ばあさんとの散歩をすっぽかす
七月十五日(金)田渕
昼食を食べ、薬を飲み、うとうとしていると夢を見た。至って普通の、目が覚める頃には忘れてしまうような夢だ。
しばらく横になったまま、廊下から聞こえる声に耳を傾けていると、福留さんと小坂井さんが病気の話をしているところへ、私を呼びに例の婆さんが現れたようだった。
枕元の時計は午後三時を指していた。散歩の時間だ。婆さんが病室の前でうろうろする気配を感じながら、すぐに起き上る気にもなれずぼんやりとしていた。
十分以上経ってからようやく病室から出ると、婆さんは私を見るなり安堵の表情を浮かべた。私のような人間が、必要になったとき、はたして妻の介護などできるのだろうか。婆さんを見て優越感を抱いた自分が、恐ろしくなった。
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