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なぜ今、組織開発のプロがキャリアデザインに向き合うのか #1 個と組織の新たな関係が生まれる


◼︎はじめに

こんにちは。同じnoteの中で投稿しご好評いただいているコラム『やさしく、ふかく、おもしろい組織開発新論』からもおわかりのとおり、僕は組織開発の専門家ですが・・・

パンデミック以降、独自に開発したキャリアデザインのプログラム(何が独自かは後ほど触れますね)が、定番のキャリア研修とスイッチして導入されることが多くなり、仕事の3割程度になってきています。

これからお伝えしたいことは主に以下の方々を念頭に置いています。

  • 企業人事・人財開発の責任者、担当者

  • 経営者や企業現場のリーダー

◼︎キャリアデザインと組織開発を結びつける


なぜ僕がキャリアデザインが重要だと考えるようになったと思われますか?

ひとつには、コンサルタントになる前は、日・米の企業で人事をやっており、キャリアカウンセラーの資格も取得したということはあります。

が、それは副次的な要因でしかありません。

既存の延長線上でなく、クリエイティブなチームや組織を創ることがますます求められる中では、起点として個々人の価値観や目的を深く見つめ直すプロセスが重要だと認識するからです。

キャリアデザインのプロセスで、それを組織の文脈の中でも捉え直すことで、組織との新しい関係性を構築できるし、個人のキャリア展望と組織変革の方向性が連動することで、変革への共感が生まれやすくなります。

それを実現できるようなキャリアデザインプログラムを構築したのと、パンデミック蔓延の時期が奇しくも重なりました。

パンデミックは、個と組織の関係性を根本から問い直す契機となりました。つまり、リモートワークの普及などにより、「個人は組織に何を求めるのか」「組織にとって個人はどんな存在か」といった本質的な問いかけがなされました。

この流れにおいて、キャリアデザインは、新たな個と組織の関係性を構築するための重要な手段となるはず。

開発したキャリアデザイン講座(マインドフルカフェ®︎と言いますが、改名を考えています)を導入してくださる企業が年々増えており、かつ、リピート率100%なのも、このような背景があると捉えています。

◼︎「キャリア自律」が叫ばれるようになった背景

一方、大手企業を中心に多くの企業で当たり前のように語られるようになった「キャリア自律」の流れも、おさらいしておく必要がありそうです。

キャリア自律が日本企業で重視されるようになった背景には、以下のような構造的な要因が挙げられます。

日本企業がキャリア自律にシフトする背景

第一に、終身雇用・年功序列型の従来型雇用システムが、グローバル競争の激化や技術革新の加速により維持が困難になってきたこと。企業は社員の生涯にわたるキャリアを保証することが難しくなり、個人が主体的にキャリアを構築する必要性が高まっています。

第二に、急速な事業環境の変化により、企業が社員のキャリアを一元的に管理・設計することが現実的でなくなってきたこと。DXやAIの進展により、求められる職能が急速に変化する中、個人が自律的にスキルアップを図る重要性が増しています。

第三に、若い世代を中心とした価値観の多様化。従来型の画一的なキャリアパスでは、彼らの多様なキャリアニーズに応えることができず、若年層の離職を防ぐためにも対応が求められています。

ということで、キャリア自律を促進するための施策が、人事制度改革をはじめ、様々に展開されています。

しかし、僕の把握しているかぎりでは、目指す方向と現実の間には大きな乖離が存在しているのではないでしょうか。そのなぜを解明していきましょう。

◼︎こんなお悩みありませんか


企業人事・人財開発の方々は、上記のようなキャリア自律を推進すべきという組織的な要請と現実の間に板挟みになって、以下のような悩みに直面していませんか?

1.施策の実効性に疑問や課題

キャリア自律のためにキャリア研修やワークショップを導入しているが、その効果は一時的なものに終わりがちで、個人の気づきを行動に結びつけられていない。

2.経営層の本気度が弱い

短期的な成果が見えにくいので、方向性は理解されているものの、予算や人員の配分では優先順位が低くなりがち

3.現場マネジャーのコミット不足

目の前の業務遂行が優先され、部下のキャリア開発支援が後回しになり、キャリア面談のしくみがあったとしても形式的なものになりがち。

◼︎こうなっていたら要注意

もし、以下のような質問に心当たりがある場合、ちょっと注意が必要と思います。

キャリア自律において留意すべきジレンマ

1.「押しつけの自律」というパラドクス

キャリア自律を推進すればするほど、社員からは「結局は会社の都合ではないか」という不信感が生まれてしまう流れ。多くの社員は、キャリア自律を「企業による責任放棄」や「雇用保障の後退」として捉える傾向があります。特に、会社主導のキャリア形成に慣れてきた中堅・ベテラン社員の間では、「何を今さら」となって、突然の方針転換に戸惑いが生まれます。

2. しくみや制度での対応が形骸化

ジョブ型人事制度、社内公募制度、キャリア面談制度、リスキリング支援制度、キャリアカウンセリング制度、副業制度などを導入しても、従来の日本型雇用慣行との衝突や個人の準備不足、制度設計や運用の不備で形骸化してしまいがち。

3. キャリア自律に対する根深いところでの怖れ

キャリア自律が個人にも組織にとっても重要なことは頭ではわかっているが、それを悪用してわがまま勝手な行動に走ったり、不平不満が出てきたりすることへ、人事・人財開発を担う役割として潜在的な怖れがあり、なかなか思い切ったことがやりにくい。

◼︎真の原因


これらのことは、状況としては一つひとつがもちろん異なっているのですが、その根っこには共通の原因があると僕は見ています。

キャリア自律の本当の意味や価値が深いところで理解、共有されていないのではないでしょうか?

キャリア自律とは、前に記述したような激しい外部環境の変化の中にあっても、個人が自身のキャリアについて当事者意識を持ち、主体的・能動的に取り組むことです。

しかし、変化に適応することに焦り、翻弄され、自分を見失ってしまったら・・・つまり、危機感に煽られてリスキリングなどに取り組んでもあまり身にはならないでしょう。

とすれば、個々のキャリアがより柔軟で持続可能なものとなり、変化に対応できる力が養われるという方向には進みにくいですね。


◼︎解決の方向性

ということで、まず何を置いても不可欠なのは、自分自身の働くことに対する価値観(仕事の中で何を大事にしているのか)、動機(なぜこの会社で、この仕事をしているのか)、想い(仕事を通して何を実現したいのか)、感動(これまでの仕事の中で心を動かされた体験や感情)など、内面的な要素に重きを置きます。

これは、「内的キャリア」と呼ばれるもので、個人がどのように成長し、どのような経験を積み重ねてきたか、そしてその過程で得られた学びや充実感を重視するものです。

冒頭に「独自に開発したキャリアデザインのプログラム」とお伝えしましたが、この内的キャリアを明らかにし、それを軸に目の前の仕事とのつながりを発見しながら、自分ならでの仕事やキャリアをストーリー化していくものなのです!

キャリア開発の2つのパターン比較

翻って、これまで定番とされたキャリア研修プログラムにはある共通するパターンがありそうです。

まず、自身の経験やスキルを棚卸しするところからスタートします。それから自分の強みについて理解を深めます。次に、将来のキャリア像をイメージして現在とのギャップを明らかにし、それを埋めるためのアクションプランを最後に設定します。

そこで描いた仕事は5年後、10年後にまだ存在しているでしょうか?

キャリア自律は、英語で"Career Self-reliance"と言いますが、まさに「私(らしさ)を拠り所に」するキャリアが大事だと僕は思います。

※今後の記事連載

さて、以上がお伝えしたいことのあらましです。

あと2回、これに続く記事をお届けしようと思います。第2回はいまジワジワと導入企業が増えているキャリアデザイン講座の全体像、第3回はこの講座がワークする理由やもっとワークさせるためのポイントをお話させていただきます。


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