作詞概論#3
概論3回目。これで最後です。
作詞家にとって大切なこととは何でしょうか?
今回はそれを掘り下げます。
1. 常にインプットする
作詞家にとって大事なこと。
それは常にインプットすることです。
表現(Output)するには、広く、そして深く様々な経験、体験、知識、教養を取り入れること(Input)が必要です。
手っ取り早いのがエンターテイメント。
映画、本、アニメ、漫画、小説、ゲーム。
そこには千差万別の生き様が描かれ、多種多様の価値観があふれ。
数えきれないほどの人の心理が描かれています。
まずはたくさん観ましょう。
エンタメを浴び続けてください。
「遊んでばかりいないで勉強しなさい!」
なんて言われたことありますか?
作詞家には逆なのです。
「いっぱい遊んで勉強しなさい!」
2. 人生これすべてネタ!
作詞家にとって自分を取り巻くすべての事柄がネタです。
学校であった面白いこと。
バイト先で経験した悔しいこと。
仲の良かった友との別れ。
憧れてる先輩への甘酸っぱい気持ち。
喜怒哀楽。
生活の中で湧き上がる感情をストックしていきましょう。
知らないモノにもどんどんチャレンジです。
失敗してもぜんぜんOK!
その失敗でさえも"おいしい経験”です。
作詞概論#2でも書きました。
共感できる歌詞とは?
誰もが主人公になれる、そんな歌。
人間はネタの宝庫です。
自分をとりまく人たち、その関係に興味を持って観察してみましょう。
きっと作詞のネタになる、そんなストーリーがすぐ側にあるはず。
3. 自分のモノサシを作る
作詞家たるもの。
ボーッと生きてちゃダメです。
時代の流れを読み、人々が共感することが何かを考えます。
世間が今、何に興味を持っているのか?
何に不満を持っているのか
何に怒っているのか?
何を欲しいているのか?
その空気をかぎ取る嗅覚を磨きます。
あらゆる方面へアンテナを立てておきましょう
一つの話題についても。
一つのニュースや一方向の意見だけで判断せず。
多方面から検証し考察します。
自分なりの考えを常に持っておく。
そうした検証を繰り返すうちに、モノの見方が磨かれていきます。
許せる、許せない。
美しい、美しくない。
カッコ良い、カッコ良くない。
自分なりの基準、モノサシが出来ていきます。
これを「美学」と言います。
何事にも自分のモノサシを持つ。
これが作詞家としての独自の切り口を生み出します。
4. 書き癖をつける
作詞家にとって大事なこと。
それは書き癖(アウトプット)をつけることです。
紙のノートでもスマホでも何でもいい。
自分が気軽にできるものを選んでください。
そこに日々の思い、ふっと浮かんだフレーズをメモしましょう。
私は20代の頃は常にノートを持ち歩いていました。
そこに思いついた言葉、湧き上がった感情などを書き殴っていました。
まるで感情のパッケージングです。
今、読み返すとそのまま歌詞として使えるレベルではありません。
でもそのノートにぶつけた感情は血肉を帯びた言葉で勢いがあります。
実際にそのノートを元ネタにして歌詞が生まれたこともあります。
今ならSNSでの発信もいいでしょう。
ツイッターはいいねやリツイートでダイレクトに反応がわかります。
自分の書く文章が「共感をえるか」その感覚を磨くのに最適です。
実際に私が以前にツイートした内容です。
これには多くの「いいね」がつきました。
同じように考えている人がいるからです。
言葉を浮かべ、それを選ぶ、習慣づけをする。
書き癖をつけましょう。
5. 作詞は短距離走
さて、今から作詞をしたとします。
2時間で書いた歌詞と、1週間かけた歌詞。
どちらの出来がよくなると思いますか?
チ、チ、チ、チ、チ、チ...(Thinking Time)
チーーーーン!
1週間と思った人。
断言します。
あなたが今から2時間で書いた歌詞と1週間かけた歌詞。
その二つを比べても、おそらく違いはありません。
むしろ2時間で書いた方がいいかもしれません。
バカにすんな!そんなことあるかい!
と、思いました?
理由を言います。
なぜなら。
人の経験、意識や見方、美学、感性は。
1週間では変わらないから。
1週間かけたところで、あなたの人間性が急に深くなることない。
作詞とは?
書き出すその瞬間までに蓄積した経験、人間性、妄想力。
それがすべてです。
作詞を書くぞ!となってから調べたり読んだりしても遅いのです。
例えそれで書けたとしてもしょせん借り物の言葉。
薄っぺらい言葉の羅列。
自分の心から絞り出した言葉の結晶には及びません。
ただし。
1年後は別です。
今まで述べてきたような、インプットを続け、アウトプットを練習する日々を過ごした1年なら、驚くほど深みが増しているはず。
同じ題材で作詞をしても、今のあなたが書く歌詞と1年後の歌詞では、雲泥の差があるだろうと予想します。
わかりましたか?
「作詞は短距離走」の意味。
これは制作時間を短かくしろ、という意味ではありません。
100mの短距離選手はその約10秒を走るためだけに。
何ヶ月も何年もトレーニングを重ねます。
0コンマ何秒を削るためにすべてを捧げます。
作詞の創作もこれと同じ。
書き上げる2時間のために、何年もインプットを続け、感性を磨くのです。
「書く時」はもうスタートラインに立ってます。
そこからトレーニングしてたら遅いでしょ?
だから作詞は短距離走!
2時間で書き上げるために何年もトレーニングを続けましょう。
illustration: のんち(@Nonchi_art)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?