カナダの思い出
一つ前の記事で書いたが、高校二年生の夏休みにカナダバンクーバー島のナナイモという都市で3週間ほどホームステイした。
ホストファミリーの都合で厳密には最初の3日間はシュメイナスと言う街の違うファミリーに同級生と一緒にお世話になった。
シュメイナスのホストマザーは料理教室の先生をしている人で、自慢の料理をたくさん掲載した自署本をくれた。当然だが全部英語なので、その後開かれること無く我が家の本棚に並んでいる。いつか読もうと20年経過した。
4日目に本当のファミリーが迎えに来てくれた。同級生と別れついに一人でネイティブファミリーに預かっていただくことになる。このとき、頭の中には「ドナドナ」が流れていた。そう、荷馬車に乗せられた子牛のように。。。
再びナナイモに戻った僕は、30代夫婦と4歳の男の子、1歳の女の子の素敵なファミリーに迎えられた。
森林の中に佇む、広いウッドデッキとガレージのある立派なお宅。間違いなく裕福な家庭だ。
しかも、美男美女の夫婦にブロンドヘアーの可愛らしい子どもたち。テレビでしか見たことのないような素敵な光景が広がっていた。
後にこの可愛らしさからは想像できないくらい暴君な少年に、快心の一発をうけることはこのときまだ知る由もない(笑)。
ご夫婦は日本という国を知らないと言っていた。中国は知っているが同じか?とも。世界地図を使って中国の1/20くらいの大きさの日本について知りうる知識と片言の英語で説明したが、うまく伝わらなかったなー。
ただ、この家のテレビには「JVC」のマークが。そのテレビの前には「NINTENDO」とロゴの入ったゲーム機が置かれていたのに、少し優越感を覚えた。
ところで言葉というものはとてつもなく大事なものだなと思った。
喋ってくれることが分からない、こちらの会話は伝わらない、ほんと泣きそうだった。
でも、3日経てば不思議なもので、耳が慣れてくる。
なんとか辞書片手にコミュニケーションできるようになる。もちろん、相手も普段よりゆっくり喋ってくれてるのだろう。
1番緊張したのがマザーと2人きりでロングドライブした時。バンクーバー島の西海岸まで島を横断。太平洋を見せてくれる旅。到着してこの海の向こうは日本だと聞くとえらく感動したが、道中の車内の会話が大変。今みたいにスマホがあるわけではなく、とにかく頭に浮かぶ単語を繋げて会話。
何かネタになる景色はないかと、周りをキョロキョロ。
屋根で羊を飼育してる光景が1番盛り上がった。
そんなこんなでカナダのホームステイもあっという間に3週間。
見知らぬ異国の地で17歳の自分が知らない家族と過ごした日々。
でも、別れの時には止めどなく涙が溢れてきた。もう一生会えないかもしれない。そう思った。
一つだけ後悔がある。
それは、別れの時、自分でもよくわからない尋常じゃないほどの涙が恥ずかしかったのか、バイバイ、またね、が、ちゃんといえなかった。帽子を深く被り、バスの座席に低く座り込んでしまった。
顔を見たらまた涙が止まらなくなるから。
でも、しっかり見ておけばよかった。そう簡単には会えないから。
あれから、もう28年ほど経った。
ホストマザー、ファーザーは60歳くらいかな。子供たちはもうしっかりした大人だな。
もう一度会いたいな。