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#11 モノが壊れる確率が低くても、モノの数が多かったら安全じゃないのでは?

 私は安全・リスクを専門として学んでいる学生であるが、ある日、こんな質問を受けた。
 「100万年に1回の頻度で壊れる容器があるとする。これがもし100万個あったら、毎年1個は必ず壊れるということか?」
 要するに、「モノが壊れる確率が低くても、モノの数が多かったら安全じゃないのでは?」という意味である。この問いについて考えてみたい。

①100万年に1回の頻度で壊れる容器とは何か?
 まず、100万年に1回の頻度で壊れる容器とは、一体どういう意味なのか?どのように解釈され得るだろうか?
 これは、「現時点で正常な(新品の)ある1つの容器について、(いつ壊れたかはわからないが、)100万年後の時点で観測すると、その容器は確実に壊れている」という意味であると解釈できる。
 すなわち、時間確率的発想に基づくと、「100万年後における破壊確率が1である」、ということである。
 この解釈を一般化しておくと、ある時間tdに1回の頻度で壊れる容器があるとしたとき、「t=0の時点で正常な(新品の)ある1つの容器について、(いつ壊れたかはわからないが、)t=tdの時点で観測すると、その容器は確実に壊れている」という解釈になる。

②この容器は、現時点から1年間のうちにどれだけ壊れやすいだろうか?
 我々が知りたいのは、この容器(容器A)がある時間の間においてどれだけ壊れやすいかである。
 一般化して述べれば、「容器Aが、任意の時間tにおいて壊れているかどうか、という確率」を知りたいことになる。
 この確率は、t=0において0、t=tdにおいて1である、累積分布曲線F(t)として表現することができそうである。

 このとき、任意の時間tにおけるF(t)は、「容器Aをある時間tにおいて観測し、壊れているかどうかを判定する」という独立試行をN回繰り返し、壊れていた回数がn回だった場合の確率値n/Nで計算される。この試行を無限回繰り返した場合、その確率値はF(t)に収束すると考えられる。
 この試行は、「容器AをN個用意して、ある時間tにおいてその全てを同時に観測し、壊れているかどうかを判定する」という試行と同値である。
これは、「あるサイコロをN回振ること」と、「全く同質のサイコロN個を同時に振ること」が同値であることと同じである。
 これは、各試行が独立である(時間の経過による影響を受けない、過去の事象が現在の事象に影響を与えない、)という仮定の下で成り立つ。

③冒頭の問いに対する答えはどうなるだろうか?
 冒頭の問いは、「td=100万年=10**6[y]」、「N=100万個=10**6[-]」の場合に相当する。
 ここで、F(t)が線形関数(1次関数)であると仮定すると、定数kを用いて「F(t)=kt」と書ける。
 「t=tdのときF(t)=1」であることから、「k=10**-6[/y]」である。
 「F(t)=kt=n/N」であることから、「n=ktN」である。
 「k=10**-6[/y]」、「t=1[y]」、「N=10**6[-]」より、「n=1」となる。
 すなわち、「100万個中、(どの1個かを特定することはできないが、)1年の間にどれか1個が壊れることを繰り返し、100万年後に全て壊れている状態が達成される」ことになる。
 したがって、冒頭の質問に対する答えは、「そのように解釈することは、F(t)が線形関数であると仮定した場合です。F(t)がそれ以外の関数形の場合は、一概にはそうと言い切れません。」である。

 容器AのF(t)がどのような関数形で表されるかを完全に知ることはできない。これをどのように設定するかによって結果が変わってしまうため、注意が必要である。

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ともやの思考整理note
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