おもちゃ箱 第52話
決着
<過去 side>
奏と聖陽が最初に会ったのは2年ほど前。
大学に入ったばかりの奏は、授業を受けるために席に着いていた。
横には秀平が眠たそうな顔をして座っていた。
黒「ふぁ~……。眠い」
奏「どうだった? 昨日の合コン」
黒「……聞かないでくれ」
奏「ハハハ……」
秀平は昨日、初めて合コンを開いたようだ。
結果は散々だったようだが……。
秀平と他愛もない話をしていると先生が入ってきた。
生徒たちはぞろぞろと席に着いていく。
時「皆さん始めまして。今日から日本文学について皆さんに教えていきます。時東聖陽と言います。よろしくお願いします」
?「ヤダ、カッコ良くない?」
?「うんうん、なんかデキる男って感じ」
その人物はスーツをきっちり着こなし、スラッとした体をした、まさにイケメンという言葉がピッタリな男だった。
これが、奏が初めて聖陽を見た瞬間である。
コンコン。
時「どうぞ」
奏「失礼します」
奏は夕方、聖陽の研究室を訪ねた。
時「どうしたんだい??
奏「すいません。先程の授業のことで聞きたいことがあるん……です、が……」
聖陽の部屋を見て奏は言葉を失った。
部屋の中には、ミニチュアハウスがたくさん置かれていた。
大学の研究室にこんなものが置かれているとは誰も思わないだろう。
時「驚いたかい? 小さい頃からミニチュアが好きでね。時間があるときに作って、仕事の合間にこうやって見ているだけでも落ち着くんだ」
奏「そうですか……」
時「それで、何が聞きたいんだい?」
奏「あ、はい。ここなんですけど……」
聖陽は奏の質問に丁寧に答えた。
聖陽の説明は分かりやすく、奏は直ぐに理解できた。
奏「なるほど……。すいません、ありがとうございました」
時「いやいや、分からないことがあったらまた聞きにおいで」
奏「はい。ありがとうございました。失礼します」
奏はそう言って部屋を出ようとした。
時「あっ!! ちょっと待った!!」
ドアノブに手をかけようとした奏は手を止めた。
時「君ってもしかして、深堂かなえ君の弟さんかい?」
奏「姉ちゃ……姉を知ってるんですか?」
時「あぁ、彼女は僕の心理学の授業を受けていてね。よく私のところに質問に来たよ」
奏「そうなんですか……」
時「かなえ君とよく似ている。直ぐに姉弟だと分かったよ」
そう言われると、奏は頬を掻いた。
かなえに似ていると言われ、恥ずかしい気持ちになったのだ。
時「また何か聞きたいことがあったらいつでもおいで。今度はコーヒーを用意しておくよ」
奏「……はい。ありがとうございます」
それから、奏は良く聖陽のところに訪れるようになった。
奏にとって、聖陽との会話はとても楽しいものになった。
<過去 side end>
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