「Noto Sans JP」と「源ノ角ゴシック」なにが違うの? 〜我々はどちらを使えば良いのか問題〜
意味が分からない。
「NotoSans JP」と「源ノ角ゴシック」は全く同じフォントだという。
名前からして、かたや英語、かたや日本語で共通点が何ひとつない。
名前が2つあるのに、指すモノは1つ。真実はいつも1つだけど、名前は2つあってもいいのか。混乱しないのか。
そんなのあんまりだと思い、ザッとインターネットをサーフィンしてみたが、ほとんどの人が
「あ、そうなんだ」
と静かに受け止めている。
自分も周りが「よい」と言うのなら流されてしまう没個性的な人間である。
ここで声高に異を叫んでも、何の生産性も向上しない。
しかし、である。名前が違うということは「何か」が違うのだ。
まず、その「何か」について、見ていきたい。
※手っ取り早く「どの名前のフォントを使用したら良いのか」を知りたい方は下記の目次から「結局、どの名前のフォントを使えばよいの?」から飛び去ってください。
「Noto Sans」について
「Noto Sans」は、Googleが開発した誰でも使えるオープンソース フォント。
PCにフォントデータが入っていないことで表示される小さい四角□□□...、通称「豆腐」を地球上から滅殺することを至上理念としており、「No More Tofu」すなわち「Noto Sans」と名付けられた。洒落ている。
2016年には「800言語、11万字を超える文字に対応した」と報告されている。これは多言語展開するときに大変便利。
「多言語対応するんで、アラビア語までトンマナが合うようなフォントを指定ください。だって貴方デザイナーでしょ?」的なオファーも大丈夫。そう、Noto Sansならね。
しかしだ。Noto Sansの日本語版はいくつかバージョンが存在する。
源ノ角ゴシックの話があるのにこれ以上、事態を複雑にして欲しくないと言う気持ちは分かる。しかし、現実として私たちの住む世界は複雑なのだ。だが、シンプルにはできる。
現在、Google FontsのサイトでダウンロードできるNoto Sansの日本語版フォントは「Noto Sans Japanese」のみ。こちらはvariableフォントとなっており、ウエイトを柔軟に指定できる。
下記に羅列したのは、Noto Sans日本語版開発の中途で発生したバージョンだ。OSのデフォルトフォントとしてインストールされていたりして、未だにデザイナーのPCに巣食っていることが多く、Figmaなどで目にすることもあるかと思う。一応、Noto Sansの日本語版にはどんな種類があるのか目を通して置くのもよいかもしれない。
源ノ角ゴシックについて
AdobeがGoogleと共同開発したオープンソースのフォントファミリーである。Adobe Fontsとして下記から使用可能だ。
もともとAdobeは「Source Sans」というオープンソースの欧文フォントを持っており、それに合う日本語フォントの制作を計画していた。そこに例の「No more Tofu 戦略」を進行中のGoogleが登場する。
東アジア圏をカバーする書体を必要としていたGoogleは、Adobeに共同開発を持ちかけ、「Source Sans」だけでなく、Googleの「Noto Sans」にもっとも合う日本語フォントの開発がスタートした。
その結果、欧文部分は「Noto Sans」、和文部分は「源ノ角ゴシック」というフォントが完成する。
これがまさに、このブログのテーマとされているフォントの正体である。
輝かしい共同作業の結実であるこのフォントが、なぜ2つの名を冠するに至ったか。この記事では簡潔にあっさりと下記のように記されている。
2社仲良くひとつのフォントを開発したけども、Noto Sansの流れとAdobe Sourceファミリーの流れは一緒にできなかったということだろうか。
「え、なんで名前違うままなん...?」
「というか『Han』ってどこから来たん...?」
そんな声を押し流して、GoogleとAdobeという2つの大きな流れが奔流し続けている。
我々は静かに偉大なるサービサーの言うことに身を委ね続けるしかない...。
結局、どの名前のフォントを使えばよいの?
もちろんケースバイケースであるし、フォントベンダーの気まぐれにより、ここに記載されている情報が古くなっている場合もある。(その場合は教えていただけると大変助かります)
●とりあえずオススメ
→「Noto Sans Japanese」
https://fonts.google.com/noto/specimen/Noto+Sans+JP
Google Fontsのサイトから誰でも無料でダウンロードできる。著作権もSILオープンフォントライセンス、これは商用利用はもちろん「みんなに自由に使ってほしいという思いが込められたライセンス」なのでかなり自由に使える(ソフトウェアに組み込むときだけ注意が必要です https://openfontlicense.org/)
源ノ角ゴシックはAdobeフォント、すなわちAdobeのアカウントが必要になる。全デザイナーに言いたいのだが、普通の人はAdobeアカウント持ってないぞ。デザイナーの周りにはデザイナーが多いこともあって、人は生まれながらにAdobeアカウントを付与されていると思いがちだが、実はそうではない。あなたは恵まれている。
よって、どのようなルートからでも開放されているGoogle Fontsの「Noto Sans Japanese」がファーストチョイスになるかな、と思います。
webフォントとしても「Noto Sans Japanese」はかなり使える。Google Fontsのサイトからコードを生成できて実装者側が気軽に試すことが可能。サブセットもGoogleが勝手にしてくれるので便利。
以上だ。
この「Noto Sans JP」と「源ノ角ゴシック」の違いで一番困ることは、おそらく複数人でデザインファイルを触るとき、同じフォントを使用しているつもりでもフォントデータが一致しないことだろう。
協業を始める前に「Noto Sans JP(CJKなどの亜種も)」「源ノ角ゴシック」の違いについての認識を軽く一致させるのは必須かと思われる。
使用上のTips
「Noto Sans Japanese」は同じGoogleが開発した「Roboto」という欧文フォントと組み合わせることを想定して作成されている。この「Roboto」、数字が少しDINを感じさせて良い感じなので、是非組み合わせて使うと良い感じです。
2024年6月現在、Figmaで「Noto Sans Japanese」のSemiBoldを使用すると他のPCで認識されず、フォントの打ち替えができなくなることがある。