【ショートショート】赤外線ヒッチハイク
感動するドラマのラストシーンで突然チャンネルが変わった。
もう我慢できないと、次の日に新しいテレビを買いに出かけた。
大きなテレビを抱え帰路につくと、家の前で若者が座り込んでいるのを見つけた。
「こんにちは」と声をかけると、その若者はハキハキした声で挨拶を返した。
「そこで何を?」
「ヒッチハイクです!」
予想外の返答に驚いた。そんな雰囲気は微塵も感じられなかったからだ。
私の表情を見て気づいたのか、彼は続けた。
「赤外線で、自分の情報を近くに飛ばしてるんです。生年月日や経歴、乗せた時のメリットをまとめています。そうやって、受信してくれた人に自分をプレゼンしながら日本を旅しているんです!」
なんと。今はそんな時代なのか。最近の若者はおもしろいなあ。
「ところで、ここにはいつから?」
「3日くらい前からです」
「そうか、3日前から勝手にテレビのチャンネルが変わるのは君のせいか」
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