【掌編小説】ウンコ・ウンコ・ウンコ
「うんこ!うんこ!うんこ!」武夫は叫び、トイレに飛び込んだ。
アナルからはすでに1センチほど糞の頭がこんにちはをしていた。
「ふーっ」と武夫は便器に腰掛けると同時に長い溜息をついた。続いて「ぽっとん」と気持ちのいい音をたて、武夫の糞が、東洋陶器製ウォッシュレット付き水洗便器の水たまりに落下した。
尻を拭い、下着とズボンをあげると武夫は、東洋陶器製ウォッシュレット付き水洗便器の水たまりの中に沈む自らの糞を眺めた。太さおよそ4センチ、長さおよそ13センチ、推定重量約70グラム。武夫は興奮を自制しながら、背中に背負ったままだったナップザックのファスナーを開け、ポラロイド・カメラを取り出す。そして、ファインダーに小さな右目を押し当て、東洋陶器製ウォッシュレット付き水洗便器の水たまりの中に沈む自らの糞に焦点を合わせ、パシャリ。
「ウィーン」と音を立てて、ポラロイド・カメラの上部スリットからフィルムがゆっくり出てくる。その様子は、まさに先ほどのように、アナルから糞が出てくる様子を想起させ、武夫は思わず笑い声を漏らしてしまった。汗ばんだ二本の指でフィルムをつまみ上げ、それを目の前にかざすようにして眺めていると、白いフィルムの枠の中に、東洋陶器製ウォッシュレット付き水洗便器の水たまりの像がだんだんと浮かび上がってくる。いまや武夫は、高鳴る心臓の鼓動を抑えるのに懸命だった。待つことおよそ3分、ついに立派な糞の標本写真が出来上がった。武夫は扉を破らんがごとき勢いでトイレから飛び出し、廊下の角をドリフトして駆け抜け、居間へと走り込んだ。
「うんこ!うんこ!うんこ!」
武夫が叫ぶと、居間の中央に鎮座するコタツとあたかも一体化したように背中を曲げてくっついている直子が振り向いた。
「見てくれ、会心の出来だ!」
武夫はまた叫び、直子の面前に出来立てホヤホヤの標本写真を突きつけた。
銀縁の丸眼鏡をかけている直子は、老眼でもないのに眼鏡を額のあたりまで上げ、フィルムに顔を近づけた。直子は奇麗なアーモンド形をした眼を一度だけまばたきさせると、顔を上げた。
「いいわ、これなら村長も納得するはずだわ」
直子はにっこり笑ってそう言った。ヒャッハー。武夫の脳内で大量のエンドルフィンが放出され、ペニスは勃起し、リーバイス501の股間部分にテントが張った。直子は再び写真に見入っている。
「未消化の食物も混じってないようね、かなり綺麗な表面だわ。色も黄色すぎず、黒すぎず、ちょうどいいんじゃないかしら?」直子は着ているスウェットの襟口に手を突っ込み、小さなカラーチャートの短冊を取り出した。そして慣れた手付きで右手に武夫の糞の標本写真を、左手に褐色のグラデーションだけで構成されたカラーチャートを手にし、両方を慎重に見比べる。
「35番か37番ってとこかしら。本当に上出来だわ、タケ」
直子がウィンクすると、武夫はもうたまらず、コタツに下半身を突っ込んだままの直子に抱きついた。直子の手からうんこ写真とうんこチャートが落ちた。
「ちょっと、だめよこんなところで」
という直子の声は楽しそうだ。武夫は直子のスウェットの中に右手を突っ込み、小振りな乳房をまさぐり、左手で直子の顔を自分の顔に押し当てさせた。
「本当にだめよ、タケ」
武夫は構わず自分の下半身をコタツの中にすべりこませた。
「温かい」と武夫は小さな声で言った。いくらか紅潮した直子の顔が少し困ったように微笑んだ。
二人はそのまま小一時間ほど楽しんだ。二人はまだ十分に若かかったので、そうした時期だけに得られる、甘い歓びに安心して身をゆだねたのである。
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