米軍耳栓が最強な件

耳栓なしでは暮らせない

僕は仕事をしているとき、周囲の音が非常に、非常に気になってしまう。
周りで誰か話していたりするとその内容に集中力を持っていかれてしまうし、ましてそれが不機嫌な独り言(「ったく勘弁してくれよ……」とか)だったり、誰かが上司に怒られているシチュエーションだったりすると、もろに感情移入してしまい、作業どころではなくなってしまう。

これ、今流行り(?)の概念でいうと、HPS(Highly Sensitive Person)いうやつなのかもしれないけれど、人間の性質を過度にカテゴライズしようとする風潮は、ちょっと注意すべきだとは思う。もちろん、HPSという概念を自他が理解することによって、本人や周囲の幸福度が向上する可能性を否定したいわけではないし、僕自身HPSというものへの興味はある。

ま、それはさておき、とにかく僕はそういうふうなわけなので、仕事中はやむを得ず耳栓をすることで対処している。
「ええ〜!?」
と思われる方もいるだろう。はい、非常識ですみません。しかし、幸いうちの会社は仕事中にイヤフォンつけていてもOKな社風なので、耳栓をしていても怒られたことはない。まあ、話しかけづらいだろうし、話しかけられた時に慌てて耳栓を外して聞き返してしまうこともあるので、けっしてよくはないことはわかっているのだけど、ただでさえポンコツな僕は耳栓がないと本当べらぼーに作業の能率が下がるので、それよりはいいだろうと、はい、甘えさせてもらっています。

米軍耳栓こと CAMO PLUGS

で、その耳栓はいろいろ試した。その中で僕が今のところ「最強」と認定しているのが、MOLDEX社のCAMO PLUGSというウレタンフォームタイプの耳栓だ。本当かどうかわからないが、アメリカ軍の兵士がヘリコプターに搭乗する際に使っているらしい。「CAMO」の名のとおり、カラーリングも迷彩(カモフラ)っぽいものになっている。

CAMO PLUGSの遮音性能は、NRR値33dB。NRRというのはノイズ・リダクション・レイティングの略で、要はどれくらい遮音できるかをデシベルで表した数値である。CAMO PLUGSの場合、80dbの騒音を50db弱まで減衰させることができるということになる。

これは体感的にどの程度の性能なのだろうか。日本騒音調査という会社のHPによれば、80dbというのは「地下鉄の車内」や「布団たたき(1.5m)」に相当する騒音だ。これは相当うるさいレベルといっていいだろう。一方、50dbというのは「静かな事務所」や「換気扇(1m)」に相当する。額面どおりに受けとるなら、CAMO PLUGSを装着すると地下鉄の車内が静かな事務所並みに静かになるのである。

実際、僕が使用している感想としては、この公表スペックはそう実態と離れたものではないと思う。オフィスではいつもBGMがけっこうな音量(テレビでいえば普通に視聴しているときくらいの音量)で流れているのだが、CAMO PLUGSを耳にねじ込むとそれがほぼ聴こえなくなる。人の話し声もうっすら聞こえるものの、内容は聞き取れないレベルだ。全体としては、さすがにまったくの無音とは言わないまでも、かなりの静寂を手に入れることができる。むしろ、自分自身の「シーン」というごく微弱な耳鳴りに気づくほどだ。

低評価レビューについての個人的見解

ちなみに、Amazonで当製品のレビューを見ると、
「なんでこれが高評価受けてるのでしょうか、不思議でたまらないです。レビューが良かったので購入しましたが全然聞こえます、本当に何の解決もならないです」といったものや、
「一度細くするともう二度と形が戻らない粗悪品でどうしようもなかったです。もう買いません。」といったものが何パーセントか見受けられる。

僕は誓ってMOLDEX社の回し者ではないが、これにはそれぞれ理由があると思っている。まず、前者のレビュアーさんの場合は装着方法が適切でなかった可能性が高い。

実際、このウレタンフォームタイプの耳栓をきちんと装着するにはコツがあって、それを会得するには結構訓練が必要なのだ。実は僕もかなりの期間、装着の不備により十分な遮音効果を得られず、このレビュアーさんのように「どこが最強やねん」と不満タラタラだった。

後者のレビュアーさんの評については、他の方のレビューも見たところでは、どうも個体によってやや品質にばらつきがあるようだ。僕はいまのところ、使い物にならないような不良品には当たったことがないが、たしかに個包装のパックを開けると、袋の内側に耳栓が張り付いていたり、大きさが微妙にまちまちっぽく見えたりするので、その中でさらに酷い「大ハズレ」を引くと、ウレタンフォーム自体が出来損ないで、元に戻らないということもあるのかもしれない。

ばっちり遮音するための装着方法

装着のコツだが、まず大切なのは耳栓を指で思いっきり細くつぶすことだ。先頭を尖らせるようなつもりで、やりすぎなくらい硬く引き締めるのがちょうどいい。
そして、付ける耳と反対側の手で耳を上方向に引っ張り上げる。気持ちやや前方向に引っ張るといいようだ。広がった耳孔に硬く尖らせた耳栓を挿入する。鼓膜を痛めないように気を付けるのはもちろんの上だが、「底に当った感じ」がするまで入れる。そこまで入らない場合は、細くつぶす工程が十分でないのでやりなおす。また、開封して何日も経っている場合は、ウレタンが劣化していると思われるので新しいものに取り替える。
目安としては、耳栓のお尻が、耳の穴の前にあるでっぱり(耳珠というらしい)より奥に収まっていれば正しく装着されているといって良いと思う。

とにかくコツなので、めげずに練習して欲しい(何の解説なんだ)。

他のMOLDEX社耳栓との比較

さて、MOLDEX社からは他にもCAMO PLUGSと同じウレタンフォームタイプの耳栓が何種類か発売されている。僕はその内、SPARK PLUGSというのも試してみたことがある。こちらはピンクやグリーンのマーブル模様のカラーリングで、NRR値はCAMO PLUGと同じ33dbと記載されている。使ってみるまでは違いは色だけかな? とも思っていた。

しかし、使用してみると、SPARK PLUGSはCAMO PLUGSよりも弾力が高いことに気づいた。そのため、CAMO PLUGSに比べ、耳の奥深くまで挿入するのが難しい。結果、CAMO PLUGSよりはマイルドな遮音性能であると感じた。限りなく無音に近い静寂を求めるならば、CAMO PLUGSに軍配が上がる。

繰り返し使用タイプとの比較

あえてCAMO PLUGSの短所を挙げるとすれば、これはCAMO PLUGSに限らずフォームタイプの耳栓全般に言えることだが、使い捨ての消耗品であるということだ。開封したての状態が最強で、その後はだんだんフォームの弾力が低下していくのに伴い、遮音性も下がっていく。僕は、ばっちい人間なので1週間くらい使ってしまうのだが、衛生面でも性能面でも本来は3日くらいで取り替えるのがよいと思われる。

ちなみに、繰り返し使えるタイプの耳栓はどんなもんかしらんと思い、トラスコ中山というメーカーのTRUSCO TEK26という製品も試してみた。素材は熱可塑性エラストマー(なんだかわからん)で、まあ要はゴムだ。きのこの傘みたいなフランジが4つ付いている。


使用した感想としては「ないよりはマシくらいかなぁ……」といったところ。

TRUSCO TEK26の遮音性能NRR値は26dbで、CAMO PLUGSよりは7dbも低い。ちなみにデシベルというのは「ある数=ある数の何乗である」というのを表す「対数」というもので、

db = 20 x log10(X)

という式で求められるらしい。僕は数学が重度にパッパラパーな人間なので、そう言われても全然わからないのだが、デシベルの値が1db上がると、音の大きさは1.1倍になり、2db上がると1.25倍になり、8db上がると2.5倍にもなるという。CAMO PLUGSやSPARK PLUGSと比較して、体感的な遮音レベルにどれくらい差があるか、想像いただけただろうか。このあたりは製品の優劣ではなく、用途や自分が欲しい静寂度によって選べばよいということになると思う。

ノイズキャンセリングヘッドフォンとの比較

騒音対策グッズとして、耳栓と比較されるのがノイズキャンセリングイヤフォンの類だろう。僕も知り合いから「ノイキャンイヤフォンいいよ」と聞き、以前から興味はあったし、音楽はよく聴くので耳栓効果も兼ねるなら一石二鳥と思い、購入してみた。
僕が購入したのは、GenHigh社のMu6 space1というヘッドフォン。ノイズキャンセリング性能で特に高評価が多く見受けられたことから、この製品を選んだ。

しかし、結論から言えばそれほどの遮音効果は実感できなかったというのが正直なところ。20~1000HZの周波数で平均25dBのノイズ減衰性能があるということなのだが、これは先にあげたTRUSCO TEK26耳栓と同程度で、さらに体感的にはもうちょっと弱いと感じる。音楽を聴いているときには、まあまあ雑音をシャットアウトしてくれているように感じるが、音を出さない状態でイヤーマフ代わりに使うには無理がある。若干がっかりしてしまったが、音はこれまで使っていた安物のイヤフォンより格段にいいので、その点では満足して使っている。ちなみに昨年発売された後継機種のMU6 space2は、平均29dbまで遮音性能が向上したそうで、興味はあるがちょっと購入する余裕はない(笑)

まあそれでもやはりCAMO PLUGSの35dbというのは圧倒的な数値なので、騒音でお悩みのHPSさんにはCAMO PLUGSをおすすめします。


いやー、耳栓だけで4000字近く書いてしまった。たかが耳栓されど耳栓、なかなか奥が深いのである。

参考URL
日本騒音調査
https://www.skklab.com/standard_value
川嵜耳鼻咽喉科 みみの病気・治療について
https://kawasaki-jibika.jp/ear/

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