さざなみのよる(著者:木皿泉)
さざなみのよる
著者:木皿 泉
初版:2018年
小国ナスミ、享年43。息をひきとった瞬間から、彼女の言葉と存在は、湖に落ちた雫の波紋のように、家族や友人、知人へと広がっていく――。命のまばゆいきらめきを描く感動と祝福の物語!(出典: 株式会社 河出書房新社HP)
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309025254/
「物語のかたち」
この本では、ひとつの物語を章毎に複数の人の視点で書かれています。そのたびに切り替わるので、物語のかたちが見えにくい本でした。読んでいる途中で見えたのは、立方体のかたち。一見、表面は石のような質感に見えますが、石ほど固く冷たい感じではありません。暗い色をしているけれど、温かみがある濃い緑色です。きっと、手に持ったとしても見た目に反して軽くて驚くような気がします。
章毎に主体が切り替わるせいか短編小説をいくつも読んでいるような気持ちになります。死をテーマにしているけれど、軽やかに話が進んでいくので、読んでいても暗い気持ちが深まっていきません。むしろ、生きるということ、死ぬということに対しての恐怖心が取り除かれて、心の軸が落ち着いていき、気持ちが軽くなっていきます。読み終わった時には、寒い日に暖かい飲み物を飲んでいる時のような落ち着いたリラックスした気持ちになれます。