超一流アナリストの技法① ~思考法からバリュエーションまで~
今回は野崎浩成さんの著書「超一流アナリストの技法」のご紹介です。
著者の野崎浩成さんは、
・Institutional Investor誌 10年連続1位(銀行部門、2004~2013年)
・日経ヴェリタス 11年連続1位(銀行部門、2005~2015年)
という大変輝かしい実績をもつトップアナリストです。
本書は、
第1部: どの分野でも一流になれるマインドとテクニック
第2部: 超一流アナリストのスキルと暗黙知
の2部で構成され、No.1アナリストの仕事術が惜しみなく披露されています。
金融業界以外のビジネスパーソンにとっても学ぶべき点の多い素晴らしい内容と感じました。
◆本書を読んで勉強になったこと
今回は第1部に絞って、特に勉強になった点をまとめます。
1.効率性を高める仕事術
① 空間管理
② メール管理
③ データ管理
2.仕事の効果を上げるプレゼン術
3.心の作用 ー 期待操作術を駆使する
1.効率性を高める仕事術
① 空間管理の技法
整理整頓は、仕事の効率性を向上させる基本中の基本として、
「クリーンデスク&クリーンルーム」
の実現を著者は推奨しています。
机の上に残してよいのは、
”どうしても机の上に置かなせれば仕事ができないもの”
のみです。
「クリーンデスク」にすることで、以下のようなメリットがあるといいます。
・集中力が上がる
・作業効率が上がる
・重要な資料の散逸を防ぐ
・清潔さが運を招く(?)
筆者は、「転職しても(あるいはクビになっても)1時間以内に荷造りが可能となる」レベルを目指して空間管理をしていたようです。
これは、とてもわかりやすい目標とすべき指標と感じました。
また、「クリーンデスク&クリーンルーム」を実現するため、PDFのフル活用によるペーパーレス化を推奨しています。
ペーパーレスが基本であり、紙の資料は捨て、電子データだけ残す。
こうすることで、地球上の資源を無駄にすることもありません。
② メール管理の技法
メール管理の技法として、主に
✓「受信箱ゼロ」
✓「レス5分ルール」
✓「箇条書きの有効利用」
を推奨しています。
✓「受信箱ゼロ」
とは、受信したメールは即、目的別フォルダーへ移し、受信箱ゼロの状態を維持するというものです。
そのためにはフォルダー管理が重要です。
・要処理フォルダー
・総務関係フォルダー
・処理済案件当面保管フォルダー
・ノウハウフォルダー
(今後使えそうなノウハウを含むメールを保管するためのフォルダー)
・1週間程度後保存後に削除するフォルダー
という分類が本書で例示されています。
ノウハウフォルダーを作るアイデアはこれまで持ち合わせていなかったため、大変勉強になりました。
同じような問い合わせに即対応できる、という効果も見込めそうです。
✓「レス5分ルール」
では、その名の通り、受けたメールへの返信を5分以内にすることを目標にします。
即座に回答できないときは、回答までのおおよその時間をすぐに相手に返信します。
それにより、メールが無事確認されていること、回答の準備に入っていることなどが相手に伝わります。
仮に、1日かかっても、1週間かかっても、この対応が相手に安心感と好感を与えるといいます。
✓「箇条書きの有効利用」
は、メール本文の文章のアイデアです。
簡潔で見やすいメールは、忙しい相手に喜ばれます。
自分が超多忙な社長や総理大臣になったつもりで文面を考えます。
忙しいさなかに送ってもらっては困るような長文は、避けなければなりません。
そこでお勧めなのが、「箇条書き」の有効活用だといいます。
ご質問いただきました〇〇のポイントを以下にご案内いたします。
①・・・
②・・・
③・・・
以上宜しくお願いいたします。追加的なご質問はいつでも歓迎します。
といった具合です。
③ データ管理の技法
データのファイル名には神経を使うべきと著者は主張します。
そのときどきのフィーリングでファイル名をつけると、後で探すのが大変になってしまうためです。
名前のつけ方のルールとして、
・ファイル名の検索がしやすい語句を入れること
・年月を入れること
を推奨しています。
基本的なことですが、是非押さえておきたいポイントです。
また、表計算ソフトの充実術として、「言語切り替え機能」をIF関数を用いて設定する方法も紹介しています。
例えば、
・D2セルには”J”(日本語)または”E”(英語)のどちらかを入力しておき、
・項目名をA6セルには日本語、A7セルには英語で入力しておき、
・見た目をよくするためA,B列は非表示とし、
=IF($D$2="J",A6,A7)
とC6セルに入力することで、D2セルが”J”かそれ以外(”E”)かで、C6セルの言語を切り替えられるというものです。
マクロなどを使わなくても簡単に表示言語を切り替えられるため、大変便利です。
また、ファイル数を減らせるというメリットもありそうです。
2.仕事の効果を上げるプレゼン術
✓ 基本原則
プレゼン資料では、
・文字は極力少なく、
・ポイントのみを記載すること
を基本とすべきと筆者は述べています。
このため、「文章」ではなく「箇条書き」が原則となります。
✓ タイトルとヘッドラインに心を砕く
・資料の表紙を飾るタイトルには、「メッセージ性」が必要。
・同様に、資料のヘッドライン(見出し)も最初に目が行く部分だけに、コンパクトでパンチが効いたフレーズが必要。
どちらにも共通するのが、一方的な説明ではなく、相手の関心から入るという点です。
✓ 資料作りの基本は、自分で見てワクワクするか
プレゼン資料の基本は、自分がプレゼンの受け手となった場合に、その資料でワクワクするかを問いかけながら作成することだ、と筆者は主張します。
・1ページに盛り込む基本は、ヘッドラインのメッセージ、自分の主張をサポートするデータ、その簡潔な説明。
・データは、グラフでも計数表でも主張を裏付ける説得力がより強い方を選ぶ。その横にはポイントとなる情報を2~3つ程度の箇条書きで示す。
(文字で埋め尽くされた資料は、それだけで聞く気力さえ萎えさせる)
・必要最低限のデータを掲載する。
(多くのデータを必要とする受け手には、プレゼンの事前か事後にデータファイルを送る。)
・漫然と図表を貼り付けるだけではなく、必ずハイライトする。
(網掛け、太線の円、矢印などで、”言いたい部分”をハイライトする。)
・意図的に重要なポイントを資料には載せず、あえて内容を「少しだけ不親切にする」
→プレゼン時に書き込んでもらうことで、相手の印象に強く残る。
・一通り資料が出来上がったところで、「この資料で本当にワクワクするか?」を自分に問いかける。必要に応じてつくり直す。
これらの注意するかしないかで、プレゼン資料の質に大きな差が生まれそうです。
✓ 魅力あふれるプレゼン術
何よりも心がけたいのは、プレゼンのためのテキスト原稿は用意しないことだと言います。
どういった状況であっても、読んだ言葉はいかに抑揚をつけても朗読でしかありません。
言葉には力が宿りますが、その源はハートから発せられるものでなければならない、ということです。
理想はテキスト原稿を用意しないこと、と理解しましたが、心配性の私は今後もテキスト原稿を準備してしまいそうです。。。
3.心の作用 ー 期待操作術を駆使する
「期待操作術」(エクスペクテーション・コントロール)は、仕事に限らずプライベートでも活用できる方法論です。
人は幸福感を感じる場合には絶対的な価値の感覚がないため、必ず何かと比較しながら満足し、あるいは不愉快な思いをします。
昨日の自分と比べる、隣の人と比べる、…。
いろいろと比較対象はありますが、最も多く比較の対象となるのは「期待値」です。
人は事前に期待していたことよりも結果が良ければ喜びますし、悪ければ残念な思いを抱きます。
仕事や生活の中で、この期待値をコントロールすることで、自分や他人の幸福感を操作することもできますし、同じ結果であっても評価を高めることさえ可能です。
顧客の期待値を操作する方法論として、コンサルティングなどのビジネスの場でもしばしば用いられるそうです。
まずは、この方法を自らに用いることが大切です。
なぜなら、自分を一義的に幸せにする存在は自分自身だからです。
将来の不確実性が1%でもあれば、これはいつでも使えます。
例えば、
・資格試験を受けて手ごたえは感じたが、不合格になるだろうと信じておく。
・転職先の職場は、性格の良くない人ばかりで暗い雰囲気だろうと予想しておく。
・ボーナスは、業績不振なので出ないだろうと考えておく。
このように、期待値を下げておくことによって、多くのケースで幸福感を得ることができます。
同じ結果であっても、幸福感を感じたほうが良いに決まっています。
すべて後ろ向きに考えて「希望をもつな」ということではなく、「期待はするな」ということだそうです。
これは、他の人に対して活用して、家庭内においても、社内においても、対顧客においても、期待値の操作は重要な効果を発揮してくれそうです。
以上、本書第1部の一般的な仕事術に関する部分のご紹介でした。
本書では、上記以外にもビジネススキルやマインドに関する様々なノウハウが盛り込まれています。
すべてのビジネスパーソンに強くお勧めできる一冊です。
第2部も別記事で一部のみご紹介します。