人間が恋しいという気持ち
かれこれ3日も誰とも話していない。
散歩の途中、何回か通りすがりに挨拶をしてみたが、情けない声しか返ってこなかった。一度、自転車に乗った部活帰りの高校生に、挨拶をされた。不意をつかれ、反射的に挨拶を返すと、つい声を張りすぎてしまい、さらにそれに不意をつかれた高校生もビクッとなってしまい、少し可笑しかった。
人との深い繋がりをいまだ感じないまま、3日目突入である。そろそろ、人と話したいと思いながらも、この大きな孤独も、一人旅をしてならではのものだったことを思い出す。
出逢いという出逢いはいまだないが、初日に琵琶湖の畔で、日記を書いているときに突如、横から忍び寄ってきた蛇と、2日目の夕方、散歩をしているときにアスファルトを這って進んでいたカタツムリには、心の繋がりを感じた。
蛇に関して言えば、1.5mほどまで近寄られ、私が驚いて飛び跳ねるほんの僅かな間に、目がゆっくりとあうのを感じた。慌てて距離をおいて、身の安全を確保すると、「やるじゃねぇかこの野郎」と間一髪のタイミングに笑いがこみあげてきた。蛇は逃げる私にさらに間を詰めてきたが、私がさらに距離を置くとそこから飛び掛かってくる様子はなかった。
3日間も誰とも話していないとはいえ、鬱で引きこもっていた頃と今は、自分と繋がっているという点で大きく異なる。自分との繋がりさえ絶たなければ、人は孤独に潰されることはない。
これから琵琶湖を離れて、福井県の小浜市に向かうことにした。毎日移動することを、自分の中の決まりとしている。動かないと、心もいつまでたっても動かないことは、散々経験してきたからだ。琵琶湖に登る朝日を拝みたかったけれども、今回は縁がなかったということだろう。
福井の小浜には、原付でテント暮らしをしていた頃から、会いに行くと言いながらずっと会いに行けなかった友人がいる。久々に人と会えることを思いながらも、当時と比べれば、お互いの置かれる状況が変わった今、果たして、どんな出会い方になるのだろうかと、分からないところも多い。
それでも次に進もう。打ちひしがれることなく。