目白村だより37(アーロン劇場)
イェール大学のアーロン・ジェロー教授はいろいろな肩書を持つ方だが、特に日本映画は無声映画から実に沢山見ておられアメリカの権威だそうだ。
フランスの友人マックス・テシエと話させたら、とても面白いトークになるだろう……と思いつつも今回は(アーロン劇場)と勝手にタイトルを決めて、その上
教授が好きな日本映画10本を選んで貰う地獄のリクエストをしてしまった。
〜の中から〜本という選択は、映画を知れば知るほど非常に難しい。
しかし我らがアーロン教授は、サラッと選んでくださった。流石!と感心しきりだが、当たり前と叱られそうだ。 しかしこのセレクションは渋い。
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·「生まれてはみたけれど」
(小津安二郎/1932)
·「有がたうさん」
(清水宏/1936)
·「浪華悲歌」
(溝口健二/1936)
·「幕末太陽伝」
(川島雄三/1957)
·「恋文」
(田中絹代/1953)
·「黒い太陽」
(蔵原惟繕/1964)
·「進め!ジャガーズ敵前上陸」(前田陽一/1968 )
·「夢みるように眠りたい」
(林海象/1986)
·「セーラー服と機関銃」
(相米慎二/1978)
·「渚のシンドバッド」
(橋口亮輔/1995)
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アンサーの10本、幸い全部見た作品ではあるものの、なにしろほとんどが大昔に見た作品だ。
再見しなくてはならない。
私は嬉しい悲鳴をあげた。
このセレクション、映画史的にも気にかかる。カルトに入れたい様な映画が多く、普通必ず入れる黒澤明や宮崎アニメは入っていない。
選出された中で個人的に気になるのは、 蔵原惟繕「黒い太陽」と前田陽一「進め!ジャガーズ」だ。
既に忘れ去られた感ありの蔵原と前田は、二人共フランス映画のヌーヴェルヴァーグに大きな影響を受けている監督なので、アメリカでの反響などは私としても大いに聞きたい処だ。
実は海外で評価される作品が、日本で評判が良いとは限らない。
「羅生門」が典型的な例である。ヴェネツィアで賞を取るまでは、翻訳字幕代も出さなかった映画会社大映が、賞を取った途端に180度態度を変えた話は有名である。
しかし、何も海外で受けたからといってそれが何?という考えもある。
大体ここずっと日本映画は海外のマーケティングばかり考えていて、その前にやる事があるだろうといいたい。 (海外の賞など考えもしなかった時代の日本映画が清々しく、海外でも圧倒的に評価が高いのは何故か、映画人は考えるべきなのだ)
昨今のカンヌ映画祭には、それこそ猫も杓子も学芸会のようなタキシードやドレス、着慣れぬキモノで登壇。恥ずかしいったらありゃしない。
外国映画祭をありがたがるのは、もういい加減やめよう。
ついでに「日本アカデミー賞」という、過去の日本映画を冒涜するような占領地ネーミングをまず変えて欲しい。
アーロン教授とは、このあたりも大いに話してみたい。
皆様、お立会い下さい。
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TOMUYA’s CINEMAPARFAIT
7月9日火曜日 19時〜
場所:ZIMAGINE
https://zimagine.genonsha.co.jp/
予約は、以下よりお願いします。
https://nfb240709.peatix.com/
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