目白村だより39(アラン・ドロンの瞳④)
フランス人の気質と日本人が親和する感性の一つに(感謝)がある。CFに繋げてくれた三船敏郎へのドロンの恩義と仁義がここで重なっている。三船とドロンは、兄弟仁義だ。
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三船敏郎とは「レッド・サン」(1971公開)で共演したことから親しくなり、その口利きで、一連の黒い噂がありながら日本のアパレル、レナウンと契約が出来た。 だからドロンは、なにかの折には名前を出し、三船プロのイヴェントにも参加し感謝を示した。
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レナウンとの契約が終わって、翌年彼はマツダの(カペラ)のCFに登場した。
今度の仕切りは、博報堂である。
電通と三船に仁義をとうしたかは知らないが、とにかく10年間他のTVCFはなかった。
実は、早い頃から彼の出演条件には、自分の映画の外国の興行権も入っていた。(高いので有名)映画でも相当収益を上げたと思うが、70年代中盤には流石に人気が翳りを見せ始めた。
ドロンがライセンス契約を考え始めたのはこの頃だと思う。
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彼のライセンスものでは最初の(サムライ)というオーデコロンが有名だ。三船へのオマージュで作ったというが、ボトルが武士の裃(かみしも)のイメージで、ダーバンとは違った日本の若者層を狙ったことは明らかであった。比較的安価な設定で日本でもよく売れた。現在は逆輸入で未だに人気がある。
彼はレナウンの契約がおわる’80年以前に(サムライ)の販売を既に始めていて、日本を徹底的にリサーチした。中には(カタナ)(ショーグン)という商品もあり、もちろんワールドワイドでうれるエキゾチズムが研究され尽くされている。
’86年には自分のライセンス契約のためのオフィスを大阪に立ち上げ、日本のみならずアジアも視点にいれて博報堂に販売させた。
商品のジャンルをとにかく細かく区分けして、一つ一つ契約を結んでゆく…管理も大変だったと思うが、それは莫大な収益とアラン・ドロンと冠された商品を大量に残すことになった。
スーツから毛皮、下着、ストッキング、キモノ…バック、食器、小物…韓国他アジアの国ともライセンス契約をすすめた。なりふりかまわぬ徹底的商魂を嫌悪するか、感心するか、ここまで来ると言うことはない。
そして彼は世間に臆することなく(アラン・ドロンツアー)も引き受けた。パリに訪れる沢山の日本女性ファンと食事をし、一緒に散歩までする。
写真を撮るといくら、花を渡すといくら…etc世知辛い話も残されているが、収益よりも日本へのサーヴィスの思いが強かったのかもしれない。
一方で、ツアーが来るほどの日本の人気を、フランス国内でも逆宣伝、一挙両得と踏んだのかもしれない。
彼は日本を第二の故郷と公言、何度も来日していて日本での自分の立場を知り抜いていた。
日本人は、白人へのコンプレックスがあり、自分はその憧れの象徴である事、コンプレックスには明治からの長い歴史がある事…。
ツアーでの日本女性たちの狂乱ぶりは、席順とりからして凄まじかったらしい。 旅行会社の人や携わった人たちからは、抱腹絶倒の話しを沢山きいたが、ここでは書ききれない。
日本の一般女性の圧倒的(推し)が、彼の人生に与えたものは大きかった。晩年の伴侶(ひろみさん)が日本人であるのも運命を感じる。
そして彼女は、下の世話までして尽くした結果、遺族に完全拒否された。
(アラン・ドロン商法)は、彼に莫大な富とそこから派生するある種の権力を持たせた。彼は俳優期の絶頂でスキャンダルにまみれながらも
日本で開けた商機を逃さなかった。そして数十年かけ小帝国を築きあげた。
しかし亡くなってみると、残された子どもたちは、あさましい泥沼の相続戦いを始め、そこに日本人女性までが加わり、一世一代の王国は家族のスキャンダルに染まった。
シェクスピアかバルザックか…ドロンらしいといえばドロンらしい展開であり、偶然にしては出来すぎな人生のシナリオである。合掌。
(つづく?)
〜渡欧前LIVE〜
☆11月15日(金)
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☆11月30日(土)15:00 講演
☆12月7日(土)15:00 座談会
☆12月14日(土)15:00 LIVE (パリ日本文化会館)
☆12月11日(水) LIVE(ベルリン)
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THEATER IM KINO e.V. https://www.theater-im-kino.de/