君と君のその恋は詐欺じゃないのか?
新宿で痴情のもつれからの殺人事件があった。
25歳の夜職の美女が、51歳のモテないおっさんに刺殺された。
冥福を祈りつつ、大好きな車を手放してまで女に貢いだ男に対して同情するネットの声を見かけて、吐き気がした。
恋愛なんていう非合理を煮詰めたみたいなものに、他人が同情したり共感したりするのは無意味だし、夜の女性に固執して殺人鬼になった人間は「ド」を100個つけても足りないくらいのクズなので、同情してる場合じゃない。
女ともだちと酒を飲んでいたら「いただき女子りりちゃんに憧れる」とギャグなのか、マジなのかわからないことを口にした。
彼女は彼氏の家で暮らしながら、「結婚は考えられない」と新しい男を探している。彼女の年収で都内で暮らすには心もとないはずだが、おかげさんで彼女は飲み歩きが趣味だった。
4月のこと。まだ春は遠い夜だった。
ぼくは相槌をうちながら「一定以上の女はだいたいこんなもんだよなあ」と日本酒を煽った。
しばらくして、りりちゃんの判決が出た。
彼女はそれを受けて、正式に「詐欺師」になり、犯罪者になった。
とはいえ、「りりちゃん」を「詐欺師」と呼ぶことにぼくはかなり抵抗がある。
もとより恋愛は「だましあい」。自分の望んだ結果にならならいから「詐欺よばわり」するというのは、お門違いというか「なにを今更?」という話。ボクシングの試合に負けたから傷害罪で訴えるみたいな話。
りりちゃんが他人を「籠絡するためのマニュアル」を販売していたことが犯罪なのならば、女性向け雑誌の出版社は犯罪者だらけだし、すべての恋愛指南書は禁書になる。
マッチングアプリで出会って、たらふく飯を食わせてもらったのに髪すら触らせなかった女も全員犯罪者。
「わたし、次付き合う人とは結婚したいと思ってるから。〇〇くんみたいにきちんとしたお仕事してる人がすっごい良い」と顔は好みじゃないけど、周りに好印象持たれたいからコンパで安全牌を褒めた女は全員懲役。
まあ、無論「そんなわけない」でしょ?
だからりりちゃんを司法が詐欺師と定義したのはどこか納得ができない。
彼女が詐欺師だとしたら、
君と君のその恋は詐欺じゃないのか?
以下、参考に