笑みを浮かべた双子が廊下に立っている
八月五日(金)大沢
僕が三階の病室にいた頃、向かいの部屋にとてもよく雰囲気が似ている老人たちがいた。彼らはよく廊下の突き当たりにあるイスに向かい合って座り、そろって窓の外を眺めていた。会話している姿を見たことはなかったが、本当の兄弟のようで、僕は何となく好きだった。
しかしある日、彼らはそろって退院してしまった。
と、思っていたのは勘違いで、二人ともまだ病院にいた。二階の廊下で兄の方とすれ違った。続いて弟の方もトイレでばったり会ったので、実はただ部屋を移動しただけだった。挨拶すると二人とも返事してくれた。