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これまでと、これからと。

歴史とは、人が繋いでいくもの。

活字と古臭い写真や絵で構成された歴史の教科書は、小学生の私にとってはどこかファンタジーだった。別世界の物語。この世のものではない創作物。その時代を生きていないのだから、当事者意識を持てないのは当然と言えば当然だ。

私が歴史に関して当事者意識を持てるようになったのはひょんなことからだったのだが、その歴史の上に私という、現在心臓が動いている人間が存在し、一歩、また一歩と歩みを進めるごとにその歴史は繋がっていっているのだと実感する。

レノファ山口FCが、また新しい歴史の1頁を開いた。

私がこの世界に仕事として足を踏み入れた4年前。怒涛の勢いでカテゴリーを一つずつ駆け上がった先にあった、J2での苦悩の時期だった。上野展裕さんからマジョールさんにシーズン途中で変わり、残留に食らいついていたあの年。仕事としては足を踏み入れたばかりで、殆どの時間を観戦という形で終えたあの年。

その翌年、霜田正浩さんが監督に就任された年から、私の社会人としての、否、人間のとしての歴史が大きく動き始めた。

元々私は、人はどうして生まれてきたのか。どうして生きているのか。そんな大それたようで、実はそんなことはどっちでも良いようなことを常日頃から考える癖がある。これは子供の頃からの癖なので、それが良い方に働くこともあれば、悪い方に働くこともある。悪い方に働くと大変だ。生きる意味、意義を自分の中で理由付けしなければ、生きている心地さえしないのだから。

霜田さんとの出会いは、ちょうど悪い方向に働いていた時だった。何もかもうまくいかない時期。生きていればそんな時期はあるものだが、渦中にいるときは大変だ。自分の存在価値、あてのない未来に不安を抱くばかりで、何も前に進まない。あれこれと手をつけても、不思議とうまくいかない。しかしどうだろう。目の前に現れた、仕事人のプロフェッショナルを前に、私の見ていた世界がいかにちっぽけで、狭くて、甘いものだったかを知らしめられた。と同時に、これだ、これだ!!と強く強く思った。

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仕事人のプロフェッショナル、と書いた。霜田さんは、監督だった。私は選手でもなければ、レノファ山口の社員でもない。直接教えを乞うことはできない。けれど、霜田さんの一挙手一投足、振舞い、言葉の選び方。満足に話をする機会というのは実はあまりにも無かったけれど、それでも機会があればすべて吸収したいと思った。

小野瀬康介選手がシーズン途中で移籍を決めた時、霜田さんはこう言った。「小野瀬にも、形は違えど自分が見た世界を見せてやりたい。J1の、日本代表の景色を」と。私はこれを聞いたとき、なんとも言葉にできない気持ちになった。一番近い言葉は「私も見たい」だろうか。勿論プロサッカー選手としてJ1の、日本代表の景色をではない(当たり前)。仕事人として、この世界で生きる者としての高みを、という意味だ。

私が求めていたのは、究極の仕事人だったのだ。霜田さんはすでに次に生きる場所を見つけ(しかもこの時世に海外)新しい世界で活躍されようとしている。その瞬発力はもちろんだが、活動範囲の広さと臆さない心、そして、根っこにある夢や目標ややりたいことに対して、こうなりたいという自分を貫く志。霜田さんのように人生を選択できる人に、私はなりたいと心から思う。

そして、今年、新たにレノファ山口の監督に就任された渡邉晋さん。渡邉監督がレノファの新監督に就任されると知った時、これはまた運命だと思った。11月に配信されたジャッジリプレイにゲスト出演されていた回を観て、漠然と「渡邉さん、来年はどこかで監督されるのかなぁ」と思っていた。そして手にした渡邉さんの著書『ポジショナルフットボール実践論』。(真剣に読んだのは就任決定後でしたが。笑)引き寄せの法則というのは、きっとこういうことを謂うのだろうと、自分勝手に解釈している。

渡邉新監督は就任記者会見で、『このクラブには明確なビジョンがあり、そのビジョンに基づくピッチで表現されるプレーがある。クラブの示す方向性、情熱に強く惹かれた』と仰っていた。更には、『長州は、日本或いは世界にその名を轟かせた場所。選手育て、人育ては、この地の歴史の中で作り上げられたもの。歴史を通して、サッカーを通して、まずは日本全国にその名を轟かせたい。そしてゆくゆくはアジアや世界へ』と。

また、この地にやってきた。究極の仕事人が。バトン(歴史)は一度も地に落ちることなく、繋がれている。そう実感して、鳥肌が立った。

山口にJリーグがあってよかった。サッカー人だけじゃない、業種は関係ない。生きる意味や、働く意味、目の前のすべき事、当てのない未来。そのすべてに、夢や希望を与えてくれ、生きる活力をくれる“人”に出会わせてくれて。これは私だけじゃない、ここに住むすべての燻っている人たちに朗報だ。

2021シーズン。当たり前が当たり前じゃないと知った昨年を乗り越えてやってきた、2021シーズン。面白く生きましょう。


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