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秋の日


いちょう並木が燃えるようにゆらめいて、青空とビルの谷間に遠くまで続いていた。
明るい空の下を歩く。
人が怖くて、知らない人にばかり会っていた。
働くのが怖くて、やりたくない仕事ばかりしていた。
何かを感じるのが怖くて、縮こまって過ごしていたら、外に出るのが怖くなってしまっていた。

深呼吸する。
考えすぎ、と諭してくれた声を聴く。
意味ではなく音として入ってくる声を私は背すじを伸ばして聴いている。

もっと自由に心が動く方に歩いていきたい。
人が羨むものがこの手の中にひとつもなくたって構わない。
そんなことを思った。
それだけでは生きていけない、と心の中で声がした。
そうかもしれないし、葛藤しながらバランスを取りながら、この綱渡りのような毎日を生きていくものなのかもしれない。

美味しいものをたくさん食べて、好きなものの話をしてたくさん笑って。
それをたくさん繰り返して、毎日毎日繰り返して、そうやって歩いていけたら、ずっと元気でいられるのかな。
そんなことを思いながら、一歩ずつ落ち葉を踏みしめて、前を向く。