選択的夫婦別姓制度は本当に必要とされているのか
石破首相にしろ、立憲民主党にしろ、選択的夫婦別姓制度に前向きであり、よく出てくるワードは「苦しんでおられる方々・・・」。実際にどの程度のニーズがあるのか、調査結果を確認します。
世論調査
内閣府世論調査
少し前になりますが、2021(令和3)年12月の世論調査を参照します。https://survey.gov-online.go.jp/r03/r03-kazoku/
選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい 28.9%
現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい 42.2%
現在の制度である夫婦同姓制度を維持した方がよい 27.0%
無回答 1.9%
と、「同姓制度維持、旧姓の通称使用」が最多です。
また、婚姻による名字・姓の変更について、何らかの不便・不利益があると思うという回答は52.1%で、それらに対し、具体的内容を複数回答で聞いた結果は、
(1)変更した側のみ変更の負担があるなど日常生活上の不便・不利益 83.1%
(2)仕事の実績が引き継がれないなど、職業生活上の不便・不利益 34.5%
(3)実家の名字・姓を残せなくなることなどで、婚姻の妨げ 27.9%
(4)自己喪失感、プライバシーが公に、などの心理的負担 13.5%
(1)は面倒レベルの印象。
(2)は通称利用の範囲が広がっているので、今ではあまり問題にならないと思われる(論文については、国内では問題なくなっていると言われる一方、国際的には支障があるとの指摘はあり、何らかの処置は合った方がよさそう)。
(3)は(婿養子は昔からあるので)主に、一人っ子同士で、双方が名字を残したいというケースだろうか。その場合、子供を2人以上もうけて、2つの名字に分ける必要がある。
(4)「プライバシーが公に」とは、名字が変わったかどうかで、既婚か未婚かがわかってしまうということか。
(3)を本当に困る事象だとみなすと、52.1%×27.9%=14.5%
(しかし、子供の名字をどうするかの問題であって、結局、もうけた子供が1人以下では問題解決にならない。)
子供たちへの調査
夫婦別姓となった場合、子供にとっては自動的(強制的)に親の一方とは異なる姓となるわけですが、その観点に立った調査を産経新聞が実施・公表しました。
(2025年1月1日)
「子供もお父さんかお母さんのどちらかとはちがう名字になったり、兄弟や姉妹でもちがったり、おなじ家族のなかでちがう名字になってしまうことに賛成か反対か」という質問に対しては、
○家族で名字が変わってもいいので賛成 16.4%
○親が決めたのなら仕方がないので賛成 18.8%
○家族で名字が変わるのはよくないので反対 49.4%
○よくわからない 15.4%
半分が反対、1/3が容認
「結婚した時に、選択的夫婦別姓制度となっていた場合にどうするか」については、
別々の名字にしたい 13.6%
同じ名字にしたい 59.9%
よくわからない 26.5%
ここまでの調査によると、ニーズはあるとしても2割以下
選択的夫婦別姓制度の賛成が多い印象のなぜ
左翼報道機関の二択
例えば、NHKの2024年5月の報道では、賛成62%、反対27%となっています。「選べる」ことに重点を置いていることと、通称使用について考慮していない2択による影響と考えられます。
(2025年1月の毎日新聞の世論調査でも2択(賛成42%、反対23%))
質問の違いによる結果の違い
上記のように、2択か3択かによって結果の印象は大きく異なるのですが、他にも、選択肢によって異なる結果となり得ることを明らかにしたものがあります。
スタンフォード大調査(報道は朝日新聞)がそれで、政府の世論調査では、2021年と2017年で質問が異なっていたため、それらの質問を2024年に行っています。その結果は、
2021年方式では、
「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した方がよい」が26%
「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」が38%
「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」が36%
2017年方式では
「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」が21%
「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」が59%
「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」が20%
このように、2021年方式では、選択的夫婦別姓制度導入した方がよい(賛成)が26%(実際の内閣府2021年調査では28.9%)、2017年方式では、選択的夫婦別姓制度でかまわない(容認)が59%という結果でした。
容認という人はそれなりにいても、積極的賛成ではないということのようです。
なお、2017年方式での通称使用の前提として「同性を名乗るべきだが」を入れていることも選択しにくかった要因と思われます。
同じ調査で、「選択的夫婦別姓が法制化された場合、自分も配偶者の姓とは異なる自分の旧姓の使用を続けたいか (回答は女性のみ)」を聞いたものでは、
選ぶ可能性が高い 21.3%
どちらとも言えない 23.5%
選ぶ可能性が低い 55.2%
でした。
以上から
選択的夫婦別姓制度について、
積極的に要望しているのは約2割以下(現状”苦しんでいる”のはもっと少ない)
上記を含めて容認する人は比較的多い(半分近く)ものの、
通称使用で事足りると考えている人が最多
というのが実態と考えられます。
2択では、”容認”を”賛成”として扱っているので、賛成派が多いように見えるということのようです。
ということで、急いで推進するような事項ではないというのが結論です、