<様々な教育事例>から学校のあり方について考える。
今私は国際バカロレアの認定校であるサニーサイドインターナショナルスクールで小学5/6年生の担任をしており、子どもたちにとって「よい学びの環境とは何か?」という問いがずっとグルグルとしています。この問いと共に、私のキャリアは転々としてきました。
私の中で変化してきたことは、「知識観=何を知識と捉えるのか?」というものです。大学生の頃の私は「知識=普遍的なもの」と捉えており、だからこそ学校における教師の役割は「いかに知識を分かりやすく教えられるかどうか」と考えており、分かりやすく教える技術を身につけるために塾でのアルバイトを始めました。
この私の知識観に影響を与えたのが「フィンランドの教育」との出会いでした。大学の授業でフィンランドの教育観に触れ、実際に大学5年生の時に現地でインターンを行いました。フィンランドの教育は「個別最適化の学び/協働的な学び/プロジェクト型の学び」のバランスが取れており、私がこれまでの知識観である「知識=教師から与えられるもの」という考え方が「知識は子ども自身が構築していく考え方」や「協働でプロジェクトを通して構築していく知識」があることを学びました。ここに、フィンランドが教育において大切にしている「(社会)構成主義的な考え方」の出会いがありました。この時は、構成主義的な考え方に特に影響を受け、日本においても子どもたち一人ひとりに合わせた学びの選択肢が広げていくアクションとして、島でフリースクールの立ち上げを地元のNPOの方と一緒に行いました。実際に立ち上げを通して感じたのは、学校との連携システムの難しさでした。ちょうどこの頃、教育の機会の確保等に関する法律が制定されましたが、なかなか学校現場にフリースクールという学びのカタチを理解してもらうのが難しかったのを覚えています。
さて、前談が長くなってしまいましたが、今私が働いている学校がどこに位置づけられているのかを改めて整理してみました。位置付けとしては、私立の一条校を目指している、現段階ではオルタナティブスクールがメインの位置付けになる(フリースクール的な機能もほんの一部ある)のかなと考えています。
ここで、言葉の定義を整理してみます。
「学校とは」
ざっくり説明をすると、国に認可されている学校(一条校)は、文部科学省が定めている基準(学習指導要領や授業時数等)に則り教育活動を行うことになります。さらに、国が認可している学校は、公立校と私立校に分かれます。公立学校とは、地方公共団体の設置する学校を、私立学校とは、学校法人の設置する学校をいいます。
この私立の認可校とオルタナティブスクールは、特色のある教育活動をしている面では共通しているのですが、運営(助成)面では大きな差があります。私立の認可校になると、国からの助成があります。その一方で、オルタナティブスクールやフリースクール等の学校は国からの補助がないため、寄付や保護者からの授業料が財源となり運営をしていくことになります。
一方で、フリースクールでも自治体からの補助が出る事例が出てきました。
「そもそもフリースクールとは何か?」
文部科学省の説明によると次のように説明されています。
「不登校とは何か?」
「では、オルタナティブスクールとは何か?」
日本大百科全書(ニッポニカ)には次のように解説されています。
フリースクールもオルタナティブスクールも定義が曖昧なところもありますが、日本の文脈ではオルタナティブスクールは、従来の学校(=一条校)以外の、特色のある教育プログラム(フレネ、シュタイナー、国際バカロレア、モンテッソーリ、サドベリースクール等)を実施している学校の総称であり、その中で不登校の子どもたちを主な対象とした教育施設がフリースクールという位置付けになるのかなと思いました。
フリースクールの定義は曖昧なところもありますが、もしオルタナティブスクールにも支援の対象が広がれば、多様な学びの選択肢の幅が日本でも広がっていく一歩になるのかなと思いました。
ちなみにオランダでは憲法で教育の自由について以下のように定められています。
私自身もオランダの教育機関を訪れたことがあり、学校によって取り入れている教育メソッドが異なり、特色があったのが印象的でした。これだけ、多種多様な教育を行っており、どのようにして質を担保しているのかについても気になると思います。そこで、実際にオランダの教育の専門機関(教育監督局)を訪れたことがあります。
ここでは、学校設立から運営までをサポートする多くの専門家が集まっていました。具体的には、人事、学校経営、学校運営に伴走する機能等がありました。
「伴走をする上で大切にしていることは何か?」と尋ねると
これにより、多様な特色を持つ学校がオランダにあり、それによって保護者は自分の子どもに合った学校を選択できる仕組みがありました。
さて、オランダの事例から分かるように、国によって一人ひとりに合わせた教育の機会を実現するアプローチの方法は異なるということです。フィンランドでは、家から近い学校に通うことで、その子にあった教育を受けられる考え方が大切にしており、オランダでは、学校ごとに特色があり保護者と子どもが自分に合った学校を選択することで自分に合った教育を受けられる仕組みがありました。
「さて、日本ではどうでしょうか?」
個人的な解釈としては、システム的にはフィンランドの家から近い公立の学校の中で一人ひとりのニーズに合わせた教育を行なっていく考え方が目指されているのかなと思います。しかし、現状としては不登校の児童生徒が増えており、今の公教育のシステムや考え方では一人一人のニーズを満たすことが難しい現状があります。それにより、オルタナティブスクールやフリースクール等が近年日本でも増えてきていますが、なかなか学校現場と行政と民間の教育施設がうまく連携できていない現状はあると思います。これによって、フリースクールやオルタナティブスクールは国からの助成が全くない状況で学校運営をしていることもあり、家庭の負担が大きくなっている現状があります。これについては、自治体によって格差が出てきてしまう部分かもしれないです。具体的に、東京都では、昨年度に不登校の児童生徒の家庭を対象にアンケートを行い、今年度よりフリースクールに通う家庭に助成を出す方針が出ました。今後、フリースクールやオルタナティブスクールに助成を出すことで教育の機会を確保していく方向になれば、オランダのように保護者と子どもが自分に合った学び場を選択できるような社会に近づいていくのかなと思います。
最後に、なぜこのような記事を書いたのかというと、6月1日からあるプロジェクトが今働いているサニーサイドインターナショナルスクールで始まるからです。これについては、プロジェクト公開後にお知らせできたらと思います。「多様な教育機会が認められる社会」にちょっとずつ近づいていくといいなと思っています。
いつも読んでいただきありがとうございます。
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