IM HAMBURG🇩🇪 レースレポート

2023年6月8日 20:07

IRONMAN HAMBURG 2023 EUROPIEAN CHAMPION SHIPを走ってきました。どういう準備を重ねてきたかは、別でまとめたいと思います。
あまり長くならないように頑張ります。(敬語調だと文章が長くなるのでだである調でいきます)

Hamburgを選んだ理由

それはもちろん、サブ9をするため。
IRONMAN各地の平均完走タイムが速いレースをピックアップして、①コースのフラットさ②気温/湿度③開催時期の条件に合う候補が、Hamburg、Copenhagen、Barcelonaの3つだった。
タイム参照 : https://www.coachcox.co.uk/

本当は風速が1番大事だけど、3つとも同じくらい風が強く、差をつけられなかった。3つうちから、1番フラットかつ、自分が毎年パフォーマンスがよい6月にあるHamburgを選択した。
サブ9するためには何回か走る必要があると思っていたから、早い時期に走る点もメリットに感じた。

レース当日朝

予報気温10°/23°。風速5km。風は強いけど、気温はかなり良い。
夜も寝れた。7時間中途覚醒することもなくぐっすり。
その前日も8.5時間寝れていたので、目覚めた感覚はよかった。
自分は夜更かし型なので、西側に飛ぶ時差には対応しやすい。

朝食は毎回決まって、切り餅を砂糖醤油で食べる。
ジップロックに3つ切り餅と水を少々入れ、電子ケトルで湯煎する。
沸騰して1分待てば出来上がり。これを合計6つ食べて、トイレを済ませ、日焼け止めを塗り込みホテルを出発。コーヒーは2日まえから飲んでいない。
カフェインの効果を得るためには、しっかり抜く時間が必要というのと、バイク中トイレに行くリスクを減らすため。（パン文化のドイツでコーヒーを飲まないことは想像以上に辛かった…。

トランジッションの準備

トランジエリアにはオープン30分後に到着。
混雑したり、並んだりするのが嫌なので、補給を含めた準備はすべて前日に済ませて、当日は少し遅めにいく。
まずは自分のバイクの元へ。
パンクやチェーン落ち空気圧不足など機材トラブルがないことを確認し、サイコンをセット。トライアスロンモードに設定。wahoo element boltは、自動でトランジットのラップをやってくれる。変速のバッテリーをセットし、乗り出しで快適なギアになっていることを確認。

次はトランジションバックの元へ移動し、補給などの中身を装填。
その後、スペシャルニーズを預ける長蛇の列に並びながら、今日1日の流れを1つ1つ具体的に頭の中でシミュレーションする。準備ができてるレースほど、レース前は憂鬱。
今日の予定は、スイムは54分。T1/T2は合計で8分。
バイクは4:40。90km地点でAvg 39km/h。巡航時のワットは240W。
NPは225Wになるように60km地点ごとに計算。
心拍数が165bpmを超えてもペースが上がらなければ、気候か体調の問題なので、ペースを下方修正。
ランは1km 4分35秒ペース。最初からとにかく上げない。
どうやってこのペースを決めたはこちらのnote↓

直近3週間はオーバートレーニングの症状なのかジョグすら力が全く入らず、練習をほとんどできてなかったので、大失敗する可能性は結構高いなと思っていたけど、リフレッシュされてると信じてスタート地点へ。

スイム 0:56:46 エイジ8位 Avg Pace 1:30/100m

自分が並んだのは40~50番目？くらい。
ローリングスタートなので、順位を分かりやすくする為できるだけ先頭側に行った。
Hambrugはドイツ第二の都市。しかもその街中のど真ん中を走るので、観客が信じられないくらい多い。スタート前から盛り上がり方が全然違う。
感動しているうちに号砲。4分後くらいにスタート。
ヘルスター湖を大きく1周するコース。橋をくぐったりして楽しい。ちなみにここはITUレースでも使われているコース。
水はとても冷たいので、当然ウェットスーツ。
ずーっと最初から最後まで人を抜かしまくる作業。2人づつのローリングなので、間隔が十分あって泳ぎやすい。たまに脇についてくる人をブイや他の選手を利用したりで、優しくかわしつつ、先を目指す。
ワンブロック抜いて、次のブロックへ。
2kmくらいからはほぼ単独。3km地点でまたブロックを追い抜き、結局誰にも抜かされることなくスイムアップ。
タイムを見てびっくり。目標より3分近くオーバー。まぁ仕方ない。

T1 5:07

ハンブルグはトランジットがT1、T2とも一緒の場所で直線距離が長い。
スイムアップ200mからバックへ。ヘルメットをかぶり、ゼッケンをつけ、ハイドレバックをお腹向き背負う。
そこから800m自分のバイクをピックしてダッシュ。
見たところバイクはほとんど残っている。

バイク 4:34:51 エイジ15位 Avg 39.3km/h

バイクは大きく分けて街中区間と、土手区間を含む周回を2周。
街中は工事や大きな穴、登り、幅の狭いS字クランクがあり、スピードが出しずらいので、落車を避けるを最優先でこなす。

土手区間は一直線。この為に選んだビタビタにTTポジションを取れるコースだ。行きは追い風。43~46km/hで折り返しを目指す。

ヤン・フロデノを含むプロの先頭集団とすれ違う。オートバイが15台取り巻くこちらのレーンにもはみ出る大所帯。あぶね〜なんて思ってると、その後ろをマットハンソン含むトップエイジの集団。
60km地点。時速は40.8km/h。疲労感もあまりない。
数週間ぶりに感じる希望に気分が高揚するけど、淡々と。

なんて思ってた矢先、警察官に止まらされ何やらドイツ語で捲し立てられる。バイクコースが救急車、パトカー、ヘリコプターで封鎖されている。
対面のコースだったので、衝突事後があったんだと悟る。
ドイツ語がわからないので、英語話せる人が来てくれてようやく土手の上を歩くように指示されてるんだと理解できた。

レース終わった後で聞いたら、プロを撮影するバイクが反対コースに大きくはみ出た際に25歳のエイジグルーパーと衝突。悲しいことに、バイクの運転手は死亡、カメラマンとエイジは重傷となったらしい。自分が通過したのは本当事故直後で、現場は凄惨だった。

バイクにまたがり、自分のレースに意識を戻すと、これはさすがにタイムロスやばい。
しかも、歩いたことで、wahooのオートトランジットモードが機能して、T2になっている。これで距離と時間、速度が正確にわからなくなった。

改めてサイコンをサイクルモードにして起動。60kmを1.5時間切って通過できていたのでまだ数分猶予はあったはず。次の60km(120km地点)を1.5時間で通過できれば、もう一度土手歩かされてもなんとかなる。

「あ～なんか今日天気いいな～」

想定外すぎて、なぜか逆に気持ちに余裕ができた。
そんなこんなで2周目。街中はすごい声援。
120km地点通過3時間5分。行ける。まだ可能性がある。
また、バイクを降りて土手の上を歩きコースへ。
内転筋が痙攣を始めてる。これはまぁIMでもしろさとでも何回も経験済み。
補給的な苦しみはないので、攣ってしまう状態さえなんとかできれば対処できる。また往復河原コース。
すれ違う上位陣、後ろグループ。いや、信じられんくらいドラフティングしてますやん！思わず笑ってしまった。なるほど全体の完走タイムがいいのは、イタリアと一緒でドラが発生してるんだなと理解。
ドラフティングを全くせず単騎で走る自分のことが心底誇らしく思えた。

150km地点通過もおそらくギリギリ間に合ってる。4:40にギリ届くかもしれないと思った矢先、変速が効かなくなる。降車して確認。バッテリー切れ？いや今朝変えたばかりだ。とりあえずディレーラーのボタン押したり手動でチェーンの位置を変えて調整。乗り出してみるけど、切り替えが効かない。
「これは流石にやばい」と思ったけど、3分後くらいになぜか切り替えが効き始めた。おそらく取り付けた位置が悪くて固まってしまってたんだろう。
セーフ！なのか？タイム的にアウトなのか？
向かい風区間だけど、39km/hを下回らないように進む。ここまで来たら、なんとしてもサブ9してみせると気合が入った。不要なドリンクをすべて捨てて軽量化。結局3ℓのうち1.5ℓしか飲まなかった。ジェルはKODA4、モルテン1本摂った。
今日は足が軽い。練習では時速40kmでヒーヒー言ってたのに、今はさらにビルドアップする余裕がある。
しかし、両足内転筋の攣りはだんだん強くなる。これはもうランで盛大に1回攣るな…。

最終は土手散歩ではなく、別ルートの迂回になった。
当初より距離は遠くなっているけど、徒歩よりはマシか。これで合計の距離もわからなくなったので足を緩めず頑張るしかない。懸命に漕ぎ続けること175km地点、また切り替えが効かない！色々起こるなレースは笑
ここで降車するより、進み続ける方が速いので、激ダサ高速ケイデンスで群衆の前を通過。結局バイクも誰にも抜かれなかった。

T2 5:06

バイクから降りるとやっぱり攣りそう。操り人形のような動きで800mダッシュしてバックへ。靴下をはいて、シューズはいて、補給を入れ替えてランへ。シューズはMeta speedじゃなくて、エンドルフィンプロを採用した。

ラン 3:10:53 エイジ19位Avg pace 4'31/km

ラン開始。10.5kmを4周回。石畳と砂場を含むコースだけど、日陰が多く走りやすい。これまでロングブリックを何度もやってきて、自分が出せるペースは4分35秒だと想定していた。

けど、ランだけは怪我で月平均230kmくらいしかボリュームが積めず、ジョグしかできていないので、全くの未知の世界。
走り始めたのも束の間、500mでデカいの(痙攣)がきてしまった。その場にリンボーダンスみたいな姿勢で倒れ込み前ももストレッチ。立ち上がると痙攣、またリンボー。
これが1番観客が多い場所だったから、恥ずかしかった。
この間10人くらいに抜かれたと思う。リンボーダンスを数回繰り返し、再び走り始めると頑張れと歓声が湧いた。とても温かい気持ちになった。
手元の時計では最初の1km4分55秒。許容範囲内だろう。2km通過4分07秒。やっぱり周りにつられている。4分11-13-15-25とだんだんペースを落とす。
しかし、このペースで走ってても、バンバン抜かれていく。サブスリーペースかそれ以上。ヨーロッパチャンピオンシップのレベルの高さを実感する。
けど、今回は順位はどうでもいい。
ランだけはどう足掻いても、自分の中のベストしかだせない。

10km地点。
足は相変わらずしんどいながらも、1周目は割とすぐに通過。2週目通過の20km地点までは4:25~30で走る選手の後ろにつかせてもらい淡々と走る。
しかし、18kmくらいから筋疲労が限界を迎え始めている感覚があり21km地点では4:45と初めてのペースダウン。24km地点で4:51と一度止まらないとダメなくらい足がしんどい。
ただ、内臓や補給は足りている感覚があるので、これは筋疲労の問題。
このままだとサブ9達成できない。どうにか、動きで誤魔化せないかと接地のタイミングを早めたり、遅らせたり、腕振りの肘をあげたり脇を閉めたり。

そこでなんとか4:39に戻せる動きを発見し、1kmづつ慎重に走った。26kmからは、4分35-46-36-54-42-42-33とかなり限界に近いけど、ペースは戻せつつあった。この動きだ。これでいくしかない。
相変わらずしんどさは積み重なっていくけど、さっきほどの勢いではない。
年1レベルの最強に我慢の時間。
目を瞑りながら余計なことを考えないようにただ、接地のタイミングと、重心移動。この2点だけにひたすら集中する。
接地した瞬間片方の足を自然に前になるように。
33km地点。あと1周。
あと何分とか、達成できないかもとか、そういうことを考えてもこれ以上ペースは上げられないし、何より今がすぐ止まりたいくらいしんどいので、余裕がない。ただただ無心に動きだけに集中する。1kmのラップが鳴っても見ない。ふくらはぎとハムストリングスも攣り始めているので油断ができない。

ここで筋疲労以外に糖質切れを起こしたら終わりなので、5km毎にモルテンジェルを半分口にする(エイドにモルテンあるの最高すぎる)。
35km地点。目を閉じ、接地と重心。目を閉じ、接地と重心。
38km地点。ここで意を決して時間を確認する。
詳細なタイムはわからないけど、スタート時間が6時24分くらいなので、15時24分以内にゴールできればサブ9。今が、15時10分以上なら未達成。

時計は15時03分！！！4kmを5分ペースで走れば行ける！
今すぐに足を攣ってもおかしくない状態なので、まだまだ油断できないと気持ちを切り替える。あとこれを20分近く続けられるのか不安になるけど、サブ9の可能性があるだけで、本当は今にも泣き出しそうなほど嬉しい。
39km 4分49秒。本格的に足が動かない。
1人ずっと後ろにいた選手が追い抜いていく。この人に何がなんでもついていくと決めて、追跡スタート40km 4分36秒。ハムストリングスとふくらはぎが攣りかけて、離されるも腕を大きく振ってなんとか食らいつく。つま先を相手の踵に滑り込ませるように、なんとかピッチだけでも合わせる。
41km 4分35秒。

最後のカーブを曲がると、ゴールゲートが見えた。
大都市の市庁舎へと一直線の道。両脇にはびっしり観客が大きな声援を送ってくれている。
ハイタッチに応える余裕もなくゲートに近づくとディスプレイには、
「T Kikuchi 8:52:36」と表示されていた。もうそれを見た瞬間ぷつんと緊張の糸が切れた。

あ～怖かった。よっしゃ〜！って気持ちよりも、ずっと追われている感覚からやっと解放されるって気持ち嬉しさが強かった。とくに、この2ヶ月間は精神的にかなりタフだった。
1日に何度も怖くて逃げ出したい気持ちになった。

ゴール直後は安心感のほうが喜びより強かった。これで、この生活が終われる。アスリートビレッジで、ストリートバッグを受け取り、iPhoneを手にすると、サブ9に向け、あれこれ一緒に考えて練習してたGreenmanとパイキと無性に話したくなり電話。
この時は、涙を流して喜んだ。並々ならぬ、熱量をサブ9に注いでる2人に頑張ったよって報告できることが嬉しかったし、俺より高いレベルでバイクランとも仕上がりを見せてる2人ならきっとサブ９できると伝えた（深夜なのにごめん）

あとは、バイクピックアップして、ホテル戻って、ベッドで何もできないまま夜になって、ドイツ料理をたべに外に出て、ビールを飲んだ。マレーシアでもコナでも、レース後は何も食べられなかったから、内臓が強くなったのか、気温のせいなのか。応援に戻ろうと思ったけど寝てしまった。

次の日は、スロットミーティングには参加しなかった。170もスロットがあるので、ニースの権利はとれるだろうけど出場するつもりはない。バイクの梱包をすませ、足を引き摺りながら街にでて、これまでを取り返すように朝からコーヒーとパン、その後はもうとにかくビールとハンバーガーとソーセジを腹に入るだけ詰め込みまくった。

翌日、空港について、チェックインを済ませ、音楽を聴きながら朝食とビールを飲んでいると、ふと初代One PieceのエンディングテーマのMemoriesが流れてきた。「サブ9はラフテルなのかな」なんて話しをgreenmanとしてたからすごい驚いたし、自分の最後のゴールはここ時じゃないんだと実感した。

なんの話かわからなくなりましたが、レースレポートはこんな感じです。
端的にまとまられず申し訳ありません。すさまじく飲みたい気分なので、誘ってください。飲みましょう。