと、漢字が全然浮かばない」と書いたら、それを読んだ女友達がコメントをくれた。
「出張中にネトフリで観ていたのが実は呪術廻戦で、18話まで観ました。確かに字幕が欲しい。『じゅ』以外は全然わからん」と。
「『領域展開』とか『術式の開始』とか、漢字がわかってても理解できません」とコメント返しをすると、
「『領域展開』はなんとなくわかった気になっている。建築をなりわいとしているので、空間的なメタファーには親和性があるというか」
「なるほど!せいうちくんは鉄筋の壁が破壊された時に顔を出す『小棒』がにょきにょきしてて可愛いと言ってます。皆さんなりわいの影響大ですねぇ」
といったコメントを交わして楽しんだ。
ぜひ原作を読んでみてもらいたいものだ。

このコメント交換は、途中で建築家の親友であるMちゃんが「ネトフリは字幕つけられるよ」「まじか!」「まぢに。SFとか難しいのは全部字幕付きで観てる」「すげーわかりやすいよーー!」とやり取りを始め、おかげで私もアマプラの「薬屋のひとりごと」の中国名に読み仮名がつけられた。Mちゃん、ありがとう。
せいうちくんも大興奮で、「よし、これで『呪術廻戦』をもう1回だ!」と張り切っている。

マンガを読む方は、というと、『エロイカより愛をこめて』のトリビュート本を買ってから、前のスキャンが気に入らないので全巻買い直し、3度にわたる取り直しを経てやっと満足のいくものができた。
今はそれを二回り楽しんでいる。
エロイカがプネウマ集団に追い回されるあたりまで来たから、これでもうおしまいだな。
最後の短編、伯爵のグローリア家の過去の悲恋をでっち上げる話が大好きだ。
お貴族様は過去までずっとつながっていてうらやましい。
そういえば、少佐の方もあれはあれでお貴族様なんだよね。城に住んでるよ。
青池保子先生、もう少しの間、頑張ってください。
ラヴェンナの古書店主とか伯爵の「足長おじさん」とかの老人キャラが渋くて魅力的です!

24年3月15日

春河35の「文豪ストレイドッグス」と富士屋カツヒトの「19番目のカルテ」とコトヤマの「よふかしのうた」を大人買いした。
せいうちくんのお給料が4月から爆下がりして、しかも住民税は1年間、去年の収入に対して毎月払わねばならないという地獄がやってくるので、大人買いは今年度中に済ませてしまおう。


昨日の晩、同じ富士屋カツヒトの「しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事」と真鍋昌平の「九条の大罪」も出てるだけ買った。
全部自炊することを考えると少しくらくらするが、まあこれまで何千冊やってきたかわからない慣れた作業だ。
いつかは終わるだろう。(現実にはしょっちゅうひと晩徹夜すると終わってたりする)

怖いのは、まだ今年の1月と2月の家計簿をつけてないところなんだよね。
去年のは一応〆て、本代の支出の多さに一応自戒したつもりんなんだが、睡眠薬をのんでいい感じにぼんやりしながらAmazonをたらたら見ていると上記のようなことが起こる。

もっとも10巻セットぐらいだったら、1冊割にして500円を超えてるような場合は1巻から丁寧に個別注文すると、結果的にはセットより安く買えたりする。
送料がかかる分、ブックオフで350円ぐらいのをつかみ取ってくるのが一番安く上がるが(100均でそろう程度のものはもう狩り尽くした)、問題は、ブックオフでの欲しいマンガとの遭遇率は決して高くはないこと。
運よく遭遇できても、飛び飛びだったり1巻だけ抜けてたりすると、その穴をAmazonでふさげばいいとわかってはいてもものすごく腹が立つ。

4月からはせいうちくん5千円、私は4万5千円と予算が決められた。
彼我の差が大きすぎてせいうちくん可哀そう!の人権支援団体の声が上がりそうだが、せいうちくんの買う本は私はまず読まないが、私が買うマンガはせいうちくんもけっこう読んでるってところで、勘弁してもらいたい。

そんなせいうちくん、今日は特養に入所しているお父さんの面会に行って、帰りにイチゴ大福(また!とCちゃんあたりが悲鳴を上げそうだ)を買ってきてくれる予定。
週末はゆっくり休んで、「薬屋のひとりごと」をあるだけ観たらまた「相棒」に戻ろうかな。

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