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選挙権のない人間が作った『JAPAN CHOICE』という選挙サイトについて

総選挙の最後の週末を迎えるにあたって、ひょっとするとこれが最後になるかもしれないと思い、思い残すことのないように書いてみようと思いました。

JAPAN CHOICE』という選挙向けのWebサービスの開発責任者をしているとんふぃと言います。「投票に必要な全ての情報が集まるプラットフォーム」を標榜して、これまで国政選挙のたびにコンテンツをアップデートして提供してきました。

僕一人で作ったわけではないので記事のタイトルは少しおこがましいのですが、発案者兼最終責任者としてこのサービスを運営しています。

すでに今回の衆院選版のJAPAN CHOICEも、まもなくユーザーが100万人を突破する見込みで、デモグラフィックデータから分析すると、10代、20代の投票者の約7%が使ってくれていることになります。
このように大きなWebサービスを、NPOという形式で、そしてエンジニアやデザイナー、シンクタンクの研究員や記者、学生といった様々なバックグラウンドを持つ同世代と共に作ることができたことを心から誇りに思います。

もう7年前になりますが、大学院時代にNPOを立ち上げたときは、同世代に一人でも多く投票に行ってもらいたいと思い、投票率を高める事業を様々実施していました。理由は、僕自身が外国にルーツを持ち、選挙権を持たない身だったから。当時も今も、だからといって選挙権が欲しいという思いはなく、むしろ選挙権がある同世代の多くがその美しい権利を行使しないことに悲しさを覚えていました。

数年、本当にできる限りの事業を行い、1万人を超える中高生に主権者教育事業を実施し、政治家と若者をつなげるフォーラムや実際に政策立案に関わる事業を実施したりしながら、自身の活動に限界を覚えるようになります。
同時に、無事に司法試験を終え、事業の方向性を再考したくなったタイミングでちょうどトランプ大統領が当選することになる2016年大統領選挙が始まったため、4ヶ月間、アメリカの「有権者と政治の距離」を確認しに行きました。そこで目の当たりにしたのは、政治的分断信頼できない情報の蔓延でした。

必ずこの「情報空間の歪み」は日本にも押し寄せる。そう確信しました。

同時に、様々な世論調査や意識調査において、日本の政治的無関心の本質は、「政治的な関心は一定程度あるが、選挙に行く人が少ない」ことにあることにも気づきました。なぜそこにギャップが生じるのか。やはり「誰が何を言っているかわからない」、「時間がなくて調べるのも億劫」など、情報が適切に届いていないことに原因があることも総務省などの調査でわかってきました。

そこで、「有権者が信頼を置くことができ、頑張らなくても投票先を考えられる情報サービス」を提供したいと考えたのが2017年のことです。当然ながら、分断を乗り越えるために政治的中立性を堅持して。そこからじっくり友人のエンジニアらと開発を進めようかと思っていたところ、いきなり解散総選挙が決まり、2週間程度の突貫工事で作ったのが当時のJAPAN CHOICE2017でした。これもd3.jsを用いて開票結果が地図上でわかりやすく表示される機能を開発するなど、とても思い入れのあるサービスです。

その後、2019年の参院選でも同じくJAPAN CHOICE2019を提供し、今回、改めて2021年衆院選版のJAPAN CHOICEを提供するに至りました。

主なサービスを簡単に紹介します。
投票ナビ(質問に答えて考えの近い政党をマッチング)
政策比較(75の争点について各政党の主張を比較)
公約実現度(与党の過去の公約600の達成度を5段階評価)
世論の変化の確認(過去8年間の出来事と内閣支持率を振り返る)
候補者情報(選挙区の候補者情報を1分で確認)

政党とのマッチングツールは、たくさんのメディアが提供するように一般化しましたが、それだけで投票先を決めてほしいとは思えず、75もの争点を設定し各政党の主張を比較するインフォグラフィックを作成したり、政権与党の約600の公約の達成度を1年以上かけて評価したりしています。

そして、今回のさらに目玉サービスとして「議員ペディア」という国会議員の図鑑を作ってみました。

こちらはPC推奨なのですが、(解散前の)衆議院にはどのような属性を持った議員がいて、どういう政策を支持しているのかを、ユーザが自分自身の手でポチポチボタンを押しながら分析できる図鑑ツールとなっています。
たとえば、選択的夫婦別姓に賛成の議員さんを探してみると、やはり「性別に相関がありそう」とか「自民党内にも賛成の方が結構いる」など色々な発見ができます。

なぜこういうサービスを作っているのかを説明するはずの記事なのに、思い入れがありすぎてサービスを紹介する記事になってしまっていますね。すみません。

さて、すでに書いたように僕には選挙権がありません。だからといって、選挙権が欲しいとも思っていませんし、帰化した後も選挙に行こうとは思いません。韓国の選挙にも行っていません。なぜなら、どの国のどの選挙でも投票しないということが、自分がこのサービスを作る上で最も厳格に政治的中立性を担保できると思うからです。
自分がこのアイデンティティをもって生まれてきて、生まれ育った日本という共同体に提供できる価値は、その「政治的中立」というラインを超えない点にこそあると僕自身は思っていますし、そこに矜持を持っています。

一人でも多くの方に、選挙・国政に関する情報を「安心して」「楽に」手に入れていただきたい。一人ひとりが頑張って多くの時間を割いて飛び交う情報から必死で投票先を決めないといけない世界を変えたく、『JAPAN CHOICE』、そして『議員ペディア』を作りました。

納得の行く投票先を決めるために一人でも多くの方に使っていただくことが、何よりの励みとなります。

最後になりますが、やはり政治的中立性を保つため、『JAPAN CHOICE』や『議員ペディア』の運営は全てユーザの寄付によって運営しております(詳しい理由は別のnote記事に書かせていただきました)。これまでもたくさんの方に支援いただき、JAPAN CHOICEを提供してまいりましたが、いよいよ今回は苦戦しており、サービス継続の是非を考えなければならないことになりそうです。しかし、最後まで諦めず、このサービスに価値があると思ってくださる方にご支援を募りたく、クラウドファンディングのページを最後の掲載させていただきます。ご高覧いただき、ありがとうございました。


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結城東輝(とんふぃ)
図書館が無料であるように、自分の記事は無料で全ての方に開放したいと考えています(一部クラウドファンディングのリターン等を除きます)。しかし、価値のある記事だと感じてくださった方が任意でサポートをしてくださることがあり、そのような言論空間があることに頭が上がりません。