見出し画像

作家になるためのプロセスとは?

今私は国際バカロレアの認定校であるサニーサイドインターナショナルスクールで小学5/6年生の担任をしており、概念型探究をどのように実践しているのかをまとめていけたらと思います。まだまだIB教員2年目の実践ログなので、どのような場面に難しさを感じながら概念型探究の授業にトライしているのかについてまとめていけたらと思います。

こちらがユニット4のカリキュラムになります。

【Central idea(大きな一般化)】
作家文学を通じて表現するために創造性意図的に利用する
【重要概念】機能、特徴
【関連概念】文学、表現、創造性、ジャンル、形式
【教科の枠を超えたテーマ】
How we express ourselves
【探究の流れ(小さな一般化)】
- 文学における創造的な表現の機能
- 異なるジャンルや形式の文学
【ATL】
・コミュニケーションスキル:リテラシースキル
・思考スキル:創造的思考スキル
【Learner Profile】
・コミュニケーションができる人

このユニット4では、最終的に子どもたちは作家になって文学をかいていくいくのですが、作家になるにはどのような知識やスキルが必要になってくるでしょうか?子どもたちの創造力に頼り、いきなり物語を書いてみよう!という風に導入して作家になる活動もあると思うのですが、これは果たして探究と言えるのでしょうか?

まずは、文学を書くにあたり子どもたちはどのような知識、スキル、理解が必要になるのかを事前に設計することが重要になると思います。まず、知識としては、文学的表現の種類やその機能にして学習し、なぜ文学的表現が必要なのかについて複数の文学作品を通して考えることを通して理解をつくりあげていきます。この知識の構造についてまとめたものが下の一番左の図になります。

これまでに、全体で扱う教材としては「やまなし」を、学校のBook eventでは自分で選んだ文学作品の中で文学的表現をリサーチし、作者の意図を解釈していきました。いよいよ、作家として書き始める前に、改めて文学に必要な要素と理由について言語化していきました。

ここでは主に、作者の意図と文学的な表現などが出てきて、改めて文学に関する知識を整理する時間になりました。では、文学に必要な知識の部分の整理ができたところで、文学をすぐに書き始めることはできるでしょうか?ここからは、これまでに学習してきた知識を活用して「書くプロセス」に入っていくので、書くプロセスに必要なスキルやストラテジーについて考えていきました。

元々の設計では、必要なスキルとしては創造的思考スキル、情報収集するスキル、文学的表現に置き換えるスキルを設定していました。子どもたちからは、それに加えて語彙力、読者のことを考えて年代に合わせて表現するスキル、物語を描き続けるメンタル、集中するスキル等様々なスキルが出てきました。
授業の中では、文学的表現に置き換えるスキルの練習として、今の教室の状況を文学的表現(隠喩)で置き換えるアクティビティを行いました。教室の状況としては、午前中の校外学習の疲れと、給食の後でもあり、さらに授業の終わり15分前ということで集中力が切れ始めている状態でした。この状況を何かに例えて大喜利を行いました。

▼ 子どもたちの自由な発想で出てきた例え
① 真夏の雪だるま
>みんなの集中力を雪に例えて今にも溶けそうな様子を表現
② クリスマスの前夜
>もうすぐ授業が終わるので、ワクワクしている
③ クリスマスツリーのランプ
>クラスの中でも集中力がある人、いない人がいる状態を表している

スキルに関わるものは、知識のように一度インプットするだけでなく、何度も繰り返し意識して使う中でできるようになっていく場面が必要になってきます。
もっというとスキルだけでは、書くというプロセスに入れない子どもたちもこれから出てくると思います。プロセスの構造では、学習能力を向上させるために学習者が自覚的に調整し、モニタリングする体系的な計画と考えられるストラテジーという考え方があります。設計段階では、プリライティングストラテジーというものを考えています。これから子どもたちが作家になるにあたり、物語を描き始めようと思ってもなかなかアイデアが思い浮かばず白紙の状態からなかなか抜け出せない子も出てくると思います。このプリライティングストラテジーでは、作家にとっていわゆる道標のようなもので、書き始める前にさまざまな方法でブレインストーミングのようなことを行います。例えば、毎日のジャーナリング、フリーライティングで思いのまま書いてみる、マインドマップなどを用いたブレインストーミング、スケッチをしたり、アイデアのリストか、パワポなどでアウトラインを決める、クラスメイトで質問をし合う、関連する情報のリサーチをしてみたりと、様々な方法で自分の伝えたいメッセージを読者に効果的に伝えるために構造化していくためのストラテジーになります。(参考リンク

また、このストラテジーという考え方は、文学を書くためだけに活用できるのではなく、何かアイデアを出す時、企画を作り出す時など、他の場面でも応用できるストラテジーでもあるので、最終的にはこのストラテジーからアイデアを子どもたちが一般化できるようにもっていけないかなと考えています。

さて、ここからいよいよ実際に書くというプロセスに入っていきます。次のようなプロセスを経て、物語を書いていこうと設計しています。

① 「多文化共生」をテーマに思いつくことをブレスト
②「多文化共生」をテーマに作者の伝えたいメッセージを複数考える
③ 自分の伝えたいメッセージの根拠となる情報を集める
④ 自分の伝えたいメッセージの背景にある自分自身の価値観や考えの言語化
⑤ 実際に物語を考える

これは物語を描くプロセスにおける大きな流れであり、順番は前後してもよいと考えています。子どもによっては結論である作者の伝えたいメッセージから考える方が進めやすい子もいれば、中には物語を描く中で自分の伝えたいことが言語化されていく子もいるのではないかと考えています。

また、今回の文学を描く時間は作家として一人でじっくり考えることも大切にして欲しいので、一人で考える時間をメインに、友達と考えたことをシェアすることを繰り返す中で物語をつくりあげていけるといいなと考えています。

さて、今回のユニットではこれまでに初めて、知識の構造とプロセスの構造の両輪でユニットを展開しています。ユニット2,3は社会科(歴史、公民、経済)によったユニットであったこともあり、知識をベースにしたユニットでしたが、このユニット4は知識ベースの理解とプロセスベースの理解が組み合わさっていることもあり、知識とプロセスの両方を通じて学習者が理解を構築していけるようなユニットの後半戦になればと思います。

これから2週間、子どもたちの作家としての活動が始まります。どんな物語が出てくるのか、今からとても楽しみです。

いつも読んでいただきありがとうございます。



いいなと思ったら応援しよう!