堤未果「ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか?」
堤未果「ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか?」読了。
しばらく前に読み終わっていたのですが、情報量が多くてなかなかまとめられず。
地球温暖化対策が食の分野にも持ち込まれていることに気づいて、愕然としました。世界では「肉食」が悪者扱いされ、特に「牛」が悪の権化のようにされているそう。
世界では遺伝子組み換え大豆と遺伝子組み換え酵母を使った人工肉が開発され、「植物由来」としてヴィーガンに人気。しかし、「超加工品」である人工肉は塩分、添加物も多く、肥満や糖尿病、がんの危険もある。
また、細胞から育てる培養肉の研究も進んでいるが、無菌室からウイルスだらけの外界に免疫を持たない肉片を出すことへのリスクが未知数。
満腹感を感じる遺伝子を破壊され、成長が早められ胃が破裂する遺伝子組み換えサーモン。
印象の悪い「遺伝子組み換え」に代わる「ゲノム編集」は、アメリカの推進を忖度したのか、2019年から日本で流通している。
ゲノム編集は表示義務、届け出義務がなく、消費者には見分けがつかない。「22世紀ふぐ」はふるさと納税で売りに出された。「22世紀鯛」には骨格障害がみられたという。
2020年には高血圧に効く成分を増やしたゲノム編集トマトの「シシリアンルージュ」が販売。苗を学校や施設に無料配布し広めている。特許を持つ外資系企業が、日本政府の助成金を使っているビジネス。
スシローは培養トロを準備。培養母乳もある。細胞や生命体を一から設計する合成生物の分野は、「細胞農業」「精密発酵」と呼ばれる。「アニマルフリー」「ヴィーガン」として売られる。
「ワクチンレタス」も開発中。
ウクライナが、アグリビジネスにとって魅力的な市場だったということが触れられていた。肥沃な土を持つウクライナは市場が閉鎖的だったが、2014年に親米の政権が誕生すると規制を緩め、遺伝子組み換え農業と生物の合法化を実施。2019年にゼレンスキー大統領が誕生すると、さらに外国人に農地所有の道筋が開かれた。2024年には外資が農地を所有できるらしく、もしかして戦争もそれまでに終わるのかしら、と思った。
オランダでは、政府が糞尿の窒素ガスと牛のゲップのメタンガスが地球温暖化の原因だとして畜産業の縮小を発表し、農家と揉めている。
イギリスでも、農業をやめたら現金支給の政策を実施。
環境に悪い既存の慣行農業を廃止させ土地を買い取り、遺伝子組み換えやゲノム編集、培養で食の主導権を一部企業が独占していく…というのが世界の潮流。
ディストピア的な話題が多いですが、現場レベルで頑張っている人たちも紹介されていて、少し希望が残りました。
「牛が悪者なのではない、工場型畜産の方法が問題なのだ」ということで、放牧が大事らしいです。
「お菓子は本物を目指すべき」という北海道のお菓子メーカーは、原材料の牛乳のために放牧を実施。平飼いの鶏の卵と作ったチーズケーキは大人気だそう。
100%有機米の学校給食を実施した千葉県いすみ市。
遺伝子組み換え作物の給食使用を禁止した「食と農のまちづくり条例」をもつ愛媛県今治市。
給食のパンの6割を、アメリカ産小麦から地元産に変更したそうです。給食費を地域経済に還元できる。
地方自治体は「地方分権一括法」により、国の政策に従うのではなく独自の条例を作ることが可能とのこと。
給食で使う野菜を園で作っている長崎県の保育園では、幼児の欠席率が減ったそう。
岡山県で自然農法のお米を使っている回転寿司屋さん。
遺伝子組み換え食品もゲノム編集食品も、政府の認可は受けています…が、安全性は未知数。
まずは情報を取り入れて、あなたは何を選択するか?ということなんでしょうね。
ゲノム編集食品の表示はしてほしいですね。
たくさんの人に読んで欲しい本です。