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IBの考える学習者のAgencyとは

国際バカロレアの認定校であるサニーサイドインターナショナルスクールで勤め始めて2年目を迎えました。今でも、サニーサイドでの初日の出勤日の出来事が今の自分が意思決定をするときに大事な考え方になっています。
今回のnoteのテーマは「Agency」です。


最近、「教える」から「任せる」という考え方が教育現場に入ってきています。しかし、今まで教師の役割は教える役割が強かった中で、子どもたちにどのように任せると機能するのでしょうか?そもそも子どもに任せて機能している状態と機能していない状態とはどのような状態なのでしょうか?

今回のnoteでは「任せる」ということを「Agency」という切り口で考えていけたらと思います。この「Agency」という考え方は、昨年度人生で初めてクラス担任(小学4年生)をもった初日の入学式の出来事で出会うことになります。

入学式の出来事

クラス担任の発表が行われた午前9時。そして、その日のミッションは新1年生を迎える午後に行われる入学式です。私の受け持っている小学4年生の入学式における役割は受付の準備をすることでした。12人の児童と机を出したり、配布するプリントの準備をしたり、ここまでは自分の想定内の動きでした。準備も終わりかけた頃、一人の児童がこう言い出しました。

「入学式で受付を担当したい!」

私の中で、入学式の受付は重要な書類を保護者から受け取ったり、学校に入ってきて最初の学校の印象を受ける重要な役割だと思っており、一般的には大人が対応する場所に小学4年生が責任をもって行うことに、さすがに難しいのではないかと考えていました。もちろん、受付の担当は子どもたちに割り振られておらず、事務の先生が担当することになっていました。

ちょうどそのとき、別のクラスの担任の先生が通りかかり、子どもたちが「入学式で受付をしても良いですか?」と尋ねると、その先生も学校全体に働きかけてくれて、その1時間後に小学4年生が受付を担当することになりました。私は、この出来事に驚き、子どもたちの声を大事にして、実際にアクションに起こせる環境を整える学校なんだなとこの一連の子どもたち、教職員の動きから文化として感じ取りました。

大人から働きかける「◯◯◯やってくれる人?」ではなく、その先にある「子どもたちからの◯◯◯をやってみたいです!」という声。

上の2つは、似ているようで全然違うなと。「初日に受けた子どもの姿がどのようにしたら育まれるんだろう?」そんな問いとワクワク感とともにこの学校での勤務が始まりました。

IBの考える学習者のエージェンシー

• 児童は学習において自ら声(voice)を発し、選択(choice)を行い、主体性(ownership)を発揮します。
• 児童がエージェンシー(agency)をもつとき、教師と児童はパートナーの関係になります。
• 自己効力感が強い児童は、エージェンシーに対するより強い意識を学習コミュニティーにもたらします。
• 学習コミュニティーは、児童のエージェンシーをサポートするとともに、自己効力感を育みます。

参考:学習者(リンク

まさに、この入学式の出来事はここに書かれている学習者のエージェンシーを体現したもので、これは一朝一夕で生まれるものではなく、コミュニティの文化の中で育まれるものなんだと、教職員のサポートのあり方をみても感じました。

能登半島地震後の出来事

3学期が始まり、子どもたちの中では、新学期が始まるワクワク感と、正月に起きた能登半島の地震からくる不安な気持ちが入り混じった中での登校日になりました。サニーサイドインターナショナルスクールでは、毎朝のモーニングルーティーンの中でIBが掲げている10の学習者像を毎月1つずつ学校全体で考えていく時間があります。この月は「知識のある人」がテーマであったので、ここに書かれてある「地域社会やグローバル社会における重要な課題」は能登半島で起きている地震は私たちにとって、地域社会における重要な課題になります。そこで「能登半島地震で被災した方々を支援するために私たちにできること」をこれまでに学校で学んできた知識を活用して考えることから2学期は始まりました。

そして、子どもたちは、自分たちにできることを考えていきます。ここでも大人が先に「募金活動をするので、子どもたちに募金活動をするための何かを考えてください。」という働きかけではなく、その一歩前の、能登半島地震をサポートするために私たちにできるところから考えていきます。クラスの中で、子どもたちとのディスカッションが始まります。そして、子どもたちの中で、募金というアイデアが出てきて、学校全体としても募金をする方向性に定まりました。そして、子どもたちは、募金をするにあたり、「なぜ、募金が必要なのか?」について「自分たちが学んできたことやリサーチしたことを届けるためのポスターの制作をしたい。」という声が上がり、ポスターの制作が始まりました。


その後実際に駅前に立って、子どもたちはポスターとともに募金活動を実施しました。中には、ポスターだけでなく、プレゼンを町を歩く人に向けて行った児童もいました。
詳細の記事はこちらのnoteにまとめています!

ゴミ美術館

岐阜新聞掲載

3月には、クラスのあるひとりの子の「ゴミ美術館をしたい!」という声で、ゴミ美術館プロジェクトが保護者と子どもと共同プロジェクトで行われました。このプロジェクトも、学校での学びをアクションに活かすために、水の循環に学んだ後に「川のクリーンアップをしたい!」というアイデアから、拾ったゴミをみてなにか作って、ゴミ美術館ができるかも!というアイデアがカタチになったものでした。

この詳細もこちらのnoteにまとめているのでよかったらみていただけたらと思います。

クラウドファンディングでバスケットチームを立ち上げたい

今年度に入り、ある児童から「クラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げたい。」相談が来ました。サニーサイドインターナショナルスクールには、十分な広さのグラウンドがないため、サッカーゴールやバスケットボールゴールがなく、遊べる内容が限られている中で、子どもたちは工夫して毎日遊んでいます。ここでも、バスケのゴールがないことに対して、不満を出すのではなく、自分から「クラウドファンディングでお金を集めて、バスケのチームをつくる目的でバスケットゴールを調達する」プロジェクトのアイデアを持ってきました。早速、園長先生に相談して作戦会議が始まります。そのプロジェクトの資料の一部になります。この後、Part3まで続き、現在Part4に発展しています。Part1には、プロジェクトをしようと思った思いや背景についてまとめてあり、園長先生から具体的な予算書を作ってほしいという声から、実際にグラウンドの長さを測り、必要な備品の予算を調べてプロジェクトの予算の使い道の作成を行いました。

そして、今もこのプロジェクトは進行中で、同時に学校としてもクラウドファンディングを行なっています。ここがうまくコラボレーションできると良いなと思い、私もクラス担任としてプロジェクトのアイデアを持ってきた児童の学びにつながるサポートを行なっているところです。まさにIBが考えている「児童がエージェンシー(agency)をもつとき、教師と児童はパートナーの関係になります。」という状態を目指して一緒にできることを考えています。

プロジェクトをどのようにコラボレーションをしているのかを以下の園長先生の「学校をつくろう」noteでも紹介されています!是非ご覧ください!

サニーサイドで働き始めて、自分のクラスだけでなく、さまざまな場面で子どもたちのエージェンシーが垣間見える場面と出会います。今サニーサイドで行なっているクラウドファンディングのプロジェクトに書かれている2つの言葉。

「失敗を恐れず向かっていける子に。」
「学び方を学ぶ教育。」

子どもたちのエージェンシーを育むことや子どもたちが学び方を学ぶことは一朝一夕でできるものではなく、日常の関わりの積み重ねや学校の中にある文化の中で育まれる要素が強いと思います。なので、是非「子どもたちの主体性を育む学びの環境づくり」や「学び方を学ぶ」という考え方に共感した方は是非遊びにきてもらって学校の雰囲気を感じてもらえたらと思います。たくさんお話しできることを楽しみにしています。

現在サポーターの人数は19人です。もしよかったら、私たちのサポーターになってもらえると嬉しいです!

いつも読んでいただきありがとうございます!



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