零細企業の社長(経営者・会社役員)の住宅ローン審査と資金計画について
私は社員10名程度の会社を経営しています。
結婚や理想の土地を見つけたことをきっかけに、建築家に依頼して家を建てることにしました。
いざ住宅ローンの申し込みをしてみると、社長が住宅ローンを組むには高いハードルがあることがわかりました。
そこで、零細企業の経営者が住宅ローンを申し込むにあたって事前に知っておきたかったことを記録しておきます。
※この記事ではフラット35は考慮していません。
結論から先に述べると、住宅ローンを組む3年前から決算内容と役員報酬額を住宅ローン借入額に合わせて準備しておく必要があります。
ポイントは以下の二つです。
①直近3期の決算が全て黒字であること。
②役員報酬(控除前の総支給額)の年収の最大7倍が住宅ローン借入限度額になること。
また、住宅ローンに組み込むことができない予想外の費用が発生したので、そちらも記載しておきます。
零細企業の社長でこれから家を建てたいという方は参考にしてみてください。
経営者の場合はオンラインの仮審査結果は当てにならい
住宅ローンの金利が安いネット銀行は、インターネット上で簡単に事前審査ができます。土地、建物、年収などの簡易的な情報オンラインで入力すれば、2~3日中に審査結果が出ます。
公務員や会社員であれば、仮審査をクリアすれば本審査でNGになることはほぼないと言われています。
しかし、経営者の場合はオンライン仮審査の結果は当てになりません。
その理由は以下の3つです。
赤字決算があると一発アウトの場合も
社長が住宅ローンを申し込むにあたり、直近3年分の会社決算が全て黒字であることが必要です。
ところがオンラインの仮審査では決算書の提出は求めらず、年収の審査だけで審査結果が出ます。
オンライン仮審査では決算書の内容は考慮されていないのです。
実際私が住信SBIの住宅ローン窓口相談に行った際、一番最初に口頭で確認されたのが、直近3期分の決算で赤字があるかどうかでした。
1期でも赤字があると住宅ローンの申し込み自体がNGとのことなので、過去3期に赤字決算があるとローンの申し込みは厳しいと思ってください。
ちなみに私は5社の銀行で審査しましたが、5社全ての銀行が直近3期分の決算書の提出を求められました。このことからも、住宅ローンを申し込みには住宅を建てる3年前から準備を行い、黒字決算を達成しなければいけないことがわかります。
幸い私の会社は3期全て黒字決算だったので住宅ローンを申し込むことができました。
そのため、1期だけでも赤字があると、全ての銀行で住宅ローン申し込みができないのか確認できませんでした。
赤字決算がある方は金融機関に直接問い合わせして、住宅ローンを申し込めるか事前確認が必要です。
直近の年収だけが審査基準ではない
会社の直近3期分の決算が黒字で、オンライン事前審査が承認されたからといって安心してはいけません。
オンライン事前審査で事前審査で入力するのは直近の年収のみなので、2年前、3年前の収入が審査に考慮されていません。
公務員や会社員の方であれば、年収が極端に変化することはあまりないので問題ありませんが、経営者だと役員報酬が大きく変化している場合があり、直近の年収が住宅ローンの借入額の条件を満たしていても、2年前、3年前の年収が満たしていなければ、借入限度額を減額されてしまう可能性があります。
銀行によって変わる借入限度額の審査基準
オンライン事前審査承認後、本審査に進むと年収の審査のために源泉徴収票の提出が求められます。
銀行によって直近1年分、2年分、3年分と様々です。
ただ、どちらにしても決算書は3期分の提出は全ての銀行から求められるので、過去3年分の年収はチェックされると思ってください。
役員報酬の年収によって住宅ローンの借入限度額が変わりますが、その審査基準は銀行によって差があります。
私の会社と取引がある信用金庫の場合、2社の保証会社(住宅ローンを利用する際に保証会社を使います)の引受先があり、1社は直近の年収だけで審査をし、もう一社は3年分の年収の平均金額で審査するとのことでした。
また、住信SBIネット銀行の場合は、直近2年分の源泉徴収票の年収の少ないほうで審査するとのことでした。仮に直近の年収が1500万円で、前期の年収が700万だった場合、700万で審査されます。単純に年収の7倍が借入限度額だとすると、直近の年収が1500万だったとしても、700万の7倍である4900万が借入限度額となります。
このように銀行によって借入限度額の審査基準が大きく変わるため、1社で目標の借入金額に手が届かなかった方でも、あきらめずに複数の金融機関に相談することで目標額に届く可能性があります。
注文住宅の場合は住宅ローンだけではなく、つなぎ融資も必要になる
住宅ローンの本審査が通ればつなぎ融資は借りられる
注文住宅で家を建てる場合、住宅ローンのお金が決済される前に、土地代と施工を依頼する工務店さんに着手金、中間金を支払う必要があります。
住宅ローンのお金が支払われるのは家が完成し、建築確認が完了してからです。そのため、土地先行ローンやつなぎ融資を利用して、必要な支払いをする必要があります。
つなぎ融資制度があるネット銀行はイオン銀行、楽天銀行、SBIの土地先行ローンなどがあります。auじぶん銀行はつなぎ融資の取り扱いはありませんが、提携先のアプラスを使ってつなぎ融資が可能です。
住宅ローンに組み込めない費用が発生する
土地を自分で選んでから注文住宅を建てる場合は、住宅ローンに組み込めない費用が発生します。
私の場合は自分で土地を見つけて、建築家に設計を依頼し、地元の工務店に施工をお願いすることにしました。
設計を依頼してからはじめて知ったのですが、住宅ローンに組み込めない費用がいくつか発生しました。
資金計画に大きく影響するので、注文住宅を建てることを計画している方は念頭に置いておく必要があります。
かかった費用は以下の通りです。
設計費用
建築家に設計を依頼する場合、設計が進む段階によって費用が発生します。設計費用は工務店に支払う工事費の10%~(建築家によって変動)となります。
①着手金(10万円~5%)
②基本設計完了(25%)
③実施設計完了(50%)
④工事管理業務(25%)
仮に4000万の家だった場合は400万円~の設計費が発生し、進捗に応じて上記のパーセンテージを建築家に支払ます。
※建築家によって支払い割合や回数は変わります。
住宅ローンは③の実施設計が完了し、工務店に見積もりを出してもらってからの申し込みとなるので、①、②は必ず自己資金で用意する必要があります。建築家の方が待ってくれれば③以降を住宅ローンに組み込むことができるかもしれませんが、難しいケースも想定されますので、設計費用は全て自己資金で用意したほうが無難です。
土地の手付金
土地の売買契約にあたり手付金を支払う必要があります。私の場合は土地代の10%を支払いました。手付金は住宅ローンが決済される前に支払う必要があるので自己資金が必要です。
ちなみに、建築家に依頼する注文住宅の場合、工務店に見積もりを依頼できる図面ができるまで半年~1年ほどかかります。
工務店の見積もりが出ない建築費用がいくらになるか概算でしかわからないため、住宅ローンの本審査の申し込みができません。
そのため、お金の支払いは1年以上後になる旨を伝えて地主んさんに了承してもらいました。
もじ地主さんが了承してくれない場合は、土地先行ローンを検討する必要がありますが、土地先行ローンを取り扱っている銀行は数が少ないので選択肢が狭まります。
測量費用(例外)
測量費用は通常はかからない費用です。
私の場合は欲しいと思った土地が、実際には相当大きいということがわかり、地主さんに文筆して土地を小さくして譲って頂くことになりました。その際に文筆登記の手続きに測量費用&登記費用を土地家屋調査士さんに20万程度支払う必要があります。
土地開発許可申請費用(例外)
私が家を建てたいと思うエリアが自然豊かな農地が中心のエリアで、購入予定の土地の地目が雑種地であり、そのままでは家を建てられません。
地目を雑種地から宅地に変更する必要があります。
雑種地から宅地に変更するには、土地家屋調査士に申請書を作成してもららい、市に許可申請を提出して承認してもらう必要があります。
これらの手続きのため、土地家屋調査士に約50万円程度の費用が発生しました。
土地開発のための造成費用(例外)
土地の地目を雑種地を宅地に変更するにあたり、
様々な工事が必要になりました。
・雨水の排水桝の設置
・雨水排水のために土地に傾斜をつける造成工事
・隣地との境界線にコンクリブロックを設置
などです。
こちらの費用はけっこう大きく250万円ほどかかりました。
ただ、業者さんへの支払いタイミング次第(業者が待ってくれるかどうか)では住宅ローンに組み込むことができます。
資本金の額は関係あるのか
住宅ローンを申し込んだ時は、私の会社の資本金は100万円でしたが、問題なく審査を通過しました。
決算書と年収が問題なければ、資本金の額は問題にはならないようです。
おわりに
経営者が住宅ローンを組むのが難しい理由がお分かり頂けたと思います。
ポイントは、借りたい住宅ローン金額に届く役員報酬を設定した上で、3年間黒字を達成すればよい
ということです。
それされクリアすれば問題はありません。
私の場合、3年間黒字決算ではありましたが、3年前の役員報酬を低く設定していたことが問題になりました。
注文住宅だったために、土地先行ローンを取り扱っているSBI銀行を使いたかったのですが、SBI銀行は一番低い年収を基準に審査するため、目標金額に届かなかったのです。
私は最終的に団体信用生命保険の補償内容など総合的に判断して(私は難病の持病があるため団信の審査が厳しい)、会社の取引先である信用金庫さん依頼することになりました。
ネット銀行のほうが金利が大幅に安いので、決算や役員報酬、健康状態に問題がない方はネット銀行を優先で住宅ローン審査を進めることをおすすめします。