検査でたらいまわしにされる

 午後は検査がいくつか続いた。二階の面談室でまず視力検査と聴力検査を受け、続いて胸のCTを撮り心電図と血ガスの検査も受けた。

 視力検査はおなじみの、円の上下右左どこに穴があるかを答えるものだった。視力は幼少の頃から落ちておらず、両目とも一番小さな円まで答えられて、眼鏡をかけた女性検査官に「素晴らしい」と褒められる。

 聴力検査は掃除用具入れのような狭い箱に入れられ、方耳だけヘッドフォンをつけて音が聞こえたらスイッチを押すものだった。次第に検査音と耳鳴りの区別がつかなくなり、適当にスイッチを押したが何も言われなかった。

 胸のCT撮影は、東病棟から出て渡り廊下を左に曲がり突き当たりの「南病棟」の一階奥で行われた。割と広い部屋に中年の男性技師がいて、言われるままスリッパを脱いで台の上に横になる。万歳し、台に胸と腰をテープで固定され、その上を運動会の入場門のような形のカメラが通り過ぎるたび息を止めたり吸ったりした。撮影はカメラが五往復程度、時間にして五分程度の短いものだ。検査が終わると「お疲れ様でした」とにこやかに送り出される。

 CT室を出て床に記されている矢印を辿っていると、南病棟の更に奥に、まだ建って間もない様子の綺麗な建物を発見した。看板にはリハビリ棟(新病棟)とある。近くまで行って覗いてみたい衝動に駆られたが、マスクをしていることを思い出し、やめた。

 後ろ髪引かれながら心電図室に行き、イスに座ると看護婦に耳たぶを針で刺された。少量の血液を採って機械にかけ、数秒待つとその機械からコンビニのレシートのような紙片が出てきて、血液中の酸素濃度を測る検査だと説明を受ける。ピアスを開けるときは針を貫通させるのだから、もっと痛いのだろうと思う。

 刺した所に貼られたテープをさすっていると、今度はカーテンで仕切りがしてある部屋のベッドに横になるよう言われ、Tシャツを捲り上げられるとコードが付いている吸盤を胸に取り付けられた。心電図だ。検査官が若い女だったので、胸が高鳴っていないか心配したがすぐ終わった。

 マスクをして病院内を歩いていると、確かに悪いことはしていないのにそわそわする。すれ違う人たちの視線も心なしか厳しい気がして、早足で病室に逃げ帰った。看護婦の説明によると、入院直後にするこれらの検査の後は、週に一度の採血や、二週に一度の痰の採取くらいしかしないらしい。病室に戻るとモリオがベッドの上で腹筋をしていた。

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