おもちゃ箱 最終話
雅晴は木彫り細工を作りながら、亜依子が帰ってくるのを楽しみにしていた。
3日前、亜依子から『仕事が少し延びることになった』とメールで連絡があったときは、少しショックだった。
だが、会ったときの楽しみが増えたと思えばどうということはなかった。
そして今日、亜依子がハワイから帰ってくることになっている。
『取って置きのプレゼントを用意してるから』とメールには書いてあった。
そんな亜依子のために、雅晴は新しい木彫り細工を亜依子にプレゼントしようと、昨日から寝ずに木を彫り続けていた。
あと少しで完成というところまできていた。
雅晴は時計を見ながらそのときを待ち望んでいた。
ピンポーン。
篠「亜依子か? でも少し早いな……」
ガチャ。
雅晴はドアを開けた。
?「すいませ~ん。宅配で~す」
篠「宅配? 誰から?」
?「はい、え~っと。嶋野亜依子さんという方からですね」
篠「亜依子から!? 例のプレゼントか。……にしてもでかいなぁ。これ玄関通らないよ」
?「……どうされます?」
篠「後で中身を出すから、そこに置いといて」
?「分かりました。では、サインの方をお願いします」
篠「はい。……はい、どうぞ」
?「ありがとうございました~」
宅配業者は帰っていった。
篠「……さて、亜依子が帰ってくる前に、中身を家に入れるか」
雅晴は包装紙を破り捨てた。
篠「木箱か。一体何が入ってるんだ?」
雅晴は箱を開けた。
篠「うわぁぁぁぁ~!!」
雅晴は腰を抜かした。
箱の中には、全裸姿の亜依子がいた。
喉を切り裂かれ、首から下にかけて血まみれになっていた。
篠「あ、亜依子……」
雅晴は涙を流しながら、亜依子の死体に恐る恐る近付いた。
震えた手で亜依子の顔に触れる。
その体は冷たく、亜依子が死んでいることを物語っていた。
篠「あぁ……亜依子……。あぁ……」
篠塚は亜依子の体を引き寄せ抱き着いた。
ブチッ。
ピーッ。
ドォー……ン。
静かな山の中で、大きな音が響いた。
時「……」
聖陽は拘置所の中にいた。
部屋の中で壁にもたれ掛かり、ゆったりしていた。
時「……」
聖陽はニヤリと不適な笑みを浮かべた。
その笑顔の意味を知る者は、ここにはいない。