火を通すという行為
生たまごからゆで卵に趣向が変わった
卵かけご飯が好きだったし、すき焼きに卵を通すというのも好きだった
二十歳を超えてからは、ゆで卵と目玉焼きでしか食べられなくなった
生命というもの、赤ん坊になるかもしれなかったものを食べているんだな、ごく当たり前の考えが頭にポっと出た
それ以来は、なんだか怖くて生の部分が残らないように火を通すようになった
黄身の甘さの奥の方に、知ってる味を舌が見つけてしまったからだ
口の中が切れる、鼻血が喉まで下りてくる、
生き物の血の味
そして黄身は色の濃い方が栄養価が高いと聞いた
箸で割ったゆで卵は淡いレモンイエローだった