”居心地をつくる” ENGAWA bed デザインのヒミツ
フレームをマットレスより広くとった、余白のあるローベッドを製品化させて頂きました。
このフレームの余白部分には、読みかけの本を置いたり、腰掛けたりと、ライフスタイルに合わせて使い方が広がります。
その佇まいも、さらに家の中のくつろげる場所という意味でも、日本家屋に古くから伝わる「縁側」にそっくりであることから「ENGAWA bed」と名付けました。
ウェブサイトはこちらです。
このnoteでは、本製品のデザインの裏側についてたっぷりとご紹介していきます。
デザインの起源
小さな部屋でもインテリアを楽しみたい
都心のマンションは家賃が高いこともあって、わたしはこれまで一貫して「小さな部屋」に住んできました。
大学進学と同時にはじめたひとり暮らしを始めたお部屋は、6畳の洋室にこじんまりとしたキッチンが付いた、典型的な1Kの間取り。その後何度か引っ越しを経た今でも、35平米の賃貸マンションに夫婦ふたり暮らしです。
当時からインテリアが好きだった私は、家具を置いたらすぐに一杯になってしまうスペースを相手に、狭くてもすっきり心地よい空間にするにはどうしたらよいか、ありとあらゆる方法を試してきました。
そうして20年(年を取ったもんだ!)の約試行錯誤を経た今、小さな部屋でもインテリアを楽しむコツをひとつ挙げるとすれば「兼用の推進」を真っ先に推します。ひとつで二役、三役と、多用途に使える道具を選ぶことで、物を減らすことができるからです。詳しくは動画にしています。
「ねる」と「くつろぐ」をひとつに
そして、最もスペースを取る家具と言ってもいいベッドをマルチユース化するのが、このENGAWA bedです。そのフレームは、複数の役割を担うことができる、まさにベッドとサイドテーブルとソファをひとつにしたプロダクトと言うことができます。狭い部屋に住んでいる方にこそ使ってほしいと思います。
そういった機能抜きにしても、高さを抑えたフラットなフレームが作る佇まいは、高級旅館のようで、なんだかいいなと思わせてくれます。
製品化への道のり
きっかけは動画
実はこのベッドのアイディアは何年も前に考えていたもので、遡ると2020年に8月にプロトタイプを自作し、動画にしていました。
既存の商品で理想とするものがなかったので仕方なく自作したわけですが、この動画が予想以上に再生されまして(執筆時点で120万回以上!)、需要があることが分かりました。
そして、2020年9月にフィリピンのlamanaという家具工房から、ぜひうちで製品化して欲しいと声をかけて頂きました。
Lamana はマニラにてご夫婦で経営されている工房で、いろんなデザイナーさんとコラボされています。
メールでしかやりとりしたことがないのですが、文面からとても良いお人柄を感じたこともあって、お受けさせて頂きました。
組立と分解ができるように、さらに強度面でも増強するよう、構造設計をブラッシュアップし、2021年2月にフィリピン国内で受注家具として製品化しました。
国内生産のパートナー探し
フィリピンで生産したものを日本に輸送することも考えましたが、コストの面で断念。国内販売に向けて、国内での生産の検討を開始しました。
加えて、価格の問題もありました。
Lamanaさんでの製品は注文を受けてから制作するオーダー家具です。なので価格はそれなりに高くなってしまいます。国内生産の高級家具ブランドと同等のイメージです。
もう少し手に取りやすい価格で提供する手段はないものかと、声を掛けていただいた家具会社さんや、こちらからアプローチした工場と相談させて頂きました。
その中で、以前にkoromo table topの量産でお世話になった、サイドロールファニチャーの小川さん(https://twitter.com/kentaroogawa211)に紹介してもらった、北海道の家具工場と一緒に量産検討をすることにしました。
デザインの進化
壁付け対応
国内生産に当たっては、すでに実際にプロトタイプを使ってみての気付きをフィードバックしてブラッシュアップしていきました。
まずは壁付対応。当初のデザインだと、マットレスの側面を壁付けして置きたい場合、すのこが見えてしまう点が気になっていました。特に私が住んできたような小さな部屋だとそういう置き方をすることが多いからです。
単純にフレームの幅を内側に広げると解決はできますが、すのこエリアが小さくなり、マットレスの通気を妨げてしまいます。
そこで、「上下対称・左右非対称」のカタチで解決しました。(逆側に寄せたい場合はフレームを180度回転)
サイズ選びは余白選び
もう一つ気になったのは、「余白スペースに座る」を実現しようとすると、フレーム幅が30cm近く必要となり、ベッドがかなり大型化してしまうこと。
そこで、ご自宅のスペース事情に応じて、余白の大きさを選べるようにサイズ展開を設計しました。
例えばダブルサイズのマットレスを使う場合、
座れるほどのたっぷりの余白が欲しい場合は「w1680」を、ほどほどの余白で良い場合は「w1480」を選ぶ、といった具合に、同じマットレスサイズでも、余白の大きさを選ぶことができます。
ちなみに、このサイズの呼び名は、通常の、シングル、ダブルと言った呼び方ではなく、ベッドフレームの外寸幅に基づいた表記にしました。マットレスに合わせてフレームサイズを選ぶ、のではなく、ほしい余白からフレームサイズを選ぶ、という考え方をして欲しかったためです。
選べる3つの余白スタイル
以上のブラッシュアップを経て、主に3種類の余白スタイルを選べるベッドフレームとなりました。(サイズフレックスと呼んでいます)
A. 両サイドほどほど余白
ベッドの両サイドにそれぞれ14cm幅の余白を作るスタイル。単行本やめがねを置くことができます。
B. 片側のみたっぷり余白
スタイルAのマットレスを片側に寄せ、片側のみに28cm幅の余白を作るスタイル。腰掛けたり、照明を置くことができます。マットレスを端に寄せてもすのこが見えない仕様だからこそできるスタイルです。
C. 両サイドたっぷり余白
ベッドの両サイドに30cmと18cm幅の余白を作るスタイルです。(両サイドで幅が異なります)
具体的に各スタイルを作るENGAWA bedサイズとマットレスサイズの組み合わせ対応表と、それぞれのサイズ感イメージは公式HPにて解説しております。
ちなみに、1つのベッドフレームで、3サイズのマットレスサイズに対応しているので、もし、購入後にマットレスのサイズを大きく、あるいは小さくしても、対応可能です。
美しさの追求
こうして設計を終え、試作も行い、商品撮影も終えて、さあローンチだ!という段階で、頭の片隅で引っ掛かっていた違和感に気付きました。「木目」です。
樹種については、北海道産ニレ材を使用することで進めていました。ニレはエルムとも呼ばれ、北海道産広葉樹の中の主要樹種のひとつです。
木目は真っ直ぐで美しく、柔らかい「木」らしい木目と色味で気に入っていたのですが、辺材と心材との境界がはっきりしていて色の濃淡が出やすい。木の木目を強調したい場合は最適ですが、今回のベッドでは、ニュートラルで落ち着いた世界観にしたい。
ということで改めて塗料の組み合わせも含めて、広く樹種の検討を行いました(何度サンプルを作ったか分からないほど…)。
最終的には、フレーム部材には北海道産ナラの突板、脚部材は北海道産ニレの無垢材を使うことに。ニレとオークの色味が似ていることもあり、相性も良いです。
そしてナチュラルホワイトのオイルで仕上げています。自然で淡い色合いで、本物の木の質感が感じられるさらさらした手触りがあり、端正なナラの柾目が美しいです。ちなみにこのオークと塗装色の組み合わせは、KOROMO table topでも採用している質感です。はじめは白木のような色合いですが、徐々に経年変化で色が深くなっていきます。
家具も地産地消
今回は北海道産の木材を使って北海道の工場で制作するのですが、木材の産地と工場と使用場所が近い、ということは、木材の輸送時のCO2排出を抑えることができるし、海外の安い労働力を使うよりも、微力ではありますが、日本のモノづくりの応援にもなります。
こういった、どこで誰がどんな材料を使って作られているのかといった、あまり表には出てこないところに、使う人にとってはもちろん、作る人にも地球環境にも優しいモノづくりを目指す想いが表れています。
さらに、「木材の産地と工場と使用場所が近い」ことは商品の価格を抑えることにも繋がります。
木材を年間でまとまった量を契約しているということもあり、他の工場で作るよりも安価になるためです。
もちろんこの製品価格を抑えることができたのは、他にも、作りやすさを考えて、寸法を揃えたり等、地道な設計努力を重ねた結果でもあります。
最新情報
公式webサイトをオープンしています。最新のニュースと詳細はこちらをご確認ください。
また、ENGAWA bedは年に数回の受注期間を設けた、受注生産となります。お知らせメール登録により販売開始時にメールでお知らせしますのでご登録頂けると幸いです。
公式Instagramでもアナウンスさせて頂きますので、合わせてフォローして頂けるとうれしいです!
【公式Instagram】
それでは、ENGAWA bedをよろしくお願いします。
(撮影協力:関電不動産開発株式会社)
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