目白村だより22(徳川の鼠たち)
この暑さで、一番難儀をしているのは、生き物だろう。人間も生き物だが、大体は、クーラーを、使っている。
しかし、人間以外の生き物に関しては、蝉の声も聞かず、蚊もあまり見かけない。 烏の騒ぎも、地味になり、池の中の金魚が浮いている話も聴く。これらはまだ、人が分かるけれど、ふだんあまり目にしない生き物、動物たちは、どうしているのだろうか…。
目白は、比較的、公園も多いし庭のある家が多く、狸も確かに見るのだが、この夏の灼熱から、どう逃げているのか?
5月から、目の前の大きな徳川女子寮が、取り壊しになり、大量のネズミが逃げだし、辺りの何処かに逃げこんだらしいが、それと共に、大きな蛇も移動。 ゴキブリの移動は、家の取り壊しのまえには、よく耳にするが、今回は暑さのせいでゴキブリは減り、近所の人は、ネズミと蛇の話ばかりする。
私が、パリにいた一ト月間に、その大移動はあったらしい。帰国後7月から、本格的解体が始まったから、その前6月の何処かに、彼等は察知して、逃げだしたのだ。
北極の氷が融けだす…魚がとれなくなる…蝉が鳴かない夏に、こういったニュースを、あちこちで、聴くようになると、建物取り壊し鼠と蛇の移動、全く別な事なのに、何だか、関連がある気がしてしまう。彼等の、環境の変化に対する行動力を見せられたからだろう。
日頃から敬愛する、秦早穗子さんが、「どうしてもこの頃、あの戦争の始まる前を、思い出してしまうのよ」と、おっしゃられる。「第二次大戦前の日本は、まず政治が悪く、物価があがり、若者は無関心だったのよ」…こう彼女の話を、書いていると、まるで今の事のようだ。経済戦争は、只今真っ最中で、その結果、環境が壊れれば、人間の逃げ場がなくなる。今度は宇宙に、逃げるのか?それとも、我々は、もう何度も、他の星を、渡り歩いてきて、現在があるのか?
くわばら、くわばら…。
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