漢字字形の「デザイン差をまとめる」行為を行った理由
先日、このような投稿をしました。
これは、文化庁「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」に書かれた、第2章の手書き文字でのデザイン差例について、1つの漢字でこれだけの例が掲載されているということをまとめようと試みです。
その後、反応を受けて下記の修正画像を投稿しました。
第2章以外にも、指針には「手書き文字の字形の例」が掲載されているため、それも加えたことと(手書き文字には制作者の権利があると思いますので、許諾が必要でしょうか……)、第2章以外でも字形のデザイン差は生じるので、そうした注記を加えました。
この「デザイン差をまとめる」という行為について、気にしていることがあります。
指針では「字の細部に違いがあっても,その漢字の骨組みが同じであれば,誤っているとはみなされない。」と述べられており、デザイン差は無限にあるので、「デザイン差をまとめる」という行為がそうした指針の思いに反してしまうのでは、ということです。
うーん、そうかもしれないし、でもなあ。。という思いがあります。
「骨組み」とは何を指すのか
「でもなあ。。」の理由なのですが(うまく伝えられるでしょうか……)、、
「字の細部に違いがあっても,その漢字の骨組みが同じであれば,誤っているとはみなされない。」とあるのですが、その「骨組み」の拠り所が「人々の認識での共有」なのか「漢字・書の歴史上の事例」なのか、戸惑うことがあるからです。
指針の第2章の例は「漢字・書の歴史上の事例」をもとに述べていることが多いかなと思います(あんまり漢字の歴史に詳しくないのでわかりませんが)。
しかし、世の手書き漢字を指摘する際は、「人々の認識での共有」での意味で指針の「字の細部に違いがあっても,その漢字の骨組みが同じであれば,誤っているとはみなされない。」が持ち出されることもあるなあ、と感じます。
例えば、「骨」の7画目、「月」の左の縦棒を「はねる」漢字は、書の歴史ではないようです。指針の第2章にも、「手書き文字の字形の例」にもありません。でも、大方の人が「骨」と認識できる字形なので、デザイン差と取ることも可能なように思います。
この辺がわからなくなるのです。
何というか、議論の余地があるところというか、いろいろ捉え方があるだろうというか……。
グレーゾーンならば、それはそれで承知できます。すぐにははっきりさせられないこともあると思いますし。
で、グレーゾーンがあるのならば、まずは指針ではどこまで触れているか、どこまで示しているかという事実をもう少し知らせていく必要があるのではと感じます。
「字の細部に違いがあっても,その漢字の骨組みが同じであれば,誤っているとはみなされない。」とはいうけれど、指針では何についてしっかりと記述しているのかを周知させることは大事なのではないかと考えています。
そんなわけで、「デザイン差をまとめる」という行為をしてみました。
まあ、漢字の字形の正誤にこだわること、問うこと自体が……という考えもあるとは思います。しかし、「正誤」の過熱こそが文化庁が指針を作ることにした理由の1つだと思いますし、仕事上、考えなければならないことだなと思うので、今後も直視していければなと思っています。
「デザイン差をまとめる」行為は、指針の思いに反しているのでしょうか……?
(2017.2.27追記)
上記ブログ記事の内容について、「指針の意図に反するものであるかどうか」を文化庁宛に問い合わせをしたところ、文化庁文化部国語課のご担当者様からお返事をいただきました。
お返事の内容は、
①文化庁国語課としては、作成記事は指針の意図に反していることにはならない。
②しかし、作成したポイント例やその説明を読んだ人に「これに少しでも違っているものは駄目な字だ」という解釈を持たれると、指針の意図とは反することになってしまう。
③読んだ人すべてが誤解の生じないような示し方をすることで、指針の意図に反するものではないと言えるだろう。
④指針を広めたいという考えには、感謝をする。
ということでした。
指針の意図と反する解釈を持たれる可能性がある、とまでは述べられていませんが、誤解の生じないような文章を心がけることは基本だと思うので、今後も配慮を重ねて作成します。
私にとっては、今回の文章が指針に合っているのかを不安に思っての問い合わせでしたので、お返事の中で、文化庁国語課としては指針の意図に反していることにはならないと述べていただけて、ありがたく思っています。
お答えいただき、誠にありがとうございました。
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