
相続ミニ知識:配偶者居住権 (お母さんはタダで住めるってこと?)
こんにちは。ゆうき行政書士事務所です。
令和2年の民法改正ではじまった「配偶者居住権」について、見ていきたいと思います。
配偶者居住権(第1028条から1036条)ってどういうもの?
こんな気持ちでできました。
配偶者居住権は、遺産相続の際に、不動産は高く評価される傾向にあるため、住むために家を相続した配偶者が預貯金などまで相続できず、その後の生活が困窮することを防ぐため、相続する財産を「所有権」と「居住権」に分けて配偶者の取り分を「居住権」に限定することで、相続の評価額を下げて預貯金なども相続できるように配慮した制度です。
例えば、家の相続税評価額が1,000万円、預貯金が1,000万円、お母さんと子どもが一人というときに、
お母さんが家、子どもが預貯金を相続して1/2ずつにすることになった場合、
お母さん:家1,000万円
子ども:預貯金1000万
👵あれ?明日からの生活費がない!?となる可能性があります。
配偶者居住権を相続することにした場合、仮に家の価値が所有権500万と居住権500万に分かれたとすると
お母さん:居住権500万、現金500万
子ども:所有権500万、現金500万
👵よかった、生活費を確保できたわ、となる可能性があります。
なお、配偶者短期居住権(第1037条から1041条)という、遺産分割協議が終わるまでなどの期間は、無償で配偶者は家に住んでていいよというルールもあります。こちらは立ち退きの期間は無償で住んでいいですよ、それは相続財産に入れませんよ、というルールです。
以下、配偶者居住権についてみていきます。
配偶者居住権を設定できる条件は?
亡くなった方が所有していた建物に、その配偶者が住んでいて
①遺産分割で「配偶者居住権」を取得した場合
②遺言で「配偶者所有権」を取得した場合
③家庭裁判所の審判で取得した場合
上記の場合に設定することができるものです。
なお、亡くなった方が住んでいた建物が配偶者以外の方との共有になっている場合や、配偶者が内縁の状態である場合、住んでいた建物が賃貸だった場合は設定できないのでご注意ください。
設定するとどうなるの?
遺産分割等で相続財産として「配偶者居住権」を取得し、その後は原則的に配偶者が亡くなるまで無償で使用、収益することができる権利です。(第1028条)
相続のときに相続財産として取得するので相続税がかかる可能性がありますが、その後は無償ということですね。
配偶者居住権は登記できるので(第1031条)登記しておくことがおすすめです。
禁止事項
もともと住んでいなかった部分を使うことや、第三者への譲渡は禁止、所有者の合意がなければ増改築は禁止、第三者が使ったりお金儲けするのはNGです(第1032条)
費用について
通常の費用である固定資産税や日常的な修繕費などは配偶者が負担し、大規模修繕などは所有者が負担することになります。(第1034条)
配偶者居住権がなくなるときは
なお、配偶者居住権は配偶者の死亡によって消失するので、その際は所有者は贈与税などの負担なく、建物の権利を所有することとなります。
ただし、合意によって配偶者所有権を消滅させた場合は、配偶者所有権を無くしたことにより建物の所有権の価値が上がった分、所有者に贈与税がかかります。
配偶者居住権の算出式
配偶者居住権の一般的な算出式は以下のとおりだそうです。見ただけで私な泣きそうになるので、詳しい金額は税理士の先生に相談しましょう。
なんといいますか、所有権と居住権にわけたからといって
半分半分になるわけじゃないという心づもりだけあればOKだと思います。

留意事項
所有者の方が先に亡くなった場合に権利関係が複雑になる可能性があるなど、誰にでも絶対おすすめという考え方ではありません。
あくまでも、相続の財産分割の一選択肢としてできた制度なので、この制度を使った方がいいかは慎重に判断することが必要かと思います。
ちょっと感想
家はあるけど現金はない、というケースの配偶者の生活保護の手段として、利用した方がいい場合もありそうだと思いました。さらっとしたご紹介になりましたが、配偶者短期居住権の考え方も、色々決まるまで、最低は6ヶ月の間は無償で住んでていいよ、というのは配偶者の立場からするとありがたい規定だなと感じます。
次回はサブリース契約について見ていきたいと思います。
読んでいただきありがとうございました。