2023-04-14: キュンキュンしたあのヒロインたち
タイトルは釣りです。
最近ゲーム実況者のすぎるさんの影響で、椎名軽穂先生『君に届け』を読んでいる奥さんから「お前は漫画を読んでキュンキュンしたり、ドハマリしたヒロインはいないのか」と問い合わせを受けました。
そもそも恋愛を主題とした漫画を相対的に多く読まないし、特定のキャラクターに対して「推し」とか「俺の嫁」みたいな特権的な持ち上げ方をすることも基本的にない(『アイドルマスター』や『ブルーアーカイブ』のような多人数ヒロイン系のゲームをプレイしていても)ので。
なので、その場は「特になし」回答に留めたのですが、もう少し掘り下げて自分と向き合い、以下のリストを作りました。
誰に対しても特に無益なリストです。
ここでスタンダール『赤と黒』のルイーズ……とか言えたら少しは粋かもですが、どちらかというとルイズコピペ側の人間なのでどうにも無理です。
成瀬川なる(赤松健『ラブひな』)
自分は中学生時代にこの漫画が直撃でした。単行本買いだした頃は完結直後くらいの時期だったと思います。
少し下の世代は『ネギま!』(2003-2012年)とか、『To LOVEる -とらぶる-』(2006-2009年)を、上の世代は『I"s』(1997-2000年)なんかが少年誌ラブコメ世代ですかね。2000年前後でいえば、サンデーが『SALAD DAYS』、マガジンは『BOYS BE…』も。
余談ですが、僕は小学生の時、買ったジャンプの『I"s』だけ母に勝手に切り取られて隠され、「なんでそんなことするの!」と異議申し立てたところ「このスケベが!」と一蹴されました。
そういうことをパターナリスティックにされてしまうと、こちらとしては逆に関心を持ったり、不在によってその存在の際立ちを意識してしまう気もしますが……。
まあ『I"s』は結構生々しかったからな。親の気持ちも分かります。
閑話休題で成瀬川なるですが、自分は完全に『ラブひな』ではなる派でした。
大学生くらいになって周囲にヒアリングしたら結構バラついてて、素子派とか多かったですね。
成瀬川が好きだった動機を上手く説明するのは難しいのですが、キャラクターのルックのデザインや着ている服の感じなど、確実に見た目先行で好きになったと思います。
成瀬川のデザインは、赤松先生の前前作『A・Iが止まらない!』で一時メインヒロインであるサーティの座を脅かしていたシンディや、読み切り『いつだってMyサンタ!』のメインヒロイン・マイの系譜であり、昇華された決定版だと思います。
ヘッドインテークやアンテナ(アホ毛)など、当時アニメ・エロゲーを中心としたオタク系コンテンツヒロインのデザイントレンドを十分に盛り込んでいます。
しかし、Leaf東京開発室系イラストレーター(みつみ美里先生、甘露樹先生)の絵柄がゼロ年代前半にオタク二次創作界隈で決定的に支配的となるに先駆け、その温かみある曲線主体のデザインや、整理されたまつ毛や眼球の処理などをいち早く取り入れた慧眼のキャラクターデザインです。
こんなキャラ見たことねえ! 可愛すぎるだろ常識的に考えて!(やらない夫)って当時普通に思いました。
性格面で言えば、赤松健先生自身が同人誌『ラブひな懐古同人誌』で指摘しているように、98年当時ツンデレという概念はオタク一般に定着しておらず、花見沢Q太郎『HoneyBlue』をベースにゼロベースで試行錯誤の上作っていったとのこと。
そのため、ゼロ年代に猛威を振るった類型的ツンデレともやや異なる「成瀬川なる」が構築されたのだと思います。
バックボーンにしても、久米田康治先生が指摘していた「幼い頃に女人と安易に約束してしまった系」の物語的強度を(少なくとも連載開始時は)維持しています。
「きっと成瀬川が思い出の女の子なんだよね! ねえそうなんだよね!?」という物語へ読者を牽引する力は、『五等分の花嫁』で変奏され、「誰が結婚相手なの!?」というミステリに昇華されているように感じます。
シチュエーションとして、景太郎と成瀬川が毎晩二人で、顔を突き合わせて勉強しているという構図が強すぎました。地味なのですが、この”日常”が他のヒロインと成瀬川とを非対称化させていく(正妻化させていく)プロセスだと感じました。
ゆえに、東大入学後にこのプロセスが喪失したことも、後半の迷走が際立った要因かもしれません。
そんな日常を俺も送りたかった……。
結局成瀬川なるの幻影にずっと支配されているので、上伊那ぼたんもインテークがついているのかもしれません(あれは系譜でいうと『月姫』のアルクオマージュなのですが)。
ちなみにカオラも大好きでした。
あと、ひなた荘は日本のどこかに絶対あるとわりとリアルに信じてました。
一生信じていたかった。。
春日歩(あずまきよひこ『あずまんが大王』)
あずまんが大王は大阪(春日歩)にやられました。
大阪は話数が進むごとにボンクラーズの一翼として、どんどんコメディリリーフとしての側面が強くなっていきます。
しかし、それもまた大阪の魅力ですし、そういう子と付き合ったらどうなるか? という想像力が同人サークル「ハウスオブKARSEA」の大阪本などで炸裂していたように思います。
ちなみに「ハウスオブKARSEA」の主催は『とある科学の超電磁砲』で有名な冬川基先生です。
このコミカライズが発表された時はビビりました。
大阪は転校当初、明らかに美少女枠としてのデザインで登場しました(そのような作中での言及は特に無いのですが、読者のメタレヴェルの認知において)。
ただ、「ちょっと抜けてる」設定が作中でどんどん強烈になっていき、やがて作中屈指のポンコツになります。
ただ、きっと作中ではずっと「黙ってたら美少女」的な感じだと思われるので、そういう子がぽやぽやしてるとすごい可愛い気がします。どうだろう。
大阪、一緒に暮らすとすごい楽しそうですよね。
休日一緒にだらだらしたい。
レベッカ宮本(氷川へきる『ぱにぽに』)
ぱにぽにはマジで初回特典版買いまくってた。
原作のベッキーも好きなんだけど、アニメ『ぱにぽにだっしゅ!』のベッキーに完全にやられてしまった。
OPの吉成曜さんのターンの作画とか。
斎藤千和さんの声とか。
大田和寛さんのキャラデとか。
原作通りに服や髪型がコロコロ代わるのも本当に魅力的だった。
好きーっ! という感じだったかどうか、今となっては判然としないが、俺はアニメの次回予告終わりにベッキーが「おやすみっ!」って言う所を録音して、当時寝る前に毎晩聴いていた。
こわ。
由崎多汰美(海藍『トリコロ』)
トリコロは全員好きなんですよ。
ちなみにこの子は「たたみ」と読みます。覚えて帰ってね。
パイスラが可愛らしいですね。
多汰美は広島出身の女の子で、not大阪弁の方言キャラクターです。
広島、『センチメンタルグラフィティ』だと七瀬優とかが担当県だが、広島弁ではなかったよな。
広島弁を可愛らしく書く、みたいな特徴がまず本作はめちゃ良かった。
多汰美はめちゃくちゃいいんですよ。いやトリコロのキャラクターはみんないいんだけど。全員まずもって上品なんですよね。
なんだろう、うまく多汰美の魅力をまだ言語化できない。
言語化するために4コマ漫画を連載してたようなものなのに(そうなのだろうか)。
藤本タツキ先生じゃないですが、ゼロ年代においても自分は気恥ずかしくて「XXは俺の嫁」って語彙を使わなかったんですが、多汰美は俺の嫁って言いたかったかもしれません。
日本で一番トリコロが好きなのは俺、って本当に思っていました。
こういう勘違いがなければ4コマ作家にはならなかった気もします。
余談ですが、うちの奥さんはおでんの卵があんま好きくないので「いらない」といって俺の器によそうのですが(Win-Win)、多汰美がコンビニでめっちゃ卵買ってたのをいつも思い出します。
遊佐真言(鈴城芹『家族ゲーム』)
真言かわいい~~~~~。
真言かわいいんだよな~~~~。
本作を知らない人向けに説明しておくと、ゲーム雑誌『電撃PlayStation』に付属していた「電撃4コマ」という小冊子に長年掲載されていた漫画です。
紛らわしいのですが、松田優作が子どもを調教する映画とは無関係です。
本作は大枠として「ゲームが大好きな人達の群像劇」なのですが、途中からそこかしこでLOVEが芽生え、どんどん恋愛漫画の様相を呈してきます。
LOVE度でいうと、『ハチミツとクローバー』よりも濃いかもしれません。
ハチクロは「青春」と「ポエム☆」の濃度が高いしな。
遊佐真言はゲーム大好き家族・遊佐家の長女で、初登場時は中学生です。
本作が面白いのは、毎月ちゃんとキャラクターが年をとるので、真言も中学高校大学と順調に進学していきます。
そんななか、大学教授である父親が教え子の男子学生を真言の家庭教師に任じます。ここはなんか森田監督の家族ゲームっぽいすね。
この学生・西浦はイケメンですが重度のオタクで二次元にしか興味がなく、真言も自身の恋愛に興味がないハードゲーマーであるため、父親も安心して西浦を娘のカテキョにアサインするわけです。
しかし西浦が真言に惚れてしまったことから状況が転換し、ゲーマー家族漫画がいつの間にやら片思いラブコメに。
真言や西浦の周囲(実妹や友人など)もどんどんLOVEを育んでいくし、あーもうむちゃくちゃだよ。
とはいえ本作はいちおう恋愛漫画ではないので、毎回真言の恋路にフォーカスが当たるわけではない。
なので、読者としてはバレンタイン時期などに「今年は進展があるのか……??」とイライラドキドキハラハラしながら連載を楽しめるわけです。
俺は大学受験間際に完全に本作(というか真言)に脳を破壊され、本当に真言に入れ込んでしまっていました。
ただ、感情として真言と西浦にはやくくっついて欲しい一心だったので、真言が好きなんだけど遠くで真言を見てるみたいな、なんかそういうポジションに勝手に身をおいていました。俺はそもそも真言と同じ世界にいないのですが。
鈴城先生は海藍先生に影響を受けた書き手の一人でもあり、漫画を書く上で自分も大変参考にしリスペクトしています。
4コマ漫画としての完成度が非常に高いので、未読の方はぜひ読んでいただきたいです。
岩倉玲音(『serial experiments lain』)
大学に入ると自分も作品作りをはじめたので、自作や世の中の作品を客観視するようになり、あまり入れ込まなくなりました。
本当か?
修士1年のときWHITE ALBUM2で発狂しかけなかったか?
それはともかく。
学部3年頃、岩倉玲音には完全に喰らいました。
岩倉玲音のことを考えすぎて、気がついたら鞄にlainのシナリオブックとRDレインの『好き?好き?大好き?』とダグラス・ラシュコフの『サイベリア―デジタル・アンダーグラウンドの現在形』を持ち歩いてました。
こわ。
なんでlainにあんなハマったんでしょうね。
自分はアニメ以上に、PS版のダークな世界観や清水香里さんの芝居にやられた気がします。PS版lainは遊ぶドラッグ。
PS版lainってアニメ版よりもlainがぶっ飛んでる感じしますよね。キャラデザもそうだし、芝居もそんな感じ。笑い方とか。
怖いんだけど、非常に魅力的という。ちょっとこういうキャラクター他に思いつかないです。
あまり本作を過剰というか特権的に扱いたくない(信者的に振る舞いたくない)のですが、そうさせる引力が明らかに備わっている作品ですよね。
いまだにDUVET聴いてます。
いかがでしたでしょうか?(何が?)
ここまでこんな文章読んでくれちゃって……LOVE……。
ちなみに大好きな男キャラクターもめちゃくちゃいるのですが、キリがないのでまたいずれ。。