
コロナについて「知性」の側面から眺めてみた~本「コロナ後の世界」を片手に~ 1/2(前半)
先日は、コロナを文学的に捉えてみたが、今回は“世界の知性“6人のインタビュー記事をまとめた書籍からコロナを眺めてみたい。6人分を読んだが、長くなりそうなので、前半の3人と後半の3人と分けて2回アップします。「コロナ後の世界」というお題だが、コロナに関係ない部分も多かった。それでも未来を考えるという視点、世界から見た日本という視点で非常に参考になる部分が多かった。
6人の中で前半3人。
①独裁国家はパンデミックに強いのか ジャレド・ダイヤモンド
②AIで人類はレジリエントになれる マックス・テグマーク
③ロックダウンで生まれた新しい働き方 リンダ・グラットン
①独裁国家はパンデミックに強いのか ジャレド・ダイヤモンド
ダイヤモンド氏は、UCLAの地理学教授。ピューリッツァー賞を受賞した「銃・病原菌・鉄」は有名だろう。
中国について。共産党一党独裁に政府は、ひとたび決断すれば強権的に緊急措置を実行することが可能。しかし、民主主義国家よりも独裁国家のほうが感染症に対して有効に対処できたかというと、答えはノーです。と言っている。それは中国政府が情報を隠蔽しようとしたこと。独裁体制であれば悪い決断であっても迅速に行える、と。
二十一世紀は中国の時代かということにも異論を唱えている。壊滅的なディスアドバンテージを抱えている、一度も民主主義国家になったことがないことが致命的な弱点、歴史上、いいことだけをした独裁者というのは存在しない(文化大革命、大躍進政策を例に出していた)と。
アメリカにおいても民主主義について懸念を示している。今、連邦最高裁判所の判事九人のうち五人が保守派、四人がリベラル派。リベラル派の一人が退職リスクがあり、後任が保守派になると六人が保守派になり、保守派の独裁になるのではないか、と懸念している。
日本に対しては、さまざまな問題を抱えていると言いながら、人口減少はアドバンテージになる。資源を外国に依存しているので、人口減少で必要な資源が減る。人口が減っても経済力が落ちるとは限らない。オーストラリア、イスラエル、シンガポール、フィリピンは日本よりも人口が少ないにも関わらず経済的に成功している。
女性を家庭から解放しようと訴えている。女性に関しては後進国。日本人の女性は教育レベルも高く、優秀な労働者。人口の半分を占め、教育レベルが高くて健康な女性が働ける環境を作れていないことが、日本の問題と指摘している。
人口減少、高齢化、不景気よりも大きな問題として、周辺諸国、韓国、中国との関係をあげている。武装化せずに話し合いながら進めていくべきだと言っている。
最後に、“次の世代のためにできること”として投票と言っている。危機を乗り越えるためにできる最も効果的なことはまともな政治のために投票にいくこと。と。
②AIで人類はレジリエントになれる マックス・テグマーク
MITの教授。「LIFE3.0」はAIと共存をテーマに未来の様々な可能性を探り、全米でベストセラーになった。スティーブン・ホーキング博士からも賞賛を受けた人。
人類は思っていたほどレリジエント(強靭で柔軟)ではなかった。これが今回のパンデミックから得た教訓です、と言っている。
これは私も感じることが多い。国や企業、個人においてレリジエントなものでないこと、個人で考えたり、全員で意思決定できないことが明らかになっている。これからAI等テクノロジーの進化が激しくなり、世の中が大きく変わろうとしているときに、人類は意思決定をしていけるのだろうか。。。
ヘルスケア領域での大きなAIの進化も学ぶことができた。遺伝子配列からタンパク質の立体構造が正確に予測できるのであれば、逆に、自分の求める立体構造をもつ分子を作成する遺伝子配列もわかるはず。こうした情報をもとにシミュレーションをすれば、
非常に短い時間で新薬を開発することが可能になる。
数十年以内にあらゆるタスクや職業で人間の知能を超える「汎用型AI」(AGI:Artificial General Intelligence)ができるだろうと予測している。外部データを使わず自己学習してAIが強くなっている。たとえば、AlphaZeroは人間の対局データを一切使わず、ゲームのルールを学んだAIが、AI内部で自己対戦を繰り返すだけで強くなっていった。囲碁やチェスの分野ではAIは人間を超えたと言える、とのこと。
ここからは私も関心がある部分。格差から再配分。AIなどのテクノロジーは、「経済」に与える影響も非常に重大。AIによる儲けが一部の株主や投資家に渡るのではなく、世界中のすべての人にシェアされるような仕組みを作りだすことが重要だと著者も言っている。ブレグジットもトランプ大統領の選出も背景には「拡大する収入格差への不満」があったのは明らかだとも言っている。ここは今後、重要な論点であると思っているので、しっかり考えて行動できるようにしたい。
最新の技術が自分たちの職業に応用できそうならいちはやく実践し、取り入れることが「生き残る」ための手段だと言っていた。
ディストピアにならないためにも、戦略や倫理基準の設定、本当に必要なのは未来に対するポジティブなビジョン。AGIのエラーが「人類の終焉」を引き起こすリスクもある。
“多くのアイデアをシェアできるグローバルな協定をAIに関してつくることができれば、誰もが劇的に幸せになれる。そんな素晴らしいテクノロジーにAIをすべきなのです”と著者は締めくくった。
③ロックダウンで生まれた新しい働き方 リンダ・グラットン
多くの方がご存じの女性、ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授。「人生百年時代」というフレーズの提唱者。「ワーク・シフト」、「ライフ・シフト」はベストセラーになっている。
高齢化という意味で、日本は世界における“トップランナー”。日本の政府と社会は、世界に向けて模範を示す立場になる。と言ってくれている。たしかにおっしゃる通りだ。ただ、彼女は日本政府の「人生100年時代構想会議」で有識者を務めた際に、日本に対して残念だったことがある模様。それは、改革を推し進める立場の政府こそが「高齢者とはこういうものだ」という思い込みを持っていると感じられたことです。この頑ななマインドセットを変革することが大切です。と言っている。お~おっしゃる通り、政府も会社もそうなんです。。。
もっと柔軟に考えて、未来へ向けて進んでいかないといけない。その橋渡しをするのは頭の固い方々ではなく、30代、40代の責任なんだろうな。
枠にとらわれない自由な考え方をすれば、高齢者は活気に溢れ、社会に大いに貢献できる存在、とも言っていた。ロボットやAIより人間が優れている点は、共感力や創造力、理解力、交渉力など。その点では、高齢者には力を発揮するチャンスが多くある、と。
長く働くために強みとなる「三つの無形資産」
1、生産性資産:価値ある高度なスキル、自分のキャリアにとってプラスとなる人間関係、会社や組織に頼らない自分自身の評判。
2、活力資産:肉体的・精神的な健康
3、変身資産:様々な変化についていける力を鍛えるためには、自分と向き合いつつ、自分と違う年代、性別、仕事、国籍の人たちと関わっていくことが大事。
ポスト・コロナ時代に重要な四要素=透明性、共同創造、忍耐力、平静さ
日本での結婚が“不平等”であること、日本の男性と企業が意識改革をすべきだと唱えている。経済的負担を夫婦で分かち合えば、長い人生に必要な資金を確保するうえでリスクを大きく減らせる。
最後にパンデミックが起きたときに、生き延びるために重要だったのは、健康という資産と家族との絆だった。家族関係だけでなく、コミュニティ強化の重要性も教訓だと言っている。私もコミュニティ強化の重要性を感じていて、今後も私のできる範囲でコミュニティ作りと拡大、強化をはかっていきたい。
このメッセージは激しく同意。②でマックス・デグマークも言っていたレジリエンス。これからの時代のキーワードになるだろう。
個人の健康、身に付けたスキル、家族や周囲の人々との関係性、それらを総合したものが、困難や逆境にあっても心が折れずに柔軟に生き延びる力、つまりレジリエンスになるのです。
早稲田大学総長の田中愛治氏も下記の表現、レジリエンスに近い考え方を言っている。
パンデミックから多くを学び、私たち全員が変わらなければならない時が、すぐそこに来ています。というのが最後のメッセージ。
まずは3人分のポイントをまとめてみた。やはり海外から見た日本は男女の問題があるのか~と思った。未来に向かって楽しく生きていくために変化し続けていきたいな~、レジリエントでありたいとも思った。
後半へ続く。