仕方ない彼
ぼくは一度も自分の顔を見たことはない
鏡を見たってそこにはいつも彼が映ってしまっているからだ…
いつになったら自分の顔は見れるのだろう
鏡に映る彼は大体いつも不穏な顔をしている
今映ってる彼の顔は
とっても不細工でなんだか見てるとだんだんこっちが腹が立ってくる
目が細くてクマも凄い それに目つきがなんだか犯罪者のようだ
まあそれは生まれつきの顔で仕方ないだろうけど
なんかすごい猫の毛だらけの汚い服と
恐らく半年くらいは切ってないだろう髪の毛
だらしなさすぎてぼくはもう 呆れてしまった
呆れすぎてなんだか悲しくもなってきた
どうにかならんかと 彼が何か明るくなったり
楽しくなったりするものは 何か 色々考えたが
ぼくは思っていたよりそんなに彼の事を知らなかった
いや 知ろうとしていなかった
ただただ彼に興味が全くなかったからだ
だからまあ 彼のためにも 僕自身、彼を知るためにも 彼と外に出掛けようと思う
まずその汚い容姿をどうにかしようと
話しかけるが 嫌そうな顔しかしない
僕はそんな彼の表情も無視して
少し高い美容院にいき 髪を切ってもらい
お洒落な洋服屋にいき 服を一丁ラン買った
髪を切ってもらってるときや服を試着してるときの鏡に映ってる彼の表情は
なんだか 恥ずかしいそうな顔をしていた
そんな彼をみて僕もニヤニヤしていただろう
外見を整えるだけでこんなにも 変わるのかとびっくりした
表情も少しなんか垢抜けた感じがしたが 相変わらずの目つきの悪さは変わらない まあそれは仕方ない 整形までしてしまったら彼は泣いてしまうだろうし
このままでいい これならば 普通に街中を歩いていても
不審者には見られることもないし、警察にも職務質問もされることはないだろう
自信をもって歩けるはずだ いや別に自信をもたなくてもいい
そんなんですごい自信をもたれても困るからなあ
僕は 彼の好きなものや 好きな場所について聞いてみるが 何にも返答はない
長い付き合いだからそこは教えてほしいなと… 言おうとしたけど辞めた
まぁ彼は小さい頃からあんまり自分を出さないのはわかっていたことだし
無理矢理 答えを求めてもないものはないし 分からないものはわからないから
だからとりあえずこれから僕の好きなところに連れて行こうと思う
ほんと仕方ないなあ