82年生まれ、キム・ジヨン(著者:チョ・ナムジュ)
82年生まれ、キム・ジヨン
著者:チョ・ナムジュ
初版:2018年
ある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したかのようなキム・ジヨン。誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児…彼女の人生を克明に振り返る中で、女性の人生に立ちはだかるものが浮かびあがる。女性が人生で出会う困難、差別を描き、絶大な共感から社会現象を巻き起こした話題作!韓国で100万部突破!異例の大ベストセラー小説、ついに邦訳刊行。(出典: 株式会社筑摩書房HP)
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480832115/
「物語のかたち」
平らな面の上に、円を描いて小さな半円の丸い突起がいくつも規則正しく並んでいる。まわりが暗くて色や素材が何なのかは見えない。ただ、それらは、金属でできているかのように、とにかく固そうに見える。それなのにプラスチックのような人口的な素材の光沢を持っている。
私は、女性で社会人経験も出産育児経験もあります。そのせいなのか、ときおり心に石を投げ入れられるような重い気持ちになり、自分の経験を思い出してツキンと胸が痛みます。暗闇のなかで、窓が開いて光が差し込んだように、はっとさせられることがあります。「そうだった。当たり前だと思っていたことはたしかに当たり前ではないのかもしれない」と。読み終わると、重たいものを背中に乗せているような気持ちになり、社会のなかで女性が置かれている立場について考えが巡ります。そして、その根深い問題について何から手をつけていいのか分からず、自分の無力さを感じ、途方にくれてしまいます。