FⅩを利用した為替ヘッジ
以前のnoteで為替の長期的に見た割高割安の判定を行いました。外貨預金の場合、円高の時は外貨預金を「始める」「増やす」という手段がありますが、円安になると「やめる」ことしかできません。
FⅩによる為替ヘッジ
そこで登場するのがFⅩです。FⅩでは保有していない外貨をいきなり「売る」ことができるため、マイナスの外貨預金と捉えることができ、これで為替ヘッジができます。
これから円高局面に入りそうだと判断した場合に、保有している外貨建て資産自体を売ってしまうのではなく、FⅩでの米ドルの売建てを組み合わせることで、円高による価値減少を防げます。それが為替ヘッジです。
(1)米国ドル建て資産が外貨預金の場合
米国ドル建て資産が外貨預金だと単に相殺されるだけですが、一般的に、外貨預金の手数料に比べ、FXの手数料は非常に少ないので、実際に外貨預金を解約して残高増減をするよりも、FⅩの売りで行うことにメリットがあります。なお、米ドル以外の通貨はFⅩでも手数料が高いので、あまりお薦めできません。
(2)米国ドル建て資産が米国株式等の場合
円高が見込まれる場合、米国株式1万米ドルに対し、1万米ドルの売り注文をFXですれば、米国株式の通貨部分(円高で損)をFXの価値(円高で益)で相殺できます。
逆に円安が進行したらその円安の利益は得られなくなりますが、例えば1ドル145円の時に146円の逆指値※をしておけば、146円に円安となった時に決済(買い)されるので、146円を超えた円安には連動して利益が出るようにしておくことができます。
※指値は「いくらまで安くなったら買う」、逆指値は「いくらまで高くなったら(諦めて)買う」という指示
留意点:FXを劇薬にしないために
FⅩは、為替ヘッジで使うつもりでいても、色々注意点があります。
意外と大きな金利負担
例えば米ドルを売り建てした場合、日米金利差分の負担が生じます。今だとアメリカの金利は高いので、負担が大きくなっています。保証金は僅かであったとしても、1万ドルを売り建てているならば、1万ドルに対する金利がかかります。外貨預金の為替ヘッジを長期にわたり為替ヘッジしていたならば、日本の金利分の利益しか得られないことになってしまいます。
円安進行につられて売り建てを増やしてしまいがち
為替相場がボックス圏の動き(一定の範囲内での上下動)をしていると、「円安水準(下図で145.0円)でドルを売って、円高水準(下図で144.5円)で決済」することで利益を得ることを、ついしたくなります。図のケースのように、1万米ドル売って0.5円円高になれば、その都度5000円ずつの利益になります。
ボックス圏の動きをしている内はよいのですが、円安が継続的に進行すると「好条件で売れる」ということで、つい余計に売り建てをしてしまう可能性があります。
それにより、元々保有している外貨建て資産の金額よりも過大に売るというリスクを取ってしまうおそれがあります。
例えば1万米ドル分売った場合、その後決済のタイミングがなく10円分円安になれば、10万円の含み損になってしまいますし、外貨建て資産の金額よりも多く売建てしていれば、金利負担が過大になってしまいます。
外貨建て資産とFⅩは別々に課税される
外貨建て資産から生じる利益と、FXから生じる利益は、別々に課税されます。
「為替部分とFX」の損益が合計で0近辺であっても、片方で損失、もう片方で利益という場合が多いでしょう。その場合でも損益通算はされずに、利益の出た方で課税されます。FⅩについては、先物取引に係る雑所得として課税され、他のFⅩ等との間でのみ損益通算が可能です。なお、3年以内は繰越控除が可能、すなわち、異なる時点間での損益通算のようなことはできます。
どのような約定をしているかは、通常、FXのツールで確認はできますが、決済した分も含めてExcelなどで管理するくらいの気持ちが必要かと思います。
あくまでこういう方法があるという紹介です。うまく使う自信のある方だけお試しください。