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EHR、PHR、遠隔診療(日本と各国の状況まとめ)


各国のPHRの状況

日本でのEHR、PHR、オンライン診療ビジネスの可能性について、以下のポイントを示します。

1. EHRビジネスの可能性

  • 市場規模の拡大: 日本では地域包括ケアシステムが進められており、医療と介護の連携が強化されています。これに伴い、EHR(電子カルテ)システムの導入が進行しており、今後さらなる需要拡大が見込まれます。特に、地域医療や多職種連携を支援する統合型のEHRシステムには大きな成長機会があります。

  • 規制の整備: 日本政府はICTを活用した医療の効率化を強力に推進しており、デジタル医療技術の導入を加速しています。この政策支援は、EHRビジネスの参入障壁を下げる要素です。

  • 課題: 日本では、多くの医療機関が既に独自のシステムを運用しているため、相互運用性の確保が鍵となります。標準化の促進やシステムの相互接続がビジネス成功の重要要素です。

2. PHRビジネスの可能性

  • 個人の健康意識の高まり: 日本では高齢化が進んでおり、個人が自身の健康を管理するPHR(個人健康記録)の需要が増加しています。特に、生活習慣病の予防や在宅医療の推進により、PHRがますます重要視されるでしょう。

  • 政府の推進政策: 健康管理アプリやウェアラブルデバイスを活用した個人健康管理の普及が進み、データ共有を促進する政府の取り組みも後押ししています。これにより、PHR関連のビジネスチャンスが広がります。

  • 課題: 個人情報保護に対する高い規制があり、PHRシステムのプライバシー保護が重要な課題となります。この領域での信頼性と安全性を確保することが成功の鍵です。

3. オンライン診療ビジネスの可能性

  • 遠隔医療の拡大: 新型コロナウイルスの影響により、オンライン診療の利用が急増しました。政府は、オンライン診療の制度化を進めており、ビデオ診察や遠隔医療ソリューションの需要が今後も増加する見込みです。

  • 地方医療の強化: 地方の医療過疎地での医療提供を補完する手段として、遠隔診療は大きな可能性を秘めています。高齢化と医師不足が進む中、地方の医療機関との連携やサービス提供がビジネス機会になります。

  • 課題: 料金設定や保険適用の問題があるため、オンライン診療の費用対効果を高めることが求められます。また、患者の利用環境(インターネットやデバイスの普及)も重要な要因です。

4. ビジネス機会

  • パートナーシップ: EHRやPHR、遠隔医療のシステムは、医療機関や地方自治体、政府機関との連携が鍵です。公共および民間のパートナーシップを活用し、地域の医療ニーズに合わせたソリューションを提供することがビジネス成功の要となります。

  • 技術革新: 日本では、IoTやAI技術を活用した次世代ヘルステックの導入が期待されており、これらの技術を取り入れたソリューションを提供することで、競争優位性を確立できます。

結論

日本のEHR、PHR、オンライン診療分野は、政策の後押しや高齢化社会による需要増加を背景に、今後大きなビジネスチャンスが期待されます。特に、地域医療の統合や遠隔医療の普及が進む中、相互運用性、安全性、コスト効果の高いソリューションを提供することが、成功の鍵となるでしょう。

EHR(Electronic Health Record)、PHR(Personal Health Record)、およびオンライン診療の各国の特徴と違いを以下にまとめます。

アメリカ

  • EHR: 約1100社の企業が提供しており、医療機関の67%で普及。規制はHITECH法およびHIPAAが主要。EHRシステムの相互運用性やコストが普及の鍵となる。

  • PHR: 成人の75%が2020年までにPHRを利用すると予測されているが、医師や保険者提供のPHRはプライバシー法の対象に。

  • オンライン診療: テレヘルス市場は成長中で、2025年までに主流化すると予測されている。州ごとの保険適用範囲が異なり、技術の進化が市場拡大を牽引。

イギリス

  • EHR: NHS主導で97%の普及率。2020年までに完全デジタル化を目指しており、中央と地方自治体が協力して運営。

  • PHR: NHSが推進し、患者の健康管理や不必要な診療の削減に寄与。50%以上が自己診断を利用している。

  • オンライン診療: 政府の財源に依存しているが、技術革新が進み、多くの中小企業が参入している。臨床サポートとエビデンスが課題。

ドイツ

  • EHR: 国家全体での標準化は遅れているが、90%以上の医療機関が臨床以外のオンラインサービスを利用。プライバシー保護が普及の障壁。

  • PHR: eHealth法により発展が進むが、まだ普及は限定的。

  • オンライン診療: 規制が厳しく、遠隔医療は限定的な運用。医師が一度は直接診察を行う必要があるため、普及が難しい。

フランス

  • EHR: 普及は進まず、コストと技術的な壁があったが、近年DMPシステムの導入で改善。2020年までに100%普及を目指す。

  • PHR: 高いインターネット普及とウェアラブルデバイスがPHRの発展を後押し。政府主導のデジタルヘルス戦略も進行中。

  • オンライン診療: 法的枠組みが整備され、地域の医療機関と連携。承認を得た医師は処方箋を発行可能。

デンマーク

  • EHR: 医療機関で完全にペーパーレス化され、全国的なデータネットワークで医療提供者間の情報交換が行われている。

  • PHR: 政府が運営する「sundhed.dk」ポータルで、医療履歴や健康情報を管理。

  • オンライン診療: 先進国として評価され、慢性疾患のモニタリングや画像共有など、広範な遠隔医療が展開されている。

シンガポール

  • EHR: 全国的な医療記録(NEHR)を目指しており、多くの医療提供者がシステムを利用中。

  • PHR: 患者自身が医療記録にアクセスできる「ヘルスハブ」ポータルを導入。

  • オンライン診療: スマート国家構想に基づき、ビデオ診察やテレリハブが運用されている。

韓国

  • EHR: 市場は成長中だが、コストやメンテナンスが普及の課題となっている。政府主導の標準化は進んでいない。

  • PHR: EHRとの連携を目指すが、病院間でのデータ共有に課題。

  • オンライン診療: 法的に禁止されているが、政府は遠隔医療基盤の構築を進めている。

出典
ヘルスケアICTに関する各国の概況と動向 EHR、PHR、遠隔医療に関して
デロイトトーマツ

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