木質ペレットという可能性
記憶をたどれば、趣味のトレイルランニングからではなく、地方創生という文脈から「森林」について興味をもつようになった。特に「林業」は自分のふるさと津別町を捉えるうえで必然的な切り口となる。それもそのはず町のキャッチコピーは”愛林のまち”で、林業に携わる人口の割合は非常に高く、森林の育成・管理から原木の加工といった一次産業としての林業から、木材家具の製造メーカーまで幅広い。または町の面積の85%が森林(これは北海道の町としては珍しい数字ではないと思う)で、町の中心にいても文字通り見渡す限り森林に囲まれている、のどかな景色です。
とは言え職業としての林業に接点などなく育ち、30を過ぎて町の未来を想像した延長線上にようやく意識し始めました。正直、木を伐って、運んで、素材として加工するくらいしか想像がつかない林業だったが、調べるほどに興味深くて、わりかしまじめに転職したい気持ちもでてきたり。はたまた、産業的な構造の歪みや、他の一次産業同様に後継者問題を抱えていること、カウンターとして自伐型林業など新しい動きが生まれているなどなど、傍からみているだけでも小さな日本国という感がとても強い。
ふるさと津別町が抱える一番の問題は高齢化です。1960年の15,676人をピークに減少して、2020年時点で約4,500人、2040年には総人口約2,800人と厳しい予想が立てられています。これは60代オーバーが人口構成のボリュームゾーンになっていて、寿命による人口自然減が圧倒的であること。問題は20〜30代の子育て世代が圧倒的に少ないこと、さらに転入などによる人口流入が少ないことです。つまり、基幹産業の林業においても働き手の不足は問題として顕在化しているはずです。
なんてことを現場にいない自分が指摘するほど卑怯なことはないですよね。特にふるさとについて語る時は半ば当事者意識もあるだけに、好き勝手言ってしまいそうだけど、手を貸さずに意見だけ言うようではいけないと思っている。反面、俯瞰して課題を捉えて「学習すること」「最適解を目指すこと」「行動としてコミットすること」は段階的にはじめることができる。noteにまとめるのは「学習すること」の一貫でもある訳だ。たとえば、ラトビアやエストニア企業にみられるIoTのアプローチは小規模の自治体や事業者には参考になる事例のはずです。
ここまでは産業としての大きなはなしだけど、津別町の自慢できる取り組みをひとつご紹介します。「木質ペレット」って聞いたことありますか?
木質ペレットは、丸太・樹皮・枝葉など木質バイオマスを原料に作られます。特に木材工場から排出する樹皮・おが粉・端材などの残・廃材が有効に活用されています。これらの原料を細かい粉状に破砕して、圧縮して棒状に固めて成型したもののことをいいます。大きさは、長さ1~2cm・直径6~8mmのものが主流です。ペレットの特徴の1つが、接着剤を必要としないことです。成型するときにおが粉状のものを圧縮して固めるのですが、このときに接着剤は使用しません。木材の構成要素の1つである物質(リグニン)が軟化して接着剤のような役割を果たすからです。
そのため、ペレットの成分は木材と変わらないのです。それで、まきを燃やしているときのような暖かさがあります。ペレットに成型するときに原料を圧縮させる分、粉砕しただけのチップやおが粉よりも熱量が大きく、燃料としてグレードアップになります。
津別町には町の企業が中心となったペレット協同組合という組織があり、端材から作られる木質ペレットを木質バイオマスエネルギーとして活用しています。北海道なので当然、冬になれば雪が積もります。真冬には-20℃が珍しくありません。例えば木材加工のための広い工場内を温める方法として、木質ペレットが燃料に使われています。あるいは、新設された町営住宅の一部には木質ペレットが使えるストーブが設置されているようです。
地場産業のなかで生まれた端材がバイオマス燃料として産地で消費されるということは、ゴミだったものに価値を吹き込んだだけじゃなく、燃料を運ぶためのカーボンフットプリント削減にもつながっています。この取り組み、こんなに素晴らしいのに案外まちに関連する人にあまり知られてない印象です。ここにこそ、北海道に在る町としての、あるいは地方自治体として価値を発揮する領域ではないでしょうか。